2人の絶縁
---…翌朝。鉄雄が何かしら用事があって、泉美と遊ぶ予定が狂った日の1週間前。
起床する泉美。しかし、あからさまに寝不足だった。
だが、無理やり笑顔を作り、周囲には明るく振る舞った。
「おはよう、みんな!」
と、少し元気のない声で挨拶する。
それが気になった鉄雄は、泉美を呼んで2人きりのシチュエーションになる。いつも通りに、屋上で。
「何かあったのか? 相談なら乗るぞ?」
そう言ってくれた鉄雄。だが、昨日…
『鉄雄が破壊神』
だということを知ってしまった泉美は、何も答えなかった。
「い、泉美…??」
鉄雄の伸ばした手が泉美の肩に触れようとした時、
「触らないで!!」
と拒絶した。
「な、なんで…!? 俺、何かした!?」
なんでなのかサッパリ分からなかった鉄雄は、泉美に問う。
それに対して泉美は、
「…知っちゃったのよ…。昔の真実…」
と、何かを知ったことを、鉄雄の正体を知ったことは伏せて発言した。
「あの日…私の妹は、戦争に巻き込まれて右足を失い…その次に左腕を失った…。私と鉄雄が超能力者になった5年後、つまりは2年前…」
「…あれは悲惨だったな…」
ここで鉄雄は墓穴を掘った。なぜなら…
「…ね。そして、テッちゃんが……いや、鉄雄がそこに居たことも、初めて知った……」
そう。その時彼女の隣に居なかったハズの鉄雄が、その事件を目の当たりにしていることを自らバラしたのだ。
「…あっ」
口が滑ったことに今さら気づいた鉄雄。だが、時すでに遅し。
「そうだよね……破壊神さん…!」
そう大声で怒鳴った時だった。泉美は、鉄雄とともに異空間へ飛ぶ。
するとその先で、いきなり地割れを起こし、それと同時に鉄雄めがけて、気を凝縮集中させた拳を振りかざす。
「ま、待て!!」
その拳を受け止め、説得しようと試みる鉄雄。
だが、あまりの怒りに泉美のオーラ値が爆発的に上昇し、さすがの鉄雄も抑えきれなかった。
(くっ…! 激増強眼を使うか? いや待て、泉美だけは……)
その時、泉美の眼にも……
(…っ!? い、泉美にも激増強眼が…!?)
泉美の左目に“S”の形をした印が現れ、オーラとパワーが格段に跳ね上がる。
「私のは“爆膨圧眼”っていう禍々しき呪いの眼…」
4倍なんてものじゃなく、そのオーラ値は数十倍に軽く跳ね上がった。
泉美は、もはや怒り任せに、鉄雄を殺す勢いで仕掛ける。
すると鉄雄は、少しずつ本性を露わにしていく。
「もう避けられねえか…。泉美も、ここで死んでもらう!」
幼なじみで親友だった泉美との絆が、今こうして崩壊してしまった。
「私は死なない…、鉄雄は私を殺せない…」
鉄雄の激増強眼を知っている泉美は、そう言う。
ここで、意外な人物が現れる。
その場面に偶然にも居合わせていた終矢が、そこにいた。
「…っ! 知っちまったか…泉美が…」
その存在を確認し、鉄雄は、
「終矢、いたのか…!」
と驚きながらも、陰ながら奈那を呼び出していた。
しかし、そんなことをせずとも、奈那は鉄雄の近くに居た。
「私なら、ここに居るわ」
鉄雄は、あまりにも周囲が見えていなかったようだ。
「あれ…?」
それを自覚した鉄雄。だが、立ち直るのは難しかった。
「だから鉄雄は私を殺せない…」
まるで弱点を握りしめているように、泉美は語るように話す。
2対2 の、小さな戦争が幕を開ける…かな? …-----




