第二話
外は晴れている。眩しい。
俺は沙織を日傘で覆う。
「あっ」
沙織はそんなことお構いなしに、日傘から出て行ってしまう。
なんだかんだで元気だな。
俺と沙織は同じ文学部で、後期からはほとんど同じ科目を取っている。
今はいつでも一緒にいたい時期なのだと二人でそう決めた。
お互いに取りたい授業を取っていくと、お互いに取りたくない授業を取ることになる。
時間割が埋まっていくことイコール一緒にいる時間と考えれば、幸せ以上のなにものでもない。
だから結果的に俺と沙織は半分以上授業で埋まることになった。
二人の頭はお花畑だった。
俺は取りたくないと思っていたといっても、講義を聞くのは嫌いじゃないから授業はそれなりに楽しめるし、授業が終わった後に沙織とその講義の内容について話をする時間が好きだ。
しかし履修登録が正式に決定する1ヶ月が経ってから後悔することになった。
課題が多い。そして履修登録をした分、試験の数が多い。
点が取れそうな科目に集中して、難しそうな科目を捨てるしかないのか。
捨てたら成績ってどうなっちゃうんだろう。
履修しなかったことになるのだろうか。今度学生課に確認しに行こう。
「裕太さ、私たち別に全部履修登録しなくても良かったんじゃない?出欠取らない授業も多いよね」
沙織にそう言われたときは、二人でいられることにノリノリだった俺を恨んだ。
沙織もきっと同じだろう。
「沙織?」
教室の前で、少し派手目の女子が沙織に声をかけてきた。
「うん、千晶。久しぶり」
俺は初めて会った気がする。こういう友達がいるんだな。
「久しぶりじゃないよ、サークルも来ないで。なんでこんなことになっているの?」
「えへへ」
沙織は照れている。
「三崎君、だよね?」
俺を知ってる?というか同じサークルだったのか。
俺もサークルには顔を出さなくなってしまった。
「そうだけど」
沙織の手前、そっけない態度になってしまう。
それより千晶の俺の全身をなめ回すような視線が怖い。
「千晶、ちょっと、これなんだ?」
なんだこいつは。今度は頭の良さそうな男がやってきた。
文芸サークルだから、こっちのほうがそれっぽいのだけれど。
俺はこいつを知らない。
「沙織がさ、三崎君と……」
頭の良さそうな男は、何か言いたそうでたまらない表情をしているが、何も言わない。
それでも俺たちを見る目が侮辱するような目に変わっていっていることは伝わってくる。
「沙織、行こう」
「う、うん」
俺はこの場を早く立ち去りたかった。
「佐山君どうしよう、おかしいよ」
「どうもこうも……」
まだ俺たちのことを何か言っているようだった。
「千晶にバレちゃったね」
沙織はまだニヤニヤしている。
「……」
「バレるのが嫌だった?やっぱり一緒に来ない方が良かったのかな」
違う。
「そんなことない」
沙織は俺から離れて空を見上げている。何を考えているのだろう。
「わかんないなー、どうした裕太?」
わかんないのは沙織のほうだ。どうして俺と付き合っているのか。
同情ならもうとっくに終わってるだろ。
そもそも同情で俺なんかと付き合うなんて、あり得ないだろ。
「ま、いいや」
沙織は急に明るさを取り戻した。
「ねえ、私ご飯作りたい」
「えっ?」




