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4つの交錯  作者: 幡賀 吉紗
~破壊神 編~
11/67

もう一人の破壊神(ダークマター)

 

裏世界、某所。

綾巻と彩夏は、誰なのか突き止めるべく飛んできた。

そこには、確かに肉眼で確認できる破壊神ダークマターが立っていた。

しかし、決定的な違いに気付く2人。

「あの破壊神……胸が膨らんでる。明らかに女だ…」

綾巻は確信した。鉄雄以外にも破壊神が居るということを。

それと同時に彩夏は、心当たりがある女性を思い浮かべる。

だが、明らかに全部が違うようだ。

「校内には存在しない人物だね、恐らく。誰だ…?」


そうこう考えてる時に、破壊神は2人めがけて飛んできた。

「傍観者は殺すわよ!?」

そう言って破壊神の女は、能力を振りかざす。

両手に気を込め、2人の周囲をオーラで囲み、そして大きな威圧力で2人を挟み撃ちにしようとした。


「右は私がやるわ。彩夏は左を!」

「はぁい、よっ!!」


綾巻は、まず左手で威圧を抑え、右手に気を込めてから、右手を勢いよく前に振り出し、威圧力同士で相殺させた。

彩夏は、最初から両手で対抗し、押し切った。全力の半分くらいのチカラで。


「くっ…! やるわね…」

破壊神は悔しがり、さらに攻撃を仕掛けてくる。

「これなら、どうかな!?」


とんでもなく太い集束砲ブレイカーを2人めがけて発射した。


「これは凄まじい…! 2人がかりで抑えるよ!!」

綾巻は彩夏にそう言ったが、彩夏は違った。

「シノン、私に任せて」

使っていなかった左手を使い、いとも簡単に相殺する。


…彩夏の左手は、何か特殊な真極能力エクストリミティのようだ。


「なっ…!? 貴様は…“全逆応インフィニティ”のサヤカか!?」

能力回路ネットワークの逆流を感じ取った破壊神は、どうやら彩夏を知っている人物のようだ。

「ああ、そうだけど? …って、その声……」

どうやら彩夏にも心当たりがある声のようだ。


「まさか、バーミーか!?」


バルミッフェ・ニダ・エフティルシパ 18歳

(※以下、バルミ)


裏世界内の“エフティルシパ”という国で育った国王の娘だった。

「よく覚えていたな…貴様」

仮面を取り外し、素顔をさらけ出すバルミ。


空色の瞳に、ポニーテールは金と銀でメッシュの掛かった色合い、前髪は1日1日交互に左右を入れ替えて、上げずに垂らしている。今日は右が長め。


「今でもアタシは貴様が嫌いだ。こんな錆びた世界・・・・・を好きでいられる貴様が!」

怒り口調で彩夏に怒鳴り散らすバルミ。すると彩夏は、

「私は、今の裏世界を錆びた世界だなんて思ってない…。ただ壊されてるだけだし…それに裏世界は、超能力の宝庫・・だから…」

何か意味ありげに怒りながら、そんなことを言う。

それに続いて、綾巻は、

「壊していい世界なんて無い。だから破壊させない…」

と、バルミを説得しにいく。

だが……


「そう言ってヤツら・・・はエフティルシパを騙して壊した…! だから今度はアタシが壊してやる!! そんな虚偽で破壊をしたがる裏世界を!!」


そう言ってバルミは、彩夏と綾巻に襲いかかる。



-----…そんな戦闘の最中、泉美は。

「ふぅ…。今日も良い湯加減…♪」

お風呂でマッタリとしていた。

泉美は、かなりの綺麗好きで、一度身体を洗って、風呂に入って、もう一度身体を洗い、それから出るようだ。

しかし不思議なことに、潔癖症では無いのだ。

そんな泉美は身体を洗い終わり、風呂から出る。

「気持ちよかった…」

そうして風呂から出た時だった。

直感的に何か禍々しいモノを感じ取った泉美は、すぐさま着替え、裏世界に飛び移る。

そこには鉄雄も居るだろう、と思っていた泉美。だが、そこに彼は居なかった。

代わりに居たのは、綾巻と彩夏、そしてバルミ。


「えっ…? 生徒会長に、副会長…?」


ここに来て初めて、2人が超能力者だということを知った。

「…? 貴女は…?」

2人は泉美を知らなかったようだったので、自己紹介をする。

「私は高良たかよし 泉美いずみ。鉄雄と同じクラスの2年生です。今後よろしくお願いします!」

深くお辞儀し、そして本題に移る。

「突然なんですけど、私は裏世界から禍々しい何かを感じて飛んできました…。何かありました?」


その質問に答えたのは、綾巻生徒会長。

破壊神ダークマターは知ってる?」

「はい…」

「実は、破壊神の破壊活動を止めに来たのよ。そしたら彩夏の知ってる人物で…何が何やら、私は混乱してる所よ…」

綾巻は破壊神として活動していたバルミを指差し、そう言った。

ところが彩夏は、予想だにしない質問をしてきた。


「今まっ先に鉄雄って呼んだってことは…高良さんは霧龍くんの友達?」

という、本当なら聞く必要もない質問だったが、それに泉美は答える。

「はい、そうですが…」


そう答えた直後だった。

彩夏の攻撃の矛先は、突如として泉美に向けられる。

「あぐっ!?」

いきなりの攻撃に動揺した泉美だったが、瞬時に、攻撃される気配を感じ取り、そして防御していた。

「い、いきなり何するんですか!?」

突然の変化に驚きを隠せない泉美。すると彩夏は、


「霧龍くんの友達なら、あなたも破壊神の1人だよね?」


と、鉄雄が破壊神だから繋がりがあると見なしてしまっていた。

しかし、それが初耳の泉美は、


「…えっ!? 鉄雄が……破壊神ダークマター…!?」


と驚いて腰を抜かしてしまった。

その様子を見た彩夏。しかし一方で、倒れそうになった泉美を支えた綾巻。

「知らないフリしても無駄よ。彼の友達とあらば……」

そこまで言って攻撃を仕掛けようとしたとき、綾巻が泉美に助け船を出す。

「彩夏、待って! …泉美さん、霧龍くんが破壊神だってことは今初めて知ったみたい…」

そう。綾巻は読心術も兼ね備えていたのだ。

「…っ!? なん…だって……!?」

その一言で彩夏は手を止める。

「私の読心術マインドロードは心の奥底の真実をあぶり出す…。それは彩夏が一番知ってるでしょ?」

「知ってる…。……疑ってごめん、高良さん」

拳を下げ、泉美に手を差し出す。それを優しく握り、泉美は立ち上がった。

「鉄雄が……破壊神ダークマター……」

その単語を何回も繰り返し呟きながら、泉美は少しずつ我を忘れていく。そして……-----


 

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