其の壱 待ちわびるソレ
このサイト初投稿で緊張気味のBLUEです。読んでくださると幸いです。
ある程度構想は浮かんでいますが、つたない文章力ゆえ超遅筆かと思いますが、どうかご了承ください。
果てなき炎の海―
そこに無数のヒトがいた。
ごうごうと燃え盛る炎は衰えることなく、有象無象を呑み込んでいく。
ヒトらも例外ではなかった。
彼らは幾度となく焼かれ、呻き、苦しみ、灰と化し、またヒトに還る。永遠とも思える時間の中でただ廻り続けているのだ。
ここに在りし者は皆、現世で罪を犯し、死後に罰を宣告された者ども。
此処は、悪しき魂が堕ちて罪を償う場― 地獄である。
「く、く、く……」
炎の中から上がったのは、ひとつの笑い声。
阿鼻叫喚。そのような言葉がふさわしい空間において、この笑いは極めて異様であった。
「く、く、く……ぬるい、ぬるいのお」
嘲笑うかのような言葉とともにソレは立ち上がった。
ソレは男であった。
みすぼらしい襤褸を着ているこの男、奇妙なことに焼け跡の一つもついていない。
燃えたぎる炎の中でも熱さを感じていないかの如く、平然と立っている。
「全く、地獄の業火とは聞いて呆れるわ……」
男は、ゆったりと歩みはじめる。
と―
どうしたことだろうか。
辺りの炎が、まるで男に道を明け渡すかのように不自然に動きを変えてていくではないか。
「かの閻魔大王が誇る地獄ともなれば、退屈せぬと思うたが、今や我が庭同然……。まったくつまらぬものよ」
ぽつりと呟くその表情は、憂いとでも呼ぶべき表情であった。
軽やかに山を登る。
一歩を踏み出すごとに、ごろごろと山の一角が崩れ落ちていくが、男は全く歩みを止めない。
「ずいぶんと月日は経ったはず……相変わらずのろまな奴らよ」
男は辺りを見回して悪態をつく。だが、それとは裏腹に彼はにたりと笑っていた。
「ふあぁぁ……」
唐突に欠伸をひとつ。
「まぁ良い……。今少し、楽しみが延びるだけのこと……」
そう言って男は悠々とその場に腰を下ろした。
「あぁ……混沌の時が待ち遠しいことよ……」
恍惚とした表情を浮かべ、手を山につく。
どろりとした感触が手に伝う。
男は静かに瞳を閉じた。
今日、地獄にて、ソレは迎えを待ちわびる―