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魔王様はお嬢様の下僕になりました  作者: 亜桜蝶々
第1章、慣れと再会
7/26

典型的なイベントとアランの心情

今回は短めですご了承ください。

 皇国歴1700年4月22日午後3時。アランが下僕になってお嬢様と呼べ、敬語を使えと言われた (プロローグ) 後の話である。


「ほら、下僕。お前の部屋よ。メイルはその向かいの部屋ね♪」


 屋敷の二階にて、三人の人影。一人は赤い全身鎧(フルアーマー)の将軍。もう一人は真っ黒なドレスの美少女。もう一人は(ry……ヒィ!?ゴメンナサイ!!最後の一人は執事服に身を包んだ精悍な顔立ちの青年である。これで良いんだろ!!


「……どうしたんですか?魔王様。今、虚空を凄い怒気を放ちながら睨んでましたけど……」


 メイルがちょっとビクついた声でアランに質問する。その隣でフェアがちょっと震えていたりするわけなのだが、アランはフェアのことは気にせずに部下のメイルに声をかける。


「いや、なんでもない。私の影がうるさかったのでな、黙らせたのだ。怖がらせてすまない」


 実際は影では無いけどね。アッハイ。進めますよ。

 フェアはアランがいった謝罪の言葉の対象に自分がいないことに気が付いた。肩が震えているが、それは恐怖したからだけでは無いと思われる。顔が真っ赤になっているのだから。


「……下僕。ちょっとここで私の目の前に立ってくれる?」

「なんの用ですかお嬢様」


 アランはフェアの真正面に立った。すると、フェアはドンッとアランを突き飛ばした。背後には“一階に向かう階段”があった。


「あ。ギャアアアアアアアアア!!」


 アランはボールのように転がって落ちていき、一階の壁に当たるゴンッっという痛々しい音が二階の二人に聞こえた。フェアは満面の笑みを浮かべてメイルに話かける。


「ほら、そこがあなたの部屋よ。どうぞ、使って?」


 メイルはコクコクと兜を縦に振った。フェアはヘルムで中の人物の顔がわからなかったがメイルの顔が青ざめていたのは言うまでもない。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「……ック……!!」


 一階でアランは一人虚しく立ち上がった。普通の人間であれば死んでいてもおかしくは無いであろう全身のダメージである。とはいえ通常のアランであれば痛くも痒くもないのだが、今は人間になっているので全体的に能力が低下しているために少し痛い。それより、部下の前で無様な姿を見せたことが精神的にダメージが大きい。


「あの、小娘ぇ……!!」


 アランは憎悪の感情に囚われそうになったが、そもそも自分が無視したのが悪いのだから自身にも非があるなと分析して心を鎮める。これが、アランが民からの信頼を集める要因の一つである。自分勝手に解釈せず、他者から見た自分などを考えて行動するのだ。アラン自身は今のことが凄いことだとは理解していない。


「ふむ。謝りにいかないとな……」


 アランは二階へと上がっていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 フェアに罵詈雑言を言われたあと、アランは自分に与えられた部屋に行った。

縦に11m、横に10m、高さ3mほどの広さの部屋に机と椅子。それに、なかなか上等なベットと空の棚が置いてある。どれも、古いものだが非常に保存状態が良い。


「ふむ、ますますもってあの小娘の真意が掴めぬな」


 アランは思考したが、皆目見当がつかないのでメイルと話すために自分の隣の部屋に行った。


 部屋の扉をノックし、入るぞと言いながらガチャリとドアを引いて開ける。開けると困惑した声が返ってきた。


「え……? あ、その……。え、ええ?」


 そこにいたのは、水色の下着姿の女の子。水色の瞳に流れるような美しい金色の髪。アランの姿を見て顔を真っ赤にした“メイル”の姿があった。


「ッ! すまない着替えている最中だったか。今、外に出る。」

「あ、いえ、大丈夫です。じゃなくって、え? あれ?」


 アランは急いで廊下に出た。彼が恥ずかしいわけでは無く、メイルが恥ずかしいだろうと思っての行動である。


「あ、そのえっと、すぐ着替えましゅ!!」


 声が裏返ったし、かんでる。本当に可愛いなメイルは。アランはほのぼのとした気分になった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 魔族将軍メイル・フローレンス。

 ヴァルキリーの母とオーディンの父との間に生まれた娘。

母は平民で、父は軍人。だが、父親は剣騎士 (魔王軍で八階級ある地位のうち下から二番目の階級。ザラにいる。主に剣技しか使わない)どまりのどこにでもいるような兵士である。

 200歳の頃に魔王軍に加わり、たびたび起きる戦争で必ず大きな戦功をあげる。

 500歳の時にこれまでの功績を考えて、亡くなった魔族将軍の後を継ぐ。以後500年間、魔族将軍を務める。


 アランは久しぶりに会ったメイルの情報を思い出していた。メイルの恥ずかしい出来事でも思い出そうかと思っていると、ドアが開いてメイルがひょこっと顔を廊下に出した。


「魔王様。お見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ございません」

「良いのだ。そもそも、我が悪いのだからな」


 そういうと、メイルはいつも通りの熱を持った目でアランを見ながら部屋の中に促した。

お読みいただきありがとうございます。

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