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4つの交錯  作者: 幡賀 吉紗
~神源 編~
39/67

帝国

 

「…智歌。そろそろだね」

「ええ」

2人は、とある場所に来ていた。

それは、神源ホライゾンと呼ばれる場所だった。


「…いいわねぇ、こうして遠出するの♪」

とても楽しそうにしている智歌。

実は智歌は、こうして遠出をしたことのない箱入り娘だったのだ。その理由は、最強になってしまったことで自由が無くなってしまったから。


「智歌って、こういう感じで遠出したことないの?」

意外な告白に驚き、泉美は聞いた。


「ないわよ。だってアタシに自由なんて無かったから…。でも、さっき亜久未に負けたことで最強の座は失ったから、これからは自由ね♪」


そんなこと言いつつ、実は既に自由な智歌。それを隠し、これから自由だと言った。


「…なるほど、ね。“最強”は、一度でも負ければその座を降ろされ、最強とうたえなくなる…そういう使命だもんね…」

泉美は納得していた。


「…それにしても、この不穏な空気は…何?」

不意に泉美は、こう呟いた。

他国の民だからなのか、やたら警戒される2人。


その割には、特に関門とかは無く、誰でも入国できるようだが。


「…異国の者だな?」

こう突然問われる2人。答えたのは泉美。

「えぇ。私は“表世界”で能力を身につけて、裏世界“魔源域ダークオリジン”に飛んできた者よ?」

「…そっちの女は?」

智歌に質問を投げかける。

「アタシは“絶世森海エンゾバース”出身の女よ」


「何故この“帝国”へ来た?」

間髪入れずに質問をしてくる男。迷わず泉美は答える。

「この国の方角に不穏な空気を感じて、正体を知りたかったから来たのよね…」

「そうか…」


その瞬間、戦闘態勢を解く男。そして、名を明かした。


「オレは“ニヒツ”だ、よろしくな? …まぁ、ゆっくり見ていってくれ。この帝国は、とても発展してる国だからな」


帝国の幹部である“ニヒツ”だった。




ーーーーー……集合場所ホームグラウンドには、シヴォとニェンテがいた。


「…ニヒツと会った彼女たち、どうやら侵略しに来たワケじゃなさそうね。戦闘態勢アタックスタイルは解こう…」

そう言ったのは、シヴォだった。


「そうだね、シヴォ」

同意したニェンテ。


「…そういえば、レーシァは元気してるのかしらね? 昨日…だったかしらね。いきなり音信不通になったんだけど…」

誰かのことを心配するシヴォ。


「…レーシァが居ないことには、心配で眠れないよ…」

と、ニェンテ。


こう心配していたときに、レーシァからシヴォへメールが届いていた。が、その文章は明らかに違う人物が書き記していて、レーシァの行方を示してあった。


『初めまして、シヴォさんとニェンテさん、そしてニヒツくん♪

 レーシァは今、私が預かってま~す♡


 でもでも~、ケンカ仕掛けてきたのはレーシァくんが先。だから……倒してあげた(笑)


 最強の女 夢芽ゆめより♪』


“夢芽”という女からのメッセージだった。

つまりそれは、その女がシヴォやニェンテ、そしてニヒツに向かって挑発してきたのだ。


「…この女って、まさか……」

シヴォには心当たりがあった。この“夢芽”という名前に。


「…シヴォ、もしかして知ってるの? “夢芽”っていう女のこと…」

質問を投げかけるニェンテ。シヴォは、それに答えた。


「知ってるわ…。この“夢芽”は…ーーーーーー…なのよ」


「っ!!?」

その告白に驚きを隠せず、そして

「何で…そんな人の所にレーシァが…?」

と、訪れたレーシァにも驚きを隠せなかったようだ。



ーーーーー……神源ホライゾン、泉美と智歌が来ている場所。


「…ニヒツ。私は“高良たかよし 泉美いずみ”。よろしくね?」

丁寧に自己紹介する。

「私は…」

智歌が自己紹介しようとした時、ニヒツは知っていたことを口にする。

歌聖神セイクリッドの“羽多浜うたはま 智歌ちか”だろ? オレは知ってる。2人ともよろしくな」


なんだか複雑な気分になる智歌だった…。




ーーーーー……某世界、某所。


「…イズミン、神源ホライゾンでは何も無いかも知れないから大丈夫そうだけど…問題は、その帝国の“敵対国”を復興支援してる、あの2人よね~…それに、その国の“王女”も復活してるし、波乱の展開になりそうだね~…」


と、まずは泉美の心配をし、それから、


「…まぁ、その事件よりも先に、シヴォ達が動くと思うけどね~…レーシァが私の隣で封印されてるし、取り返しに来るかな~…うん、確実に来るね~♪」


と、レーシァを取り戻しにシヴォ達が来ると予感めいた予想をしていた。


…この女が、夢芽である。

つまり、封印されている帝王が“レーシァ”なのだ。


ーーーーー………



ーーー……夢芽の予想通りに、2つの事件が同時に始まろうとしていた。


 

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