裏の世界
放課後の教室で。
「ねぇ、テッちゃん…」
「ん?」
「私の能力と、テッちゃんの能力……本質は少し違うよね?」
唐突に、直感的に泉美が感じた事を言う。
「まぁ、そうだな。俺の能力は、元々最強だった人から受け継いだ…」
「その反面、私の能力は、微弱だったチカラを育て上げることによって得られた最高の能力…」
そう。最初から強かったチカラと、作り上げてきたチカラ。
2人は相反する経緯で能力を身につけたのだ。
「そんな私と鉄雄の能力をぶつけると均衡してしまうのは、お互いに最強だということ、なのかな…?」
ここ一番の疑問を鉄雄に向けて発言してみる。すると、
「そうなんだろうな…。とは言え俺が手にしてる最強のチカラも、元々は、いずちゃんの経緯と同じなのかもしれねえから…なのかもしれないな」
原点は一緒なんじゃないか、と答えた。
その2人の隣を、誰かが通り過ぎる。
そしてその人物は、泉美に向けて、何かボソッと言った。鉄雄には聞こえないように…
それを聞いた泉美の表情は、一瞬だが曇ったように感じた。それを鉄雄は感じた。
「…ん? どうした、いずちゃん…」
「……いや、何でもない…」
この時の泉美は、その人物が言い放った言葉を、安易に信じられなかった。
………そして2人は、お互いに帰宅する。
高良家の一人娘である泉美は、親と一緒に食事するのが何よりの楽しみで、父親の帰宅を待っていた。
「お父さん、まだなの?」
「少し遅くなるって」
「ちぇっ、せっかく一緒に食べるのに…」
「仕事は学生と違うのよ? 分かってちょうだい…」
そう言う母親も、少し寂しげだった。
----…ところ変わって、裏側の世界。
この世界は『魔源域』と呼ばれ、一般的人間たちが入り込むことの出来ない世界。
だがしかし、そんな魔源域は、今となっては凝縮している。
能力を持つ者が、ある人物の手によって惨殺されたのだ。それも、たった1人。
その人物のチカラで、全ての魔法使い・超能力者・魔術師・格闘家・その他諸々を消し去った。
そのため、今では…わずか数人しか能力は持ち合わせていない。
その内の2人は、泉美と鉄雄。
この魔源域にて、新たな事件が勃発する。
それは、この魔源域を支配下に置こうとしている人物が活動を始め、新たなる魔源域を創りあげる計画
『魔源域改造計画』
である。
それを提唱した人物は、禍々しい仮面を顔に装着して現れた。
「わずかに残った魔源域の能力者たちよ! 私の前にひれ伏し、消えるがいい!」
そして仮面の男は、精鋭達に禍々しいチカラを振りかざす。
しかし、ある男だけは、何やら禍々しいチカラで、仮面の男に対抗した。
「む…! やるな貴様…」
仮面の男は、そう言ってから、
「次に会うときは対抗できないと思えよ? 今日は、ほんの挨拶代わりだ! さらば!!」
と言い捨て、彼の前を去った。
-----…ところ変わって、高良家。
「あっ! そういえば泉美!」
母親は、突然発言する。
「わっ!? な、なに?」
それに驚いたが、泉美は冷静に持ち直した。
「鉄雄くんに電話してほしいのよ。たまには一緒に食事会でもしよう、って」
「あー、前から言ってたアレか! おっけー!」
何かを企んだ食事会。それで霧龍家に驚いてもらおうとして前々から計画していた“ドッキリ食事会!”
その連絡をするべく、迷い無く鉄雄へ電話をかける。
何回ものコール音が耳に残る。そして、ブツッと鳴る。
すると鉄雄は、電話に……------




