右翼と左翼の定義
右翼と左翼の定義、というのは、混乱の元だ、と思う。
かく言う自分も、しばらくの間、混乱の中にあった。
自分なりに、ある程度、見通しがたってきたと思うので、右翼と左翼(あるいは右派と左派)の違いについて書いてみたい。
右翼と左翼というのは、ずいぶんといいかげんに使われている言葉だ。
しかし、それでも、あいまいな定義をできるだけ避けても、大きく分けて二種類の(わりとはっきりとした)定義が残ると思う。
ひとつは、もともとの右翼と左翼という言葉の意味・定義であり、もうひとつは、現代的な用法だ。
もともとの右翼と左翼という言葉の意味とはなにか。
そもそもは、フランス革命のあとの議会で、革命を引き起こした改革派(民衆や商人階級)が議場の左翼に、革命で攻撃される側だった伝統派(王族や貴族の味方など)が議場の右翼に座っていたことからきたらしい。
要するに、革命のときに、改革の側に立っていた、社会を変えようとしていた立場が左翼と呼ばれ、改革に反対し、伝統の側(この場合は王政)の立場が右翼と呼ばれた。
このことから、目指すべき理想が未来にあるという立場を左翼、目指すべき理想が過去にあるという立場を右翼という……のだが、この用法は少しわかりにくいかもしれない。
たとえば、現在の日本国憲法を変えようという立場は、右翼と呼ばれることが多い。
しかし、現在の憲法を変えるのであれば、未来志向であって、言葉の定義上、左翼なのでは?とも思えてこないだろうか。
おそらく彼らが右翼と呼ばれる理由のひとつは、憲法を変えようという立場のすべてではないにしろ、多くが「大日本帝国憲法」という「過去」の憲法に多かれ少なかれ立ち戻る意識があるからだ。
また、ときどきわかりにくだけでなく、この意味で使っていない場合も多い。(のだが、使っている場合もあるので、やはり頭にいれておくべき用法ではあると思う)
そこで、現代的な用法の説明をする。これが一番よく使われている右翼と左翼の使い方だと思う。
これは、自由と均質にかかわるものだ。(自由と平等の方がなじみぶかいが、おそらく平等よりも均質の方が、ここでの説明には正確な言葉だと思う)
さて、その定義だが、
左翼:経済に関しては均質を求めるが、文化や思想に関しては自由を求める
右翼」経済に関しては自由を求めるが、文化や思想に関しては均質を求める
おそらく、だいたいの右翼と左翼という言葉の使い方は、こちらの定義にあてはまると思う。
つまり、「あいつは左翼的だ」というときは、経済の均質を求めているか、文化や思想に関して自由を求めている、という意味でよく使われると思う。
そして、また、「あいつは右翼的だ」というときは、経済の自由を求めているか、文化や思想に関して均質を求めている、という意味でよく使われると思う。
例を出す。
規制緩和は経済活動の規制を取り払う(=自由を求めている)ので、右翼的。
富の再分配は経済に関して均質を求めているので、左翼的。
漫画の中での未成年の性行為を規制しようというのは、文化に対して規制をかける(=均質・同質性を求め、多様性を認めない)ので右翼的。
同性婚や夫婦別性は、思想に関して自由を求めるので、左翼的。
あと、環境やマイノリティ(社会的少数者)や社会的弱者に配慮する傾向があるのが左翼で、伝統や国家主義・民族主義に配慮する傾向があるのが右翼――としておけば、おおむね、右翼や左翼という言葉が、どういう意味で使われているのか、わかると思う。
もちろん、これにあてはまらない例も多くある。
たとえば、反原発。これは左翼の立場だと思う人もいるだろう。
しかし、反原発の立場の右翼の人はいる。(反原発右翼とでもネットで検索すると出てくる)
また、共産党(左翼政党)が90年代に脱原発派を批判していた文書もネットにある。(文書資料の出典は書いてあるが、自分で文書にあたっていないので、厳密には信憑性が下がるのだが)
だから、反原発というのは、右翼的な立場とも、左翼的な立場とも言いにくい気はする。
環境や社会的弱者に配慮して原発に反対するとき、左翼的な言葉になりそうだが、逆に、国防を考えてテロやミサイルの標的になったら危ないと思い反対するとき、右翼的な言葉になりそうだ、と思う。
さらに、エロ漫画の規制に関して、フェミニストの一部が賛成することがある。
フェミニズムは社会的弱者へのまなざしがある点で左翼的と分類されることが多いだろうが、この場合、文化の自由を認めてはいない。
しかし、フェミニズムは統一された思想ではない(これを知らない人もいるかもしれない)ので、エロ漫画の規制に反対するフェミニストもいる。
そして、経済の自由化を求めるタイプの右翼は、移民に賛成することがある。
しかし、伝統や民族主義を大切にする右翼は、移民に反対するし、左翼の中にも移民に反対する立場の人間はいる。
などなど。
みなさんの混乱をすっきりされる一助になっていれば幸い。