夢芽の過去と…
ーーー……それは、2年前の話。
泉美と夢芽は、旅路についていた。
「夢芽、今日から隣のクラネス共和国に行ってバカンスをしに行くよ!」
母親と一緒に3人そろって旅行をする予定を、夢芽に話す泉美。
「わーい、久しぶりに家族でバカンスだ~! イズミン、楽しみだねぇ~♪」
わくわくする自分を抑えきれない夢芽は、とてもハイテンションだった。
そして、目的地のクラネス共和国。
そこには、水色に輝く湖と、新緑と黄緑のコントラストが鮮やかな山々があり、とても自然豊かな場所があった。
「きれ~い…♪」
あまりの景色に感激し、2人して立ち尽くす。
「それじゃ、夢芽、泉美。いっぱい泳ぎましょ♪」
天世が言った。
そして2人は、天世と一緒に海でバカンスを楽しむ。
「それじゃ、ボール遊びでもしよっか!」
泉美がボールを持ってきて、促す。
「それっ!夢芽!」
「うわっ!イズミン、パス!」
「よっ…と! 母さん、パス!」
「はい♪ 夢芽、パス!」
とても楽しそうに過ごし、夕方になる。
「…はぁ、めいっぱい遊んだねぇ~♪」
はしゃぎすぎて疲れた夢芽は、夕食を済ませたらすぐに横たわった。
「ほんと、久々にはっちゃけた~…」
続いて泉美も、横たわる。
「食べてすぐ寝ると太るわよ?」
天世は健康を気遣い、2人に注意する。
そして、夜。
寝る支度をする夢芽と泉美。
「今日も一緒に寝ようよ、イズミン♪」
とても甘える夢芽。
「いいよ。ホントお前は怖がりだな~」
昔から怖がりな夢芽を優しく抱きしめる。
「ちょっ、イズミン…!?」
照れくさそうに、声が震えている。
「そんなところが好きだよ、夢芽…」
妹として大好きだということを伝える。
………その頃、天世は…。
「…待ちなさい、破壊神…私の娘たちは絶対に殺させないわよ…」
2人を絶対に守るため、気を張り巡らせながら就寝する。
そのとき、悲劇は起きた。
このクラネス共和国に、破壊神が進撃してきて、いよいよ高良家が泊まっている旅館の方にまで被害が及んできた。
「っ! 破壊神…!」
泉美と夢芽を起こさないよう、防音壁と防震壁を2人の寝ている部屋に張り巡らせる。
「…どうしてここまで来たのよ?」
天世は破壊神に問う。
「世界を破滅させるためなら、端から端まで訪問し、そして壊す。だからここにも来たんだ…」
破壊神は、攻撃を始めた。
…………その頃、泉美と夢芽。
「イズミン…トイレ行きたい、ついてきて…?」
怖がりな夢芽は、トイレに行くために泉美を起こす。
「ん…しょうがないな、分かったよ…」
寝起きで少し不機嫌だが、応じる泉美。
そして、トイレへ。
「イズミ~ン…まだそこにいる~?」
「いるから安心してー?」
怖くて呼びかける夢芽と、それに答える泉美。
そして夢芽は、用を済ませた。
だが…
「ごめん、私もしたくなっちゃった…」
トイレに入る泉美。すると、
「怖いから待つね…?」
と、泉美が出てくるのを待った。
…そのときだった。
偶然にも、破壊神と天世が闘っているところを見てしまった。
「あ、天世お母さん!!」
大声で、そう叫んでしまった夢芽。すると、
「ダメ、出てこないで!!」
天世は必死に、隠れることを催促する。
「…悪いが、見てしまった以上は…ちょっとお仕置きしなきゃな…」
仮面の取れた破壊神は、鉄雄だった。
「て、てつ…っ! 鉄雄さ…」
そう怯える夢芽に、容赦なく鉄雄は、
「さぁて、一つずつ足と手でも貰うかな~」
と言い、そして…
「っ…あ゛あ゛あ゛ぁぁぁっっ!!!!」
夢芽は、左腕と右足を切断された。
「夢芽!!?」
その悲鳴しか聞こえていなかった泉美は、トイレから急いで出て、夢芽のもとへ駆け寄った。が、しかし…
「…なっ、な…な……っ!」
無惨にも左腕と右足を持って行かれた夢芽を見て、泣き崩れ、そして吐いてしまう。
「うぐぇっ!! ゆ、夢芽…っ」
………ーーー
「私が左腕と右足を失ったのは、その時の破壊神が鉄雄さんだって知ってしまったから…。でも、そのおかげで…この
“全魔能源”
という“神聖宝”と出会えた…」
“全魔能源”
全属性・全魔法・全超能力、その全てを司り、好きなように操れる最強の能力。そして、出会った者の超能力・魔法・魔術などを瞬時にコピーし、全く同じように使えるようになる。
長けている能力は『精神侵食』。相手の精神を操る。
この能力が、全世界で唯一
“神聖宝”
と呼ばれる、最強で真極の能力。
……ーーーー…
泉美は、夢芽の敵をとるために、天世と戦線に。
その時には、破壊神の鉄雄は、仮面をつけていた。
そのとき夢芽は、少しだけ意識を取り戻していた。
夢芽は、自分が倒れている目の前の光景に目を疑った。
“全魔能源”の塊たる宝石が落ちていたからである。
それを拾った夢芽。すると、瞬時にそれが芽生えた。
そして芽生えたと同時に、夢芽の脳内に、何かの暗示が流れ込んできた。
『この能力を手にした者よ。全ての人類を精神侵食して操り、思い通りに世界を動かしてみよ…』
この意味が分からなかった夢芽だが、なにを閃いたのか、突如として行動に出る。
「…破壊神を、この場から立ち去らせてみよう…」
思い描いた夢芽。すると、本当に…
「…ちっ! また来た時は覚えてろよ!? 今度こそ殺してやるからな!!」
突然、破壊神は方向転換し、アジトへ戻っていった。
「…ほ、本当に精神侵食した……」
自分で自分の能力に驚き、そして悪知恵が働いた。
「これなら、全世界最強も夢じゃない…」
…………ーーー
「それからというもの、脳内に走る声を頼りに、全世界を見れるようにモニターを作り、異空間の中に亜空間を作って、誰も辿れない上に来れない空間で、私は
世界の全壊と、全世界の支配
を夢見て、人員を操作したんだよ~♪」
とんでもない天才が目を覚まし、世界は破滅の道へまっしぐらになっていた。
「…壮絶な過去だな。死んだことにして私を騙してたなんて…っ」
許せない、と怒りを爆発させる泉美。
しかし、魔源消却と床によって身動きがとれず、攻撃は出来ない。
「今度はね~…」
言うのをためらいながら、泉美の額に人差し指を当て、
「イズミンが、全世界を壊すんだよ?」
感電死するくらいの極強な雷電を、泉美の体内に駆けめぐらせた。
「あがぁぁぁああぁぁぁっっ!!!!!」
そして、夢芽が額から指を離したと同時に、気絶してしまう………
…泉美は、数時間が経過したとき、目を覚ました。
「んっ…。…夢……芽…?」
記憶は残っているが、何やら様子がオカシい泉美。
「イズミン、おはよ♪」
とても元気に明るい挨拶を交わす夢芽。
「…夢芽? 私いま寝てたの?」
雷電を流された記憶がない泉美は、問う。
「そうだよ? 疲れて寝てたの♪」
事実を隠し、そう言った。
少し、泉美の様子がおかしかった…
「…それじゃ、イズミン♪ 出掛けよう?」
いったい、どこへ出掛けるのか………




