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打倒月ノ灯流!  作者: 東京輔
プロローグ
1/19

闘いはビジネス

 闘いはビジネスだ。


 隣国の領地を奪って、あるいは侵略を阻止して国をでかくする時代はもう終わった。裕福とまでは言えないが、毎日腹を満たす事ができたら、国民は文句を言わない。自給自足ができるよう促し、足りないものは輸入品で補えばいい。誰もが笑って暮らせる平和な時代を、今こそ創り上げるべきだ。


 ――とまぁ、建前はこれくらいにしておいて。


 そんな理想を語った人間が、今まで満足できる政治を行った事があるか? 歴史を振り返ればわかるはずだ。平和を語る人間にロクな奴はいない。てめえの私欲を肥やすしか眼中にないブタ野郎だけだ。もし仮にだ、仮に真の平和が訪れたとしても、いずれは国民がその平和な時代とやらに飽きが来て、暴動を起こし、新たな体制の再構築を迫ってきやがる。


 いい加減気付こうぜ。誰も言わないなら、俺が先陣切って言ってやろうか。本能には抗えないんだよ、闘争を求める人間の本質的な(さが)にはな。モラルという殻に閉じ込められた獰猛な獣を、人というのは必死に抑えてやがるんだ。平和ほど矛盾しているものはない。その平和を築くまでの道を辿れば、そこに人の血と悲鳴が必ず残っているからな。心のどこかでその矛盾に気づいているからこそ、人はその獣を完璧に抑える事ができないのさ。


 心に潜む獣を飼い馴らす術はただ一つ。闘う事を肯定すればいい。何も戦争をやれと言っているわけじゃない。あれは駄目だ、流れる血の量が多すぎる。俺が提唱する闘いは、ギリギリのスリルと適度な血飛沫、なまくら刀を使った真剣勝負だ。当たり所が悪ければ死ぬ――程良い『命懸け』だ。


 俺は国を挙げてこの闘いを興業化する。人の中に眠る動物の本能を目覚めさせてやれ。国民が闘いに熱くなれば、嫌でも国に活気がつく。闘技場が栄えれば、武器屋が儲かる。武器屋が儲かれば、鍛冶屋が儲かる。鍛冶屋が儲かれば、製鉄所が儲かる。金を回せ、経済を回せ。これが俺の考える、平和の一つの在り方だ。


 幸いにも我が国シグナは、鉄鋼業が繁栄している。さっそく人が死なない程度に切れるなまくら刀を量産させろ。――そんな馬鹿げた理想が実現するかだと? いいぜ、ついてこない輩はこの場で俺がぶった斬るまでだ。お前らのその薄汚い血で、俺の平和を紅く染めてみせろよ。



 第二十七代シグナ国国王シグナ=エッジの無謀ともいえる政策により、シグナ国は粗削りだが『闘いが合法化した国』と世界中で謳われ、世界各地から腕に自信のある戦士達が集まるようになった。

 三年に一度行われる、最強を決めるシングルトーナメント。その記念すべき五〇回目にして、後に『月見の宴』と語り継がれる武勇伝を築いた一人の剣士がいた――。


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