流れ弾にご注意ください
「君の昨日のお茶会での態度はなんだい?」
王立学園の喫茶室。昼休みに和やかに会話を交わす淑女、令息方の間を縫って、責める口調の品のない声が響いた。
隣で始まったやりとりに、パークス子爵令嬢ジュディは思わず首をすくめる。
隣席をうかがうと、子爵家のクレタ・タロス令嬢がじっとうつむいたまま、身じろぎもせずに座っていた。
声を荒げているのは、彼女の婚約者のグレアム・オルコット伯爵令息だ。
「やはり家風に合わないというか、お淑やかさが足りないというか。いつまでも野蛮な辺境と同じにふるまってもらっては困る。君に付き合う僕のことも少しは考えてくれないか?」
ジュディと同席しているアウストラリス辺境伯令嬢ミュリエル様が「野蛮な辺境」とポツリと呟くのが聞こえた。
一瞬、ジュディの時が止まる。
声がした方向にそっとジュディが視線を向けると、パークス子爵家の寄親でもある南の辺境伯家の次女は、手にした茶器を優雅にかたむけているところだった。
「だから、その暗い顔を止めろと言ってるんだ。なぜ、にこやかに笑っていられない? それくらい淑女の嗜みだろう。それとも辺境ではそんなことも教えないのか?」
さらに投げられたオルコット伯爵令息の言葉に、ミュリエル様の目が氷よりも冷たい色を帯びた。可憐な唇の端が弧を描く。
――誰か、あの人の口を塞いでください。
ジュディの必死の祈りは、叶わないとわかっている。領主の力が非常に強いこの国では、たとえ王族であっても婚約者同士の会話に口をはさむ権限はない。ましてや子爵令嬢でしかないジュディが、爵位が上の伯爵令息の話をさえぎれるわけがなかった。
仕方なしにジュディは、声をはりあげる。
「アウストラリス辺境伯ご令嬢、ミュリエル様」
「なにかしら、パークス子爵令嬢ジュディ?」
ミュリエル様の気をこちらに引きつけるとともに、せめてすぐ横に辺境伯の令嬢がいると気づけとばかりに声を大きくした呼びかけに、ミュリエル様は唇に笑みをはいたまま、首をかしげた。
駄目だ。
これは駄目だ。
あきらかに怒っている。
普段ミュリエル様は、こんな風にジュディを呼ばない。
安穏としたひとときは、ミュリエル様の冷たい笑みとともに消え去る運命だったらしい。
「いえ、なんでもありません」と、ジュディは力なく肩を落とすと、チラリと隣へ目を向けた。
オルコット伯爵令息は、やはりこちらに気づいてもいない。
どうしてこんなことになったのか。
東の辺境近くに位置するタロス子爵領から王都や中央の都市へ出るには、オルコット伯爵領を経由するのが最も近い。タロス家にとっては、通商路の確保が目的の婚約だ。ジュディは学園の噂話に敏感なほうではないが、それくらいは知っている。
彼らの婚約は、まさしく政略によるもの。そこに親愛の情や信頼がないのは、さきほどの会話だけで察せられた。爵位的にも、領地の位置関係的にも、クレタ嬢が逆らうことは難しい関係だ。
案の定、クレタ嬢は言い返すこともなく、ただ頭を下げた。
「……申し訳ございません」
「僕は謝ってもらいたいわけじゃない。改善してほしいと言っているんだ」
「…………申し訳ございません」
「ほら、そういうところだ」
感情を見せずに淡々と応じたクレタ嬢の言葉に、オルコット伯爵令息の眉がくっと寄せられた。
「どうして素直に、直すと言えないんだ? 少しはネリアを見習ってくれ」
オルコット伯爵令息は自分の隣に視線を向けると、うってかわったやわらかな笑みを浮かべる。
彼の真横に腰かけているネリア嬢が、困ったように眦を下げた。オルコット伯爵領の南に接するシラー男爵家の娘だ。確か幼馴染だと言っていたはずだ。
「まあ、グレアム様、わたくしはそんな……」
彼女は上目づかいでオルコット伯爵令息を見つめた。その口元を控えめな笑みが彩る。
ジュディはその仕草に感心した。是非を述べることなく、曖昧なだけの言葉を吐いて、ただただ微笑んでいる。淑女なら黙って笑っていろというオルコット伯爵令息の期待に、見事に応えている。
「これだから、礼儀もわからない辺境の田舎者なんかと婚約したくなかったんだ」
苛立たしげに、オルコット伯爵令息が吐き捨てた。
ミュリエル様が手に持った茶器が、みしりと音を立てた。
反射的に音の方向を確認したジュディの目に、白磁のカップに走った細いひびが映った。
――終わった。
ジュディはゆっくりと目を閉じる。平和を享受していたいジュディにとっては、残念すぎる成り行きである。
ふたたび目を開けると、有事に備えて、ジュディは手にしていたカップを細心の注意でソーサーに戻した。
そういえば、礼儀の定義とはなんだっただろう。ジュディは遠い目で、礼節の教科書の内容を思い出す。相手を不快にさせないことが、最低限ではなかっただろうか。
婚約者の礼儀不足をとがめるオルコット伯爵令息は、婚約者であるクレタ嬢を正面に座らせ、ただの幼馴染の令嬢を隣に当たり前のように座らせている。
クレタ嬢は両手をきちんと膝の上にそろえたまま、落ち着いた灰色の目で、テーブルに置かれたカップを見つめていた。
その冷静さに、このような扱いが今日に始まったことではないことがうかがえた。
「ミュリ、どうしたの? 眉間に皺が寄っているよ?」
声とともに、ミュリエル様の隣の椅子が引かれた。すっと人影が収まる。
現れるべくして現れた人物に、ジュディは安堵のため息をついた。もともとの待ち合わせ相手が、ようやくやってきたのだ。
エウスタシオ・デル・ヴィエント。強大な軍事力を誇る南西の隣国、ラグザック゠スペリアル帝国の辺境伯嫡男だ。ミュリエル様の婚約者。
彼ならミュリエル様が暴走しかけても、うまく取りなしてくれる。ミュリエル様も大切な同盟相手である婚約者の前で、無茶なことはしないだろう。しないと思いたい。
一歳上のエウスタシオ様は、婚約が決まった後、ミュリエル様と一緒に学びたいとこちらの学園に転入してきた。
エウスタシア様が卒業となる次の春には、今度はミュリエル様が帝国の学園に編入し、ヴィエント辺境伯家のタウンハウスから通学することが決まっている。
国をまたいで接する辺境同士の関係強化を目的とした政略ではあるが、とても仲睦まじい二人なのだ。どこかの婚約者たちとは違って。
二人の邪魔をしないよう入れ違いに席を立とうとしたジュディを手を振って止めてから、返事をしないミュリエル様の顔を、エウスタシオ様が心配げにのぞきこむ。
「ミュリ?」
エウスタシオ様が、ミュリエル様の前髪にふれる。
親しい女性に躊躇なく触れるのも、親密な相手の名を縮めて呼ぶのも、ラグザック゠スペリアル帝国の習慣だ。この国の文化にはないその習慣を、エウスタシオ様は臆面もなくミュリエル様に発揮する。
いつもはそれをどこかくすぐったそうに受けるミュリエル様は、今は仏頂面を崩さない。
それに苦笑を浮かべると、エウスタシオ様は視線だけでじわりと周囲を見回した。
「誰が君にそんな顔をさせたのかな?」
エウスタシオ様が柔らかく尋ねる。頑なに答えないミュリエル様に、ちらりとこちらを見たエウスタシオ様に、ジュディは視線でそっと隣を指し示した。
彼の目が動く。オルコット伯爵令息と、うつむいたままのクレタ嬢へ。
問うように戻された視線に、ジュディはしぶしぶと小さな声で答えた。
「その。辺境は野蛮で、礼儀知らずで、田舎者だと。オルコット伯爵令息が」
一瞬の間が永遠に思えた。
「……へえ。そんな愚か者がね」
呟きは穏やかだった。ただし、その穏やかさの中に切れるような鋭さがある。
エウスタシオ様の眦が、すうっと細くなった。
「ねえ、ミュリ、教えてほしいんだけど」
エウスタシオ様は、ミュリエル様の方へ向き直り、世間話でも始めるような声音で言った。
「この国では、領地の魔獣は誰が処理するの?」
ミュリエル様は、ぱちりと目を瞬いた。
「……その魔獣が出た領地の領主ですね。領主だけでは対応しきれない場合、国の騎士団の派遣を要請することもありますが」
「ふうん」と、エウスタシオ様はうなずく。
「領主様ご本人が出るの?」
「……それは領地によるかと。前線に領主自身が出ないこともあります。それでも先頭に立つのは領主一家です。貴族には領民を守る義務がありますから」
「なるほどね」
相槌はどこまでも穏やかだが、続く言葉は違った。
「よかった。この国でも領主の役目が同じだとわかって。この国では考えが違うのかと思ったよ。領民を守れない領主に領主たる資格はないと僕は思うんだけど、魔獣の始末を他人任せにしている領主の一族でありながら、それを恥じることもない人間がいるようだから」
言葉の中身に容赦がない。ミュリエル様を止めるどころか、火に油を注いでいる。
クレタ嬢のタロス子爵領にとって、オルコット伯爵子息との婚約は、通商路の確保。では、婚約することでオルコット伯爵領は、なにを得ているのか。――武力だ。自領を魔獣の被害から守るための戦力を、オルコットがタロスに頼りきっているのは有名な話だった。
実際、オルコット伯爵令息の学園での成績は、剣も魔法もまったく振るわない。常に上位に肩を並べるクレタ嬢とは比べるべくもなかった。
「ミュリ、この間うちの辺境に火蜥蜴が出たんだよ」
ふいに、エウスタシオ様が話題を変える。
少しだけ考える間をおいてから、ミュリエル様は応えた。
「それは、やっかいな相手ですね。火を噴かれると容易に近づけない。退治するのにもコツがいります。魔法の相性もありますし。領民に被害は」
領地を接する地域だけあって、アウストラリスとヴィエントに出現する魔獣は、種類が似通っている。領主であるアウストラリス家の一員として、領地では魔獣の駆除にも従事するミュリエル様は、魔獣にも詳しい。
心配げに問いかけるミュリエル様に、エウスタシオ様は温かいまなざしを向けた。
「建物は焼けたけど、幸い亡くなった人はいなかった。父が最初から現地に出て、早期に対処したそうだから」
「それはよかったです。さすがヴィエント辺境伯様ですね」
「うん。そのうち君の義父になる人だけどね。わが父ながら、僕も誇りに思っているよ。君も知ってのとおり、辺境はそういうところだ」
エウスタシオ様は一度言葉を切ってから、続けた。
「礼儀を守っている間に、ひとが死ぬ」
何度も誰かが死ぬところを見てきた人の声だった。現場を知っているという事実が、その言葉を重くする。
「領民を守れない者が、守ってくれている者に向かって野蛮と言う。それこそ、礼儀を知らない話だと思わないかい?」
エウスタシオ様の視線が、さりげなく、しかし確実にオルコット伯爵令息へと向けられた。射抜くような鋭い視線は、問いかけではない。それは断定に他ならなかった。
視線を感じたのか、オルコット伯爵令息がこちらを向く。エウスタシオ様の冷たい視線に気づき、とまどうような表情を浮かべた。
数瞬それをじっと見返してから、エウスタシオ様はふいと視線を戻す。雰囲気を緩めると、肩をひとつすくめた。
「だいたい、女性の礼儀に口を出すなんて紳士らしくない。そんなことを口にする男こそが礼儀知らずだよ」
戯けたように、だけど、すっぱり言い切ったエウスタシオ様に、ミュリエル様の眉間の皺が少しだけほどける。小さな吐息が、ジュディの耳についた。
「あなたが婚約者でよかったです。礼儀がなっていない辺境の女でも尊重してくださるもの」
そう言って、ミュリエル様がほのかに微笑む。
エウスタシオ様が、驚いたかのように目を見開く。
「誰の礼儀がなっていないだって?」
問い返し、それからゆっくりと、まぶしいものを見るように目を細めた。
「君はいつだって感心するほど完璧な淑女だよ。でもその淑女が、幼い頃から剣を握り、魔法を鍛えて領民を守ってきた。淑女である前に、領地を預かる貴族として気高くあろうとする君を、僕は尊敬しているんだ」
「そもそも」と、エウスタシオ様の口調が少しだけ和らぐ。
「君が怒っているのは、礼儀知らずと言われたからじゃないでしょう?」
ミュリエル様がまた目を瞬かせた。
「流れる血を覚悟で領地を守ることが、辺境で生きる者の矜持だ。その覚悟と矜持を、微笑まないってだけで貶める者がいたとしたら――怒らない方がおかしい」
核心をつく言葉に、ミュリエル様が「そうですね」とうなずく。
「辺境での生活をなにひとつ知らないくせに、それをあげつらって詰ることが、なにより腹立たしいわ」
「わかるよ」
エウスタシオ様はミュリエル様の手に手を重ねる。領民のために剣を握る手をそっと取りあげると、その指先に口付けた。にこりと微笑む。
「君が僕の婚約者で本当によかった」
ミュリエル様も今度こそ憂いをなくした顔で、少し恥ずかしそうに笑った。
ジュディは、ほっと息をつく。茶を一口飲んだ。
エウスタシオ様を拝みたくなる。
おそらく今ここで何が起こりかけていたのか、ほとんどの者が気づいていないだろう。だが、あのままいけば、ミュリエル様がオルコット伯爵令息を殴り飛ばすか、それとも決闘を申し込むかしていたはずだ。
エウスタシオ様のおかげで、少なくとも、そんな暴力的な展開はなくなった。
――ああ、本当によかった。
そう思ったときだった。
かたんと椅子を引く音がした。クレタ嬢が椅子から立ち上がっていた。その背筋がすっと伸びている。
「失礼します」
そう言って、クレタ嬢は席を離れる。
「おい、クレタ。どこへ行く」
オルコット伯爵令息の声がその背を追いかけたが、クレタ嬢は振り返りもしなかった。
立ち止まったのは、ジュディの目の前。
クレタ嬢の灰色の目が、まっすぐジュディを見下ろしている。
「パークス子爵令嬢、不躾で申し訳ありませんが、お願いを聞いていただけないでしょうか」
誰もが、ほんの少し動きを止めた。ジュディも、ミュリエル様も、エウスタシオ様も。オルコット伯爵令息でさえ、言葉の続きを失って黙り込む。
「え? わ、私ですか?」
「はい。あなたです。パークス子爵令嬢。アウストラリス辺境伯令嬢様にお取次をお願いします」
「おい、クレタ、君はなにを」
オルコット伯爵令息の声に苛立ちとともに、わずかな戸惑いが混じる。
クレタ嬢は、先ほどと変わらず感情の消えたような表情で、その灰色の目だけがなにか固い決意のようなものを浮かべていた。
ジュディは、頭を抱えたくなった。
やっかいごとの匂いしかしない。
せっかく暴力沙汰を回避できたと思ったのに。
ミュリエル様が面白そうな顔で、ジュディを見ている。
ジュディはひとつ息を吸い、覚悟を決めてミュリエル様へ向き直った。
「ミュリエル様、タロス子爵令嬢がお取次を願い出ています」
「直答を許します。なにかしら?」
ミュリエル様の声が先ほどまでとはうって変わって、楽しそうな響きを帯びている。
クレタ嬢はその場で頭を下げた。愚直でまっすぐな礼儀正しい礼だった。
「私を帝国へ連れて行ってもらえませんか」
ジュディは固まった。
帝国。
今、帝国と言ったか。
婚約者に抗議するとか、家に帰って婚約者の仕打ちを訴えるとかの前に、一足飛びで帝国行きが出てきた。
ミュリエル様の顔に、ゆっくりと笑みが広がる。
「お家にご相談しなくてよろしいの?」
「我が家は即断即決を尊びます。でないと生き残れませんから」
ミュリエル様の笑みが深まった。
「あなたを連れて行くとして、わたくしにどんな利点があるかしら?」
知らぬ顔で首をかしげたミュリエル様に、クレタ嬢は即座に答えなかった。
ほんの一拍の間。
「そうですね。こういうのはいかがでしょう」
体を直立に戻すと、クレタ嬢は右手を持ち上げる。
透明な刃が、宙に出現した。ひとつではない。ふたつ、みっつ、いつつ、ななつ。
数える間もなく、十を超える氷の刃が生まれた。
それらが、揃って向きを変える。オルコット伯爵令息のいるテーブルへ向かって飛んだ。オルコット伯爵令息の頬や腕や足をぎりぎりをかすめ、地面へと突き刺さる直前、直立した形でぴたりと止まる。
一瞬の間の後、すべての氷が、カランと音を立てて床に転がった。
「ひっ」
オルコット伯爵令息が、声にならない悲鳴をあげた。見る間に頬から血の気が引き、唇が震え始める。ネリア嬢が椅子から立ち上がりかけ、足がすくんだように地面に座り込んだ。
喫茶室全体が、凍りついたように静まり返る。
「私は『氷』魔法が使えます。このように腕も確かですので、護衛には最適かと」
クレタ嬢の作り出した氷の刃は、誰も傷つけていない。テーブルも椅子も床も無事だ。見事な制御能力だった。クレタ嬢は、それがあたりまえの顔でそこに立っている。
「火蜥蜴も狩れます」と付け加えられた言葉に、「それは素敵ね」と、ミュリエル様が破顔した。
「いいわよ。連れて行っても」
即決だった。迷うそぶりすらない。
その即決ぶりに、エウスタシオ様が小さな笑みをこぼす。
ジュディは内心で吐息した。そういう人なのだ。辺境伯令嬢ミュリエル・アウストラリスという人は。ジュディを側に置くと決めたときもそうだった。
「エウスタシオ様、構いませんよね?」
「エウス」
笑いかけたミュリエル様に、エウスタシオ様が愛称を呼ぶように強請る。
「……エウス様」
「様もいらないんだけど」
しぶしぶと言い直したミュリエル様に、エウスタシオ様は肩をすくめる。
「まあ、それはおいおい。君がそう決めたのなら構わないよ。腕の立つ人間は大歓迎だ。うちは礼儀にうるさくはないし。それこそ本当に田舎だからね」
「ありがとうございます」
クレタ嬢は再び深く礼をした。
頭を上げると、彼女は初めて明るく笑った。口角が鮮やかに上がる。
その瞬間、ジュディは理解した。
ああ、これは。
おそらく。
とっくに決めていたのだ。
たまたま、その機会が今だっただけで。
オルコットを切り捨てる覚悟は、ずっと前に固まっていた。
カップを眺めていたのは、やり過ごすためだけではなく、反撃の機会をうかがっていたのだろう。
ミュリエル様は割れかけたティーカップを、優雅な手つきでソーサーに戻した。
「オルコット家との婚約解消は当然として」
ミュリエル様の言葉に、ちらりとオルコット伯爵令息へジュディは視線を向ける。彼は氷の刃が転がった輪の真ん中で、まだ青ざめていた。
「タロス家は通商を南回りへ移行する覚悟が必要になるわ。中央へ出るための最短経路は失う」
「そうなりますね」
クレタ嬢はすぐにうなずいた。
やはり迷いがない。
「中央に行くならオルコット領を通る必要がありますが、南へ行くなら通る必要がありません」
「その通りね。南回りでアウストラリスの領地を経由するなら、帝国との交易も視野に入る」
二人の応酬に、ジュディは頭の中で地図を広げる。
タロス領から中央に出ようとすれば、オルコット領を通るのが最短。あくまで、中央に出ようとすれば、だ。
中央との取引を諦め、この国の南部を通り、さらにその先にある帝国と取引するのであれば。――オルコット領はいらない。
ジュディは思わず、ごくりと唾を飲み込んだ。汗ばんだ自分の手を、ぎゅっと握りしめる。
これは。
これが成立すれば。
この国の勢力図が――変わる。
南だけでなく、東も、帝国との繋がりが強くなる。それは相対的に中央貴族、ひいては王家の威信が低下するということだ。
「父は帝国との繋がりを厭わないでしょう」
「そう。それなら――ジュディ、『演算』して」
それがわかっているのか、いないのか。
簡単に言ってのけたクレタ嬢の言葉に、ミュリエル様から指示が飛ぶ。
ジュディは遠くなりかかる目を諦めて閉じた。頭の中をさまざまな情報と数字が流れていく。
「……まずは魔獣による被害状況の推移ですが、タロス領における人的損害が減少する率はおよそ二割。オルコット領に兵力を分散しなくなる分、自領での被害軽減率があがり、おそらくですが、今の三分の二ほどの被害におさえられると試算できます。反対にオルコット領における魔獣被害の人的損傷、および、家屋、領民への被害とその補償を考慮しますと、損害率は現在の八割増しになると思われます。次に、通行税についてですが――」
「待って。待ってください、パークス子爵令嬢! あの、それは一体?」
クレタ嬢の珍しくあわてた声に、ジュディは目を開ける。
「ジュディでいいですよ。タロス子爵令嬢」
「あ、はい。では、私もクレタで結構です。ジュディ様、今の計算は――」
「あくまで、ざっとした試算です。各領の収支報告は透明性を維持するためにも、おおやけにされていますから。そこから計算しました。それに現在の道路状況や領同士の距離から計算される兵を動かす際の一般的な費用係数などを用いて、対費用効果などを加味しました」
「計算、ですか? 今のが計算だけで?」
なんと答えたものか。
ジュディは困って、ミュリエル様を見る。ミュリエル様が苦笑した。
「ジュディの魔法なのよ、それ」
「魔法、これが……?」
「ジュディの固有魔法ね。いちおう『演算』と呼んでいるけれど、情報の解析と分析、そこから導き出される理論上の未来予測といったところかしら」
ミュリエル様がそう言うと、クレタ嬢はしばらく考えをまとめるように黙った後、話し出した。
「現在、我が領から中央へ至る交易品の七割はオルコット領経由です。通行税は年々引き上げられています。加えてオルコット領を安全に通行するための護衛費用も別途請求されます」
そこでいったん言葉を切って、クレタ嬢は続けた。
「にもかかわらず、魔獣が出た時のオルコットからの兵力提供はありません。魔獣駆除については、タロスに一任しているから、と」
エウスタシオ様が「へえ」と片眉を上げた。
「魔獣駆除の対価はきちんと支払われているのかな?」
目を伏せたまま、クレタ嬢は答えない。「ジュディ嬢?」とエウスタシオ様に名を呼ばれた。
「あー……相場の三割ほどですね」
『演算』を使うまでもない。各領の収支報告に記されている、ただの事実だ。
ミュリエル様が苦いものを飲み込んだように顔をしかめる。
契約がどうなっているのか細かいことはわからないが、やっていることはほとんど詐欺に近い。
オルコット家は金を取るだけとって、魔獣については何もしない。盗賊などの人による被害よりも、魔獣による被害のほうが、対策には金も人もかかる。オルコットはただ道を持っているだけで、相場以上の金が入る。ずいぶんとオルコット側に都合の良い話だった。
「タロスには穀物が足りません。狩った魔獣を売って得た金で、穀物を買っています。でないと領民が飢える。東の辺境はいつも飢えと隣り合わせなんです」
クレタ嬢が絞り出した言葉に、もう一度頭の中で地図を広げる。
東の辺境は砂漠につながる地域だ。穀物を作るには、どうしても水が足りない。そうなれば交易で手に入れるしかない。
それも地理を勉強していれば、知っている事実ではあるけれど。
――それも、これも、あれも。ここで暴露してよい話ではないのでは。
喫茶室という衆人環視の場で家の内情を赤裸々に語るクレタ嬢に、ジュディはまた遠い目になった。
今更かもしれない。誰も止めないし、止められる雰囲気でもない。現にミュリエル様は、爛々と目を輝かせながら聞いている。
氷の刃はまだ溶けずに地面に転がっている。止めるべき人間の精神的余裕は、まだ回復していないようだ。
「なるほど。ずいぶんと一方にだけ上手い話だ」
エウスタシオ様が皮肉げに口角を上げた。
クレタ嬢はまったく表情を変えない。それこそ今更な話なのだろう。
「父も以前より代替路を模索していましたが、中央貴族との関係悪化を避けるために、決断を保留してきました」
「帝国との繋がりが深まることは、王家が嫌がるでしょうしね。でも、今ならアウストラリスとその向こうにいる帝国の後ろ盾が望めるかもしれない。あなたが帝国でうまく立ち回れば」
ミュリエル様が楽しそうに指を立てる。
クレタ嬢は緊張を浮かべて、ほんのわずか顎を引いた。
「待て」
かすれた声がした。
オルコット伯爵令息だった。硬直から回復したらしい。
「な、何を勝手に話を進めている。婚約解消だと? そんなもの認められるはずがないだろう」
声が震えていた。怒りではなく動揺だった。事態の深刻さを理解し始めたのか。それとも、ようやくこちらの話が耳に入るようになったのか。
――どちらにしても、たぶんもう、遅い。
クレタ嬢は彼をじっと見つめた。
オルコット伯爵令息が、顔を青くして一歩下がった。氷の刃は既に消えかけていたが、その刃を向けられた記憶は色濃く残っている。
「婚約については、家同士のことなので、父と貴家当主にお任せします。ですが、この身をどこに置くかは、私の専任事項です」
「君の意志で決められることじゃない!」
「いいえ。自分が誰に仕えるかは、自分で決めます。婚約の有無は関係ありません。勘当されることも承知の上です」
クレタ嬢は躊躇なく言い切った。
オルコット伯爵令息は、口をぱくぱくするものの言葉は出てこない。ようやく立ち上がったネリア嬢が彼の袖を引く。
「グレアム様……落ち着いてくださいませ」
ネリア嬢の声音はやや上ずっていた。彼女も事態の重大さを理解したのだろう。これは世間話でもなければ、婚約者同士の口喧嘩でもない。互いの領地の未来に関わる重要な話だ。それが昼休みに、学園の喫茶室で決められていく。
「タロス家が抜ければ」
エウスタシオ様が穏やかに告げる。
「オルコット領は困るだろうね」
そう言うと、にこやかに指を折り始めた。
「通行税収入は減る。護衛の費用も入らない。中央での東方産資源の流通量は落ちる。資源は高騰するだろう。さらに魔獣発生時、オルコット領へ援軍を送る優先順位は格段に下がる」
口調はあくまで穏やかなのに、わざと刺さる言い方を選んでいる。
オルコット伯爵令息の顔色がさらに悪くなった。
「君は……」
オルコット伯爵令息が、クレタ嬢を見る。
「そんなことをして、自領が困るとは思わないのか」
「思いません」
即答だった。
「一方的に搾取されつづけるよりは、まだましな未来を手繰り寄せられるのではないでしょうか」
ジュディは思わず息を止めた。
クレタ嬢が搾取されていると断言した。声には変わらず感情はない。だけど、そこに含まれている内容は、とてもではないが笑えない。
「年々上がる通行税、それを拒否すれば課される通行制限、不公平な護衛費の負担。婚姻後、タロス家の戦力提供が半ば当然として扱われれば、領の負担はさらに増します」
つまり、結婚してからの方がもっと搾られる可能性があるということだ。今の関係性なら十分考えられる未来だった。
「ならば、新規通商路の開拓と交易先の多角化は妥当な判断です。少なくとも領民に、他領のために命をかけろと命じなくて済みます」
もはや金の話ではなかった。人の命の問題だった。
喫茶室はいつの間にか静まり返り、この場にいる誰もがこの話の行方を固唾をのんで注視している。
エウスタシオ様がにこりと笑う。
「タロス子爵令嬢、ヴィエントは穀倉地帯だ。だから余計に、火蜥蜴には困っているんだけど」
「もちろん存じております。貴重な小麦を焼く火蜥蜴はタロスの敵です。私は『氷』魔法の使い手ですから、火蜥蜴を始末するのは得意です」
始末。
始末と言いましたよ、今、この人。
辺境領の猛者が手こずるという火蜥蜴をいとも簡単に、始末する、と。
エウスタシオ様が、ミュリエル様に笑いかける。
「ミュリ。ぜひとも彼女をヴィエントへ連れてきて」
「ええ。手配します」
クレタ嬢の未来が完全に決定した瞬間だった。みずから有用性を証明したクレタ嬢は、ヴィエントに行く以外の選択肢はなくなった。
ジュディは、自分がミュリエル様の側付きに選ばれた経緯を思い出した。あの時、ジュディは問答無用で、アウストラリスへ連れて行かれたのだ。今回、クレタ嬢の意向が反映されているだけマシなのか。
アウストラリス辺境伯家では、即決の人材採用が当たり前だという。使えるものを逃すな、が、家訓だ。とりあえず採用しておいて、使えなければ切り捨てることも考えるというから、怖い。
クレタ嬢も言っていた。即断即決でないと生き残れないと。辺境の領主一家とはそういうものなのかもしれない。
南の辺境寄りではあるが、自領にて自給自足し、魔獣もほとんど出ない牧歌的なパークス子爵家にはない思考回路だ。
「よろしくお願いします」と返したクレタ嬢の声が、明るく弾んでいた。
オルコット伯爵令息はようやく事態を正しく把握したらしく、今度こそ血相を変えた。
「待て、話し合おう!」
全てが遅い。彼が氷の刃に呆けている間に、すでに決まってしまっている。
これが中央貴族と辺境貴族の危機管理能力の差なのかもしれない。
「通行税については調整できる!」
そういう問題ではない。
隣国辺境伯嫡男が彼女を連れてくるよう要請した。我が国の辺境伯次女がそれを請けた。自領の魔獣討伐もままならないくらいの武力しか持たない伯爵家が、それに口を出せる機会はとうに過ぎている。
クレタ嬢が不思議そうに首をかしげた。
「オルコット伯爵ご令息の権限で調整できるのですか?」
オルコット伯爵令息が言葉に詰まる。
「魔獣討伐支援も、検討する!」
「それは、ありがとうございます。父が喜びます」
「それは……君は」
「ですが、どちらも家同士のことですから、オルコット伯爵様から父へ書面で正式にお伝えください」
あっさり言ったクレタ嬢に、オルコット伯爵令息は言葉を失った。
婚約にも、家同士の契約にも、言及しない。クレタ嬢にはそれを決める権限はないからだ。
二家の契約がどうなろうと、オルコット伯爵令息との婚約が続こうと、クレタ嬢自身がオルコットに身を寄せることはないと、ただそれだけを決めている。
アウストラリスとヴィエント。自身の意志を押し通すための後ろ盾を、この昼休みのひとときだけで、クレタ嬢は手に入れた。
武力も政治力も有する二家がクレタ嬢をヴィエントへ連れていくと決めたのだ。オルコット伯爵令息には残念だろうが、婚約の継続はない。
灰色の目が、初めて真正面からオルコット伯爵令息を見つめた。
「魔獣を相手にしながら淑女でいることは、私には難しいようです。辺境の礼儀を知らない野蛮な娘より、オルコット伯爵令息にふさわしいご令嬢がいらっしゃると思います。今までありがとうございました」
晴れわたるような美しい笑みを浮かべて、クレタ嬢はスカートの裾を軽く持ち上げ、しなやかに腰を落とした。淑女と呼ぶにふさわしい、完璧な膝折礼だった。
◇◇◇
二週間後の学園の喫茶室。
ふたたびジュディは、ミュリエル様とエウスタシオ様の前に座っている。
いや、目の前のお二人は、特別な用事がないかぎり昼食後のお茶をともにするようにしているし、エウスタシオ様が喫茶室にあらわれるまで、ミュリエル様のお供をするのがジュディの役目だ。
なので、お二人が並んでいるのは、学園では毎日のように見る光景なのだが、今日はエウスタシオ様が到着しても一緒にいるように言われて、ジュディはここにいる。
二週間前と違うのは、横にクレタ嬢がいることだろうか。
ひびのない白磁のカップから一口お茶を飲んでから、ミュリエル様がなんでもないように告げた。
「オルコット伯爵は、子息の廃嫡を決めたそうよ」
グレアム・オルコット元伯爵子息の姿を見たのは、あの喫茶室が最後。騒動の次の日から、彼は登園していない。
仕方がないだろうな、と、ジュディは思う。
数日後に学園でも、オルコット伯爵がタロス子爵家に謝罪のために訪問したことが噂になっていた。
噂の出元は、きっとクレタ嬢だ。彼女の性格からしたら、事実を端的に述べただけなのだろう。
タロス子爵は謝罪を受け入れるかわりに、婚約解消の申し入れを正式に行ったらしい。その理由として、通商路の再検討による家中の方針変更があげられたという。
通行税による収入。通行時の護衛料。領に出る魔獣の退治。タロスから得ていた有形無形のさまざまな利益。
これらを全て。
息子が。
昼休みに、学園の喫茶室で。
「辺境は野蛮、礼儀知らず、田舎者」の数言で。
吹き飛ばし、ご破算にした。
オルコット伯爵にとっては信じられない出来事だっただろう。
それになにより。
「まあ、王家から睨まれた息子なんて跡取りにはできないだろうね」
エウスタシオ様がさらっと放った言葉に、ジュディはまたまた遠い目になった。
その結末を導いた人間のうちの一人は、間違いなく彼だというのに、なぜ他人事のように言っているのだろう。
帝国辺境伯嫡男のエウスタシオ様がどこまでを狙って、クレタ嬢に目をかけたのか、ジュディにはわからない。それでも確実に、あの日帝国は、この国の東部への足掛かりを得た。
この国の王家としては、強大な力を誇る帝国が東部に食い込む機会を与えた伯爵子息など、どれだけ殺しても飽き足らない。そんな息子を放置したオルコット伯爵も、王族を始めとした中央貴族たちから睨まれることになる。
幼馴染のネリア・シラー男爵令嬢も、彼と仲が良かったことで、他の生徒たちから遠巻きにされている。
少し顔をうつむけながら、足早に廊下を通り過ぎていく姿を見かけた。早晩、彼女も学園から去らざるをえないかもしれない。
――ただお茶を飲んでいただけなのに。
本当に、ただお茶を飲んでいただけだったのに。
流れ弾のように、伯爵令息が放った言葉が辺境伯令嬢を直撃し。
それを打ち返した辺境伯令息の言葉が、また流れ弾のように子爵令嬢に命中して。
気がついたら、国内勢力図と国際情勢が華麗に書き換えられていた。
「そういえば、婚約解消おめでとう、クレタ」
ミュリエル様の言葉に、ジュディは我に返る。
それは、おめでとうと言ってよいものなのか。嬉しそうに、クレタ嬢が「はい、ありがとうございました」と答えているからいいのか。
「次の婚約のあてはあるの?」
ミュリエル様の問いに、クレタ嬢が頭を振る。
「しばらくは、次を探さずにいようと思います。婚約がうまくいかなかった身の上ですし」
「ああ、それなら、ヴィエントでよい相手を紹介するよ」
ヴィエント領に囲い込む気満々のエウスタシオ様の言葉に、ミュリエル様がじとりとした目を向ける。
「エウスタシオ様」
「エウス」
「エウス様」
「ほんとに様はいらないんだけど」
「そちらの学院に入学したら改めます。皆様、愛称で呼び合っているのでしょう?」
「ミュリっていう愛称は、他の誰にも呼ばせないけど? 僕のエウスっていうのも君だけの名前だ」
臆面もなく言い切るエウスタシオ様に、ミュリエル様は無言で赤くなった。
「……それでも、クレタはわたくしの直属ですから」
「そんなにクレタ嬢が気に入ったの?」
妬けるな、と言って微笑んだエウスタシオ様に、ますます赤くなったミュリエル様は、小さな声で答えた。
「だって。ヴィエント領はうちより暑いんですよ? 『氷』魔法なら、暑さ対策にも、冷たいお菓子を作るにも重宝するに決まっているじゃないですか」
一瞬きょとんとしてから、腹を抱えて笑い出したエウスタシオ様に、「もう! 笑いすぎです!」とミュリエル様は抗議の声をあげる。
生温かい目で見守っていたジュディを、ミュリエル様はキッと睨みつけた。……なぜ?
「なに自分は関係ないみたいな顔をしているの? もちろん、あなたもヴィエントに連れていくわよ?」
なにを言われたかわからず、ジュディは固まる。
「え? ええ!?」
「『氷』魔法以上に、あなたの『演算』は貴重だって、そろそろ自覚して。あなたの争奪戦すごかったのよ? どうしていつもあなたを側に置いていると思っているの。あなたを奪われないようにするためよ」
「え、ええー」
衝撃の事実にジュディの眉尻が下がる。
クレタ嬢がくすくすと笑った。
ようやく笑い止んだエウスタシオ様が口の端を上げる。
「ジュディ嬢にもよい縁談を準備しておくよ」
紹介するでも、探しておくでもなく、準備しておく……。
いりません、と言いたいところだが、つい先日、不用意な発言が重大な結果を招いたのを、この目で見たばかりだ。
オルコット元伯爵子息もまさか、学園でもらしたたった数語の言葉が、自分を廃嫡に追い込むとは思わなかっただろう。
『演算』魔法を持つジュディだが、前情報もないこのような突発的な出来事は、予測することはできない。
なぜかミュリエル様の側では、このようなことがよく起こるのだ。だから、できるだけ離れていたかったのに。
どうやら付き合いは、ヴィエントまで続くらしい。
――流れ弾には、くれぐれも注意しよう。
不用意、不必要な発言はしないように。
とくに、この二人の前では。
あらためて、心の底から固く誓ったジュディだった。




