4話目 俺のドラゴンっ!
定番
歓迎会とは名ばかりの、飲み食い合戦から一夜明け、俺は白い翼からお金を借りて泊まった宿屋、≪うさぎ亭≫から外に出た。後で倍にして返さないとな。
……因みに看板娘のアリサさんは結婚してた。クルガさんと。
それがさらに俺の飲酒を加速させた。結果、死んだ。
「あ、換金しなきゃ」
余りのショックで忘れてたよ。俺は例の浅葱色のドラゴンの入った袋を取り出した。防腐の魔法はかかっている。
「あれだけデカいドラゴンだ、売れば結構するだろ」
中身をしっかり確認した。……良し、大丈夫。中身は無い。……………………………。
「無いっ!?」
俺の叫びが木霊した。
◉ ◎ ◉ ◎ ◉
「いやー、ビックリしたぁ」
まさか次元魔法で異空間に入っていたとは………。
俺は空の袋に防腐の魔法をかけていたのか。
「俺ってやつぁ………」
次元魔法も防腐効果があるらしい。新鮮そのものだったが、怪しまれないためにも、防腐の魔法を主にしていこう。
そう心に誓った。そして、少したそがれた。
「俺ってやつぁ………」
すでに昼の2時だった……。
◎ ◉ ◎
気を取り直し、ギルドへと向かった俺は例の ギルド嬢、つまりラレフさんの嫁、キャリーさんへ話しかけた。
………若干、近くにいたラレフさんの殺気を感じた。俺の方が強い筈なのに、なぜだか事象確定魔法を使おうかと思ったよ。
「すいません、換金したいんですけどー」
「えぇ、いいですよ、それでは換金する物をカウンターに出して、少し待ってくださいね」
俺はドラゴンの入った袋を取り出し、カウンターへと置いた。
その間、ラレフさんと目を合わせない様にしていた。
◉ ◎
キャリーさんが男の人を連れて来た。どうやら、鑑定する役職の人らしい。
「ふむふむ………………なっ!!」
あぁ、やっぱり。最早定番だよな。
「あなた、これをどこで手に入れたのですか!?」
「なんだ、ライ、そんなにスゲーものだったのかい?」
ラレフさんは冒険者なんだから、何と無く分かるだろ。あえて口には出さない。
「一応、そこの森で。凄いもんなんですか?」
「こ、これは、Lランクの<ペールブルー・ドラゴン>です!ここら辺じゃ殆ど見かけませんよっ!」
それでLランクなんだ。
「んで?いくらなの?」
「売るとしたら、10万ラフは下りませんね、しかし、鱗などは剣などに使った方が宜しいかと………」
因みに、ラフというお金の単位だ。10万ラフというと、2ヶ月は遊んで暮らせる。
しかし、欠片だけでそれか………。もっとちゃんと拾えばよかった。
「じゃあ、鱗抜きで」
「鱗抜きですと、8万ラフになります、しかし、どうもこのドラゴンは死ぬと金属の如く固くなる性質」
スパッ。
手刀で切ってやった。そんなに硬くないじゃんか。むしろ豆腐、あれ?みんな何驚いてんだ?鑑定士さんなんか口をあんぐり開けて… ………すると、キャリーさんが最初に口を開いた。
「す…凄いですね、あのペールブルー・ドラゴンの肉を手刀で切るだなんて」
そうか?どうってこと無かったけどなぁ。まぁ俺は一応生物最強だからね。と、ドヤ顔をしてみる。
すると、ラレフさんが何も分かって無さそうな顔で、
「す、凄いなぁ、ライ、流石俺が見込んだだけあるぜ「ラレフ、なにも分かって無いでしょ」……うん」
おぉ、ラレフさんが縮こまった!流石キャリーさん。しかし、白い翼のメンバーはこれがいつもの事なのか、3人とも飽きれた顔をしていた。
「で、では、ペールブルー・ドラゴンの肉を8万ラフで引き取らせて頂きます」
「あ、あぁ、宜しく」
◉ ◎ ◉ ◎
その後、俺は8万ラフを手に入れ、貸しを返し(勿論、倍にして返した。)、ギルドを出て帰路についた。
その前に、ラレフさんたちから、声を掛けられた。
「おう!ライ、明日は依頼を受けんのかい?」
「えぇ、明日から頑張ろうと思います」
「ライ、次会う時は敵同士だ。そんな相手に頑張ろうなんてぬるい事、言っちゃいけねぇ。」
そんな事、分かってるよ。
「あぁ、そうだぜ?仲良しこよしなんてありえねぇ。まぁ、リョウの事はいつでも喋ってやろう!」
クルガさん、最後までそれか。
『………負けない』
あぁ、当然だ!
「じゃぁ、な」
「じゃぁ、ですね」
此れで最初の話は終わりだ。
次回からまた1人。
俺はこの町での生活を始める。
…………………全くメインヒロインのフラグの欠片さえない状態で。
次回からはムルギリア編が、始まります。