隣のアイツはサタン様
空を見上げると、快晴のどこまでも青いキャンパスが目に映り、そのキャンパスを何羽かの鳥が飛び交う。
時折見えるのは飛行機、ヘリコプター、小さな雲……あぁ、今人も飛んでいったな。
……あれ?人?
「…気のせい…でいっか♪細かい事は気にしない気にしない♪」
お気楽に登校を再開する。
ちょっとだけ説明をしとこう。
現在この国は高校義務制度が作られ、ウチの学校も、ほんのちょっと前まで受験でピリピリしていた空気が一気に去ってしまった。
また、学校によっては学年を~年生と言わずに等部と呼ぶ学校も出てきた。
ウチのがいい例だろう。
学習内容は基本的に違わないが、しいていうならば、学校が新しいか古いかぐらいの違いである。
新旧により違う設備の例を挙げるならば、教科書かソレ代わりのカードかだ。
カードの場合は机にカード差し込む場所があって、入れたカードにより様々な資料を見たりする事が出来る。その上、タッチパネルだ。
時代も進歩したよなとつくづく思う。
「っはよ……お?」
教室に入ると、教室の壁の一部が崩れ、そこのまわりには既に来ていた生徒達が集まっていた。
「天上、どうしたんだ?」
「え?あぁ、現状を見れば早いと思うよ」
いや、もう見たけど…つーか見てるけど……
「だっしゃらぁ~!」
「うわっ!」
不覚にもすっとんきょうな声を挙げ、尻餅をついてしまう。
瓦礫に埋まっていたらしい白髪の少年は、制服|(?)についた汚れを叩き落としながら瓦礫を押し退け、にゅいっと出てきた。
「ふぃ~、もー無茶苦茶だ…あんにゃろ…覚えとけよ……」
その少年は辺りを見回すと、一度何かを考えだしたが、直ぐに手を打ち、納得したような素振りを見せた。
「あ、ここってもしかしてビャ…ク…リ…ハク…学園?」
その場にいた生徒は、恐らく春輝以外の全員が呆然としていただろう。
何故なら『…あ、はい』などと返事をしたのは彼のみだったからだ。
「ラッキー♪手間が省けたな♪よーし、じゃあ早速ガクチョー室とやらにむがぼぁっ!!?」
「あれっ!?吐血!?」
血を吐き散らしながら倒れる少年を2、3秒冷ややかな目線で見たあと、春輝は少年を引きずり、保健室へと向かう。
「ちょっと保健室行って来る」
ポカンと情けなく口を開けて春輝を見る生徒を尻目に、張の本人は少年の襟をぎゅっと握り締めたまま、保健室へと少年を引きずっていった。
保健室にて…
「あぁ、サタン君ね。校長から話は聞いてるわ。確か…転校生だったハズよ」
「ヘェ……風の噂すら来なかったですよ?」
『それが当たり前なんだけどね』と保険教師の罹々雛玲香は微笑を浮かべる。
彼女が言うには、転校生の件については昨日決定された事らしい。
ワケありなんだとか……。
「おっと…そろそろチャイムが鳴っちゃいますんでもう行きます。次の休み時間にまた来ますので」
「えぇ、待ってるわ」
玲香は小さく手を振り春樹を見送ると、叉淡の近くに椅子を置いて座った。
「この子が…ねぇ……」
『とてもそうとは見えない』と思いつつ、玲香は自らの前ですやすやと寝息をたてる少年を机の上の資料と何度も見比べた。
〝真崎叉淡、約6000万歳〟
チャイムが学園中に鳴り響き、生徒達はがやがやと騒ぎながらも席につく。
それは春輝とて例外ではなく、担任が教室に入る迄は天上、篠蔵の二人と雑談をしていた。
ただし、話に直接的に加わっている訳ではなく、聞き流しているに近い。
「――で、今度発売するゲームでさ――」
「――が―なんだろ?―だよな!――」
「……」
一言も発さず、春輝は頬杖をつきながら脳内で先程の事を再生しつつ、少年に関する疑問や、目に映ったデータを整理する。
(名前は…なんていうんだろ…綺麗な髪だったな……)
「――ぁハルキ!」
「へっ!?あ、あぁ、うん」
急に話を振られ、春輝は一度だけ心臓が激しく痙攣したような錯覚にさえとらわれたが、曖昧な返事の言葉を頭の中の辞書から瞬時に引き出し、あたかも話を聞いていたかの様に振る舞った。
「だよな!あぁ、そういえば―――」
また思考を整理し直し、話を所々聞き流す。
思考整理の再開を始めてからそう時間がたたないうちに朝活開始のチャイムが鳴り響き、担任がガラガラと教室のドアを開ける。
それとほぼ同時に教室は静まり、担任は驚きを顔に浮かべながら教卓に立った。
「……誰だ?教室の壁壊したのは……」
『知りません』と、教室の生徒達は異口同音の言葉を述べる。
実際に知らない生徒も知っている生徒も居ただろうが、瞬時に文章化するのは流石に容易では無いだろうし、話した所でどうにもならないと感じたのだろう。
「ふーん…まぁいい、それより転校生の紹介だ。入ってくれ」
春輝の頭の中では疑問符が浮かんだ。
彼自身、転校生である叉淡の事は知っているが、傷だらけで歩く事すらままならない叉淡がどうやってこの教室に来るのだろうと考えていた。
想像できたのは担架に運ばれながらくる白髪の少年、それ思い浮べると、春輝は思わずにやりと笑みを浮かべた。
しかし、それは直ぐに驚愕へと変化する。
「ういーす♪」
「!!?」
春輝は勿論、彼を一度見ていた生徒も目を疑った。
身体はすっかり治り、先程までボロボロだった姿からは想像がつかぬ程元気だったからだ。
「俺はマノザキサタン!きょーからここで一緒にベンキョさせてもらう事になった!宜しくな!!」
パチパチと拍手が鳴り響く中だったが、春輝は現在の叉淡を理解できず、口を開けたままその少年を見つめていた。
「じゃあ席は……」
「アイツの隣でお願いしま~す♪」
そう言って叉淡が指差したのは春輝横の空席、ぎょっとした春輝は正気に戻り、無意識のうちに姿勢を正していた。
「それでいいか?ハルキ」
「へっ?ふぁ、はい」
にんまりと笑った叉淡は早速春輝の隣の席に座り、カードケースを机に置いた。
「んじゃ、宜しくな♪え~と…」
「佐倉春輝、宜しく」
二人は互いに微笑みあい、それぞれの支度を始めた。
感想がほしいです。
どうぞざっくりいっちゃってください。
がんばって最終回までつなぎますので
こんな初心者にどうぞアドバイスを・・・
※こんなキャラだせよ~とかあったらどうぞ。
出すかも?です。
出ないかも?です。