EP11『復帰と懸念』
だいぶ時間がかかってしまいました。
ようやく納得のいく仕上がりになったので公開。
本当はもっと長く書かないといけないのですが、何かと心が荒んでる故、長続きしなくて・・・。
改稿作業も進んでいない始末。
もう暫くお待ちください。
パーティが1度壊滅してから数週間。
「いやー、ほんと酷い目にあったねぇ・・・」
ランが武具店のテーブルセットに座ってペンを回しながら愚痴っていた。
「・・・あんなのもう戦いたくないです・・・」
俯きながらいつもよりか細く消え去りそうな声で喋るレイ
「まぁ、こう言ったこともあるよ。仕方ない仕方ない」
無理して作った口調で振る舞う私。
どう考えてもお通夜ムードです。
辺りにはどんよりした空気が充満し、私たちの気分をさらに下げていく。
終わりよければすべてよし、とは言うけどそうはいかないのが現実。
この電脳世界、HPが少なくなればなるほど動きが鈍ったり部位欠損すれば最悪気絶したりかなり現実味がある。
だから回復アイテムを使っても通常より回復速度が多少上がる程度で、入院は普通にしなければならない。
ケイが言うにはこの世界はゲームの世界らしいんだけど・・・
もちろん即時回復ポーションも存在する。
けどプレイヤーならいざ知らず、私たちNPC(レイ以外)には無用の長物なのだ。
なのでレイ以外通常ポーションしか使わない。
それが裏目に出た結果だった。
「まぁ、これは仕方ないわ・・・私たちの落ち度だし」
気が緩みすぎた結果がこれ。
ほんと、情けなくてため息が出ちゃうわね。
「取り敢えず、これからまた各々精進していけばいいってことよね。それを痛感させられた出来事だった訳だし。」
私は義手の左手を開いたり閉じたりする。
違和感は無い。
全く、レイの整備は万全ね。
「それじゃ、私はちょっと用事があるからここでお別れね。また、明日!」
「はーい。」
「またね、アオイ!」
椅子から立ち上がり、私は武具店を後にした。
店から出た私は宛もなくブラブラと彷徨う。
少し、心の整理がしたかった。
気がつけば街の端、空中都市の外縁まで来ていた。
沈む夕陽が私を正面から照らして、眩しい。
"俺"が死んで"私"が生まれたあの日から、随分と経った気がした。
実際にはつい最近のはずなんだけどね〜。
気がつけば前世の"俺"は殆ど"私"に塗りつぶされちゃって。
・・・男性に、恋をして。
「・・・っ!違う、私は、そんなんじゃないっ!」
頭を振りながら1人叫ぶ。
顔が熱い。
きっと、そんなんじゃない。
一過性のものだ。
そんなことを考えながら沈む夕日を眺める。
「・・・こんなところで、何をしているんですか?」
「っ!?」
声をかけられて慌てて振り返ると。
「・・・ゲイル・・・?」
領主のゲイルがそこに立っていた。
優しく微笑む彼は、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「・・・目が覚めたと聞いて。本当ならすぐにでも駆けつける予定でしたが・・・何分書類の片付けに手間取ってしまいまして・・・申し訳ないです」
「そうして見に来てくれただけで良いわ・・・私も、ランを、妹さんを危険な目に遭わせて、ごめんなさい・・・」
「・・・それに関しては仕方がなかった事、妹の命があるだけで十分です。下手をすれば、二度と会えなくなるところでしたけれど・・・」
ゲイルの言葉に私は声を詰まらせる。
人の家族を、奪うところだった。
「・・・」
何も言えず、俯いてしまった私にゲイルはかける言葉が見当たらなくなったのか何も言わずに佇んでいる。
「・・・僕はそろそろ戻ります。アオイさんも、体が冷える前に戻ってくださいね」
・・・。
私は、これで良かったんだろうか。
遠ざかっていく足音を聴きながら、私は夕焼けに背を向けて立ち尽くした。
それからどうやって家に戻ったかも分からない。
気がつけばシャワーを浴びていた。
「・・・」
お湯が全身を濡らして、体に熱を与えていく。
それでも私の心は酷く冷え込んでいた。
(人の命を、奪う・・・)
直接的ではないにしろ、他人の大切な人を奪う。
それはこの世界でも共通で。
(・・・っ・・・)
奪った事のある私にとって、それは深く傷を残すもので。
「・・・ダメだなぁ、私・・・」
ボソリと呟いた私の声は水の音にかき消されて行った。




