異国友好
シュロナとバルミ。
「未だにバルミが王女として活躍してるのが許せない…。私のことを勝手に裏切り者扱いしたエフティルシパ王国の王女…!」
無源魔能を使い、無数の矢を放つ。
それを軽く避けながら、瞬足の蹴りで仕返しを始めるバルミ。
「それはアタシと関係ないじゃん!? アタシは、王国にいる間ずーっと姉さんの事を心配してた…。王である父様が姉さんを切り捨てた時は、正直なところアタシも反抗したよ! だけど、反抗するなら王女の地位は剥奪する…って言われた…。その誘惑に負けなければ、今ごろアタシは姉さんと…」
「そんな御託は要らないのよ!! 何を言われても私は絶対に信じない!!」
バルミの語らいに聞く耳を持たず、シュロナは怒りのままに攻撃を続けた。
「アタシは、姉さんに信じて欲しいだけなんだよ…! 頼むから、分かってくれ…っ」
一撃を受けたが、他は受けきった。
「確かに父様は捨てたけど、それはアタシには関係ないだろ!? その殺意をアタシに向けるのは間違ってるって言ってるんだよ!!」
本気の蹴りを繰り出し、連続で神速の蹴りをシュロナに向けて放つ。
しかし、それを必死に受けきったシュロナ。
「たとえ私の妹でも、
王国側だから
許さないのよ…!」
もはや王国側の全員を敵に回した。
「許せないから、エフティルシパ王国だけを破壊しに行ったのよ、私は! 理由も、その時だけつけて…ね。
平和だからつまらない
…この理由だって、ちゃんとある…!」
理不尽だと思っていたバルミは、すかさず問う。
「どう考えても理不尽でしかないだろ、そんなの…っ!」
あまりの理不尽に怒り、連続蹴撃する。
あまりの速さでシュロナは受けきれず、ダメージをくらった。
「…っ! いい? ちゃんと聞きなさい…」
態度を改め、シュロナは話し始める。
「平和だからつまらない…。その理由は、シェガンゾフ帝国の敵対国でありながら、特に何も起きなかった事が理由よ。攻撃もしてこない、それなのに友好条約も結ぼうとしない…。こちらから攻撃しても、抵抗することなく壊されていった王国が、
“平和のために活動してる場面”を見たことがないのよ!?
それなのに、それが平和だって思ってるエフティルシパ王国は、どんな神経してるの!? …っていう話なの。分かる?」
バルミは、聞き入ってしまった。
「…父様…まさか、そこまで無神経だとは思わなかった。けど…」
しかし、反論する。
「アタシは、もう一つの可能性を考える」
「…何よ、その可能性って…」
少し戸惑うシュロナ。そしてバルミは語る。
「もしもシェガンゾフ帝国が
攻撃しなかったら
という可能性…だね」
バルミは続けた。
「もし帝国側が攻撃しなければ、王国が滅びる必要もなかった…。王国側は、いろんな可能性を考えすぎて何も出来なかったんだとアタシは思う…」
「…その“いろんな可能性”って…?」
少し聞き入っているシュロナ。
少しずつバルミに心を開いているのか…。
「友好条約を結びに行ったところで、シュロナを裏切り者扱いしてしまった父様は、その事実を掴まれている時点で結んでくれないだろう…そう踏んで、友好条約は捨てた。これが1つ目。
もし王国側から手を出したとしても、技術が王国より遥かに卓越している帝国には手も足も出ない…だからこそ武力行使は不可能。それが2つ目。
そして何より、シュロナが帝国側に嫁いだことにより、王国側の事は全て明らかになっていて、情報が筒抜けになっているだろう…。これが3つ目だ。
この3つが理由で、友好条約を結ぶことも出来ず、王国側からアクションを起こすことも無くなってしまったんだ…」
「…ふぅん? それで帝国側からの動きを待ったのね…」
なぜか納得したシュロナ。だが、
「でもね? 帝国側は、もし友好条約を結んでくれたら、何もしなかったんじゃない…?」
少しずつ戸惑い始めるシュロナ。
「…分からないよ、アタシには…」
バルミも、少しずつ戸惑い始めた。
「ただ、アタシは…姉さんのことを心配してた…。これだけは信じてくれよ…」
思いを込め、必殺技“集束爆蹴”を発動した。
脚に全力を込め、一撃必殺の鋭い蹴りを。
それに対抗し、シュロナも、身体全体に全力を込め、バルミと同じ蹴撃を発動した。
その2つは均衡し、相殺に終わった。
…少し時間がたち、2人とも起きあがる。
「あ、れ…? …姉さん…?」
必死にシュロナを手探りするバルミ。だが、
「っ…つぅ…!!」
全力で蹴りと蹴りがぶつかったために、体にガタがきて全体に激痛が走った。
「バ、ルミ…? っ…」
シュロナも、同じ状態だった。
しかし、この相殺を期に、シュロナはバルミに心を開いていった。
「…私のこと…王国に、いる間…ずっと…心配して…くれてた、んだね…」
「そう、だよ…! アタシ、姉さんが…帝国側になってた、時も…殺意のままに、動かないで…ほしかった…。大好きな、姉さんと…戦いたく、なかったから…」
姉妹愛は、静かに復活し始めた。
「…ありが、とう…バルミ…。私も………」
そこまで言った時、シュロナは気を失った。
「私も…何?」
それに気づかなかったバルミ。だが、
「…姉さん…?」
問いかけても答えないシュロナに異変を感じ、とっさに痛みにもだえる身体を起こして、彼女のもとへ駆けつけ、抱きしめる。
「おい! まさか、死んでないだろうな!? やだよ、そんなの! 姉さん…!!」
目から涙をこぼしながら、シュロナを強く抱きしめ、地面にヒザをついた。
「姉さんは女帝…アタシは王女…。信じてもらえたら、その立場を利用して、姉妹で友好条約を結ぼうって、アタシは考えてたのに…死んだら出来ない…!!」
全てを吐露したが、一向に目覚めない。
……シュロナは、どうなってしまうのか…。
ーーーーー……
一方で、智歌と亜久未・ニヒツと円は………




