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4つの交錯  作者: 幡賀 吉紗
~神源 編~
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異国友好

 

シュロナとバルミ。


「未だにバルミが王女として活躍してるのが許せない…。私のことを勝手に裏切り者扱いしたエフティルシパ王国の王女…!」

無源魔能アルケミックを使い、無数の矢を放つ。

それを軽く避けながら、瞬足の蹴りで仕返しを始めるバルミ。

「それはアタシと関係ないじゃん!? アタシは、王国にいる間ずーっと姉さんの事を心配してた…。王である父様が姉さんを切り捨てた時は、正直なところアタシも反抗したよ! だけど、反抗するなら王女の地位は剥奪する…って言われた…。その誘惑に負けなければ、今ごろアタシは姉さんと…」


「そんな御託は要らないのよ!! 何を言われても私は絶対に信じない!!」

バルミの語らいに聞く耳を持たず、シュロナは怒りのままに攻撃を続けた。


「アタシは、姉さんに信じて欲しいだけなんだよ…! 頼むから、分かってくれ…っ」

一撃を受けたが、他は受けきった。


「確かに父様は捨てたけど、それはアタシには関係ないだろ!? その殺意をアタシに向けるのは間違ってるって言ってるんだよ!!」

本気の蹴りを繰り出し、連続で神速の蹴りをシュロナに向けて放つ。


しかし、それを必死に受けきったシュロナ。

「たとえ私の妹でも、


 王国側だから・・・・・・


 許さないのよ…!」


もはや王国側の全員を敵に回した。


「許せないから、エフティルシパ王国だけを破壊しに行ったのよ、私は! 理由も、その時だけつけて…ね。


 平和だからつまらない


 …この理由だって、ちゃんとある…!」


理不尽だと思っていたバルミは、すかさず問う。

「どう考えても理不尽でしかないだろ、そんなの…っ!」

あまりの理不尽に怒り、連続蹴撃する。


あまりの速さでシュロナは受けきれず、ダメージをくらった。

「…っ! いい? ちゃんと聞きなさい…」

態度を改め、シュロナは話し始める。


「平和だからつまらない…。その理由は、シェガンゾフ帝国の敵対国でありながら、特に何も起きなかった事が理由よ。攻撃もしてこない、それなのに友好条約も結ぼうとしない…。こちらから攻撃しても、抵抗することなく壊されていった王国が、


 “平和のために活動してる場面”を見たことがないのよ!?


 それなのに、それが平和だって思ってるエフティルシパ王国は、どんな神経してるの!? …っていう話なの。分かる?」


バルミは、聞き入ってしまった。

「…父様…まさか、そこまで無神経だとは思わなかった。けど…」

しかし、反論する。

「アタシは、もう一つの可能性を考える」


「…何よ、その可能性って…」

少し戸惑うシュロナ。そしてバルミは語る。


「もしもシェガンゾフ帝国が


 攻撃しなかったら・・・・・・・・


 という可能性…だね」


バルミは続けた。


「もし帝国側が攻撃しなければ、王国が滅びる必要もなかった…。王国側は、いろんな可能性を考えすぎて・・・・・何も出来なかったんだとアタシは思う…」


「…その“いろんな可能性”って…?」

少し聞き入っているシュロナ。

少しずつバルミに心を開いているのか…。


「友好条約を結びに行ったところで、シュロナを裏切り者扱いしてしまった父様は、その事実を掴まれている時点で結んでくれないだろう…そう踏んで、友好条約は捨てた。これが1つ目。


 もし王国側から手を出したとしても、技術が王国より遥かに卓越している帝国には手も足も出ない…だからこそ武力行使は不可能。それが2つ目。


 そして何より、シュロナが帝国側に嫁いだことにより、王国側の事は全て明らかになっていて、情報が筒抜けになっているだろう…。これが3つ目だ。


 この3つが理由で、友好条約を結ぶことも出来ず、王国側からアクションを起こすことも無くなってしまったんだ…」


「…ふぅん? それで帝国側からの動きを待ったのね…」

なぜか納得したシュロナ。だが、

「でもね? 帝国側は、もし友好条約を結んでくれたら、何もしなかったんじゃない…?」

少しずつ戸惑い始めるシュロナ。


「…分からないよ、アタシには…」

バルミも、少しずつ戸惑い始めた。


「ただ、アタシは…姉さんのことを心配してた…。これだけは信じてくれよ…」

思いを込め、必殺技“集束爆蹴バーンエッジ”を発動した。

脚に全力を込め、一撃必殺の鋭い蹴りを。


それに対抗し、シュロナも、身体全体に全力を込め、バルミと同じ蹴撃を発動した。


その2つは均衡し、相殺に終わった。




…少し時間がたち、2人とも起きあがる。

「あ、れ…? …姉さん…?」

必死にシュロナを手探りするバルミ。だが、

「っ…つぅ…!!」

全力で蹴りと蹴りがぶつかったために、体にガタがきて全体に激痛が走った。


「バ、ルミ…? っ…」

シュロナも、同じ状態だった。


しかし、この相殺を期に、シュロナはバルミに心を開いていった。

「…私のこと…王国に、いる間…ずっと…心配して…くれてた、んだね…」

「そう、だよ…! アタシ、姉さんが…帝国側になってた、時も…殺意のままに、動かないで…ほしかった…。大好きな、姉さんと…戦いたく、なかったから…」


姉妹愛は、静かに復活し始めた。


「…ありが、とう…バルミ…。私も………」

そこまで言った時、シュロナは気を失った。


「私も…何?」

それに気づかなかったバルミ。だが、


「…姉さん…?」

問いかけても答えないシュロナに異変を感じ、とっさに痛みにもだえる身体を起こして、彼女のもとへ駆けつけ、抱きしめる。


「おい! まさか、死んでないだろうな!? やだよ、そんなの! 姉さん…!!」

目から涙をこぼしながら、シュロナを強く抱きしめ、地面にヒザをついた。

「姉さんは女帝…アタシは王女…。信じてもらえたら、その立場を利用して、姉妹で友好条約を結ぼうって、アタシは考えてたのに…死んだら出来ない…!!」

全てを吐露したが、一向に目覚めない。


……シュロナは、どうなってしまうのか…。



ーーーーー……

一方で、智歌と亜久未・ニヒツと円は………


 

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