『雨でくもらない硝子』 Glass That Never Clouds in the Rain
目次
1. 雨の田園調布、白い湯気
2. 奈良の土と、京の掲示板
3. 炉の歌、硝子片の虹
4. 祝杯の縁欠け
5. NordLightからの一通目
6. “欠落”した温度履歴
7. 城戸の掌、安田の震え
8. 曇りの正体
9. 北欧の会議室、透明性の試験
10. 失われたバックアップ
11. MBAの黒板、信頼の式
12. 発表会の空席
13. 雨の工場門、止める
14. 再点火、再検証
15. 透明であるという選択
16. 雨は激しかった。硝子は曇らなかった。
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## 1. 雨の田園調布、白い湯気
雨は、窓ガラスの向こうで細い線になって落ちていた。
田園調布の朝は、静けさの上に雨音を置く。まるで、ひとつひとつの音を数えるように。
台所では味噌汁の湯気が立ち、だしの匂いが湿った空気に混ざる。
彼——真田 恒一は、ネクタイを結びながら、子ども用の小さな傘を手に取った。
「パパ、今日は迎えに来れる?」
長男がランドセルの紐を引き締める。顔がまだ寝起きで、まつ毛の先が濡れて見えた。
「今日は……できるだけ早く帰る」
言いながら、唇の裏が苦くなる。早く帰る。できるだけ。いつも、その二つの間に彼の弱さが挟まっていた。
妻が、フライパンの火を弱めて振り向く。
「雨、強くなるって。足元、気をつけて」
言葉はそれだけ。でも、目が言う。
——無理しすぎたら、曇るよ。
玄関で靴を履き、ドアを開ける。
雨の匂いが、冷たく鼻を刺す。コンクリートが湿り、街路樹の葉が濃い緑になっている。
駅へ向かう道で、彼はふと立ち止まった。
目の前の窓ガラスに、雨粒が走る。透明なはずの面が、濡れることで景色を歪ませる。
曇る。
濁る。
滲む。
その三つの違いを、彼は誰より知っている。硝子は、曇る。曇りは、見えない欠陥の始まりだ。
スマホが震えた。
工場の品質責任者、安田からのメッセージ。
《至急。海外向けロット、反射率に異常。検査データが一部欠落。顧客から問い合わせ来てます》
“欠落”。
その文字が、雨粒より冷たく彼の胸に落ちた。
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## 2. 奈良の土と、京の掲示板
奈良のグラウンドの土は、雨が降ると鉄の匂いがした。
幼い頃から野球一筋。泥にまみれたユニフォームを母が黙って洗い、父は新聞を畳んで「手ぇ洗え」と言った。
高校三年の冬、彼はグラウンドの端で素振りをしながら、英単語帳を開いた。
指先がかじかみ、ページをめくる音が薄い。
「京大? 野球部で? 無理やろ」
仲間は笑った。
彼も笑った。ただ、胸の奥にだけ火を残した。
合格発表の日。京都の掲示板に紙が貼られ、風で揺れた。
番号を見つけた瞬間、足が一瞬だけ浮いた気がした。
勝った、というより——自分の中の諦めに勝った。
その諦めが、十数年後、別の形で戻ってくる。
“企業の都合”という顔をして。
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## 3. 炉の歌、硝子片の虹
彼が勤めるのは「晶和マテリアル」。
国内屈指の透明素材メーカーで、硝子とその応用素材を世界へ供給している。
工場は湾岸の埋立地にある。潮の匂いと金属の匂いが混ざり、巨大な煙突が薄い空を突く。
炉は、夜になると歌う。低い唸り、周期的な弁の吐息、金属が擦れる音。熟練者はその歌で状態を読む。
新卒の頃、彼は炉前で上司に言われた。
「数字は遅い。音は速い。目はもっと速い。硝子はな、嘘が嫌いや」
上司——城戸部長は、汗を拭いながら胸ポケットから小さな硝子片を取り出した。
光にかざすと、薄い虹が縁に立った。
「この虹が出る境界がある。見えへん差を、身体で覚えろ」
彼は頷いた。
それ以来、彼は現場の匂いと音を信じた。信じすぎるほどに。
二十代で結婚し、二人の子どもに恵まれた。
仕事でも評価され、工場幹部になった。
自己研鑽でMBAにも通い、修了した。
家は田園調布に建てた。小さな庭と、子どもたちのボールが転がる芝。
順風。幸福。
その幸福の輪郭が、雨で少し歪んだだけだった。最初は。
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## 4. 祝杯の縁欠け
昇格祝いの夜。
家族で食卓を囲み、妻が小さなケーキに火を灯した。子どもたちが拍手する。彼は笑って息を吹きかけた。
乾杯のグラスを持ったとき、彼の指が一瞬だけ止まった。
縁が、ほんの少し欠けている。髪の毛ほどの欠け。
硝子は、欠けた瞬間から壊れ始める。
欠けは、最初は透明で、気づかない。
でも、ある瞬間に割れる。
スマホが震える。
安田のメッセージ。
そして、その後に見慣れない海外ドメインのメールが続いた。
件名:**Regarding Optical Glass Batch NL-7A**
差出人:**NordLight Optics / Quality Assurance**
NordLight Optics。
北欧の医療・衛星光学機器メーカー。
晶和の硝子を、内視鏡のレンズ基材や衛星カメラの光学窓に使っている。
品質基準は異常に厳しい。価格交渉はしない。その代わり、信頼を絶対条件にする。
彼は、呼吸を一つ深くした。
ケーキの甘い匂いが、喉の奥で急に重くなる。
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## 5. NordLightからの一通目
メールは丁寧だった。
過剰な感情も、威圧もない。むしろ静かすぎる。
> We have observed a slight deviation in reflectance under specific angles.
> Could you confirm if any process change occurred in the last two weeks?
> We request your preliminary explanation within 24 hours.
“slight deviation”。
わずかな差異。
だが、NordLightが“わずか”と言うとき、それは警告に近い。
彼はすぐに安田を呼び、サンプルを確認した。
透明なはずの硝子が、角度を変えると、薄い影を走らせる。
雨粒が窓を流れるような、微細な濁り。
「曇り、か……」
彼は呟いた。
硝子が曇るとき、原因は必ずある。温度、原料、微細な異物、炉内雰囲気、清浄度——。
「検査ログは?」
「……該当期間の一部が欠落しています」
安田の声がかすれた。
欠落。偶然ではない言い方だった。
彼は一度だけ妻を思い浮かべる。
雨、強くなるって。
曇るよ。
その目。
彼は決めた。
“わずか”のうちに、潰す。曇りは、放置すると透明性を奪う。
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## 6. “欠落”した温度履歴
夜の工場。
通路灯が床を青白く照らし、雨の音が屋根を叩く。
彼は保全室の端末にログインした。
アクセス権限は幹部でも制限がある。だが、今は申請を待てない。
温度履歴。圧力。流量。
はずだった。
画面には、穴が空いていた。まるで、誰かがその部分だけ切り取ったように。
背後で靴音が止まる。
振り向くと安田が立っていた。顔色が悪い。手が震えている。
「……すみません」
安田は喉を鳴らし、目を逸らした。
「消しました」
彼の心臓が、ひゅっと縮む。
「なんで」
安田は唇を噛んだ。唇の色が消える。
「城戸部長に言われました。『工場を守りたいなら黙れ』って。……家族の話も、されました」
怒りが湧く。
だが、それ以上に、悲しさが先に来た。
現場の若手を、恐怖で縛るやり方。
硝子の曇りより、組織の曇りが濃い。
「バックアップは?」
安田が小さく頷く。
「あります。でも……表に出したら、部長が——」
「出す」
彼は言い切った。
言葉の重さが、床に落ちた気がした。
雨音が強まる。
屋根の向こうで、炉が低く唸る。歌ではなく、呻きに近い。
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## 7. 城戸の掌、安田の震え
翌朝の会議室は硬かった。
ホワイトボードに赤い線が跳ね、工程の矢印が乱れている。
城戸部長は腕を組んで座り、表情を動かさない。
「顧客は神様ちゃう。要求に振り回されるな」
いつも通りの口調。
営業部の課長が言う。
「NordLightは次の衛星プロジェクトでうちの採用を検討してます。失注したら痛い」
開発が言う。
「でも、曇りが出てるなら——」
城戸が机を軽く叩いた。
「曇り? お前ら、硝子は曇るもんや。基準値内なら出す。止めたら現場が死ぬ」
彼はその言葉を聞いて、胸の奥で何かが割れるのを感じた。
止めたら死ぬ。
出したら、信頼が死ぬ。
彼は言った。
「基準値内かどうかは、ログが欠落してる限り判断できません」
城戸の目が一瞬だけ細くなる。
「ログ欠落? そんなもん、現場の手当てで——」
「欠落は偶然ですか」
彼の声は静かだった。
静かな声は、時に刃になる。
会議室の空気が止まる。
雨が窓を叩く音だけが残った。
城戸が微笑む。
「お前、幹部になって、正義に酔ったか。工場は家族や。家族を売るな」
家族。
その言葉が、彼の胸を締めつける。
家族は、守るために嘘をつくものなのか。
彼は言い返さなかった。
ただ、決めた。
“透明性の試験”が始まっている。相手は顧客だけじゃない。自分自身だ。
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## 8. 曇りの正体
その夜、彼は工場の屋上に立った。
雨は斜めに吹きつけ、制服の肩を濡らす。
遠くの港が滲む。街の灯りが曇った硝子越しのようだ。
安田と二人で、バックアップサーバーを確認した。
ログは残っていた。
だが、奇妙な点があった。温度履歴の“揺れ”。
ほんの数分だけ、いつもより低い領域に落ちる。
そのタイミングで、炉内の雰囲気制御が変わっている。
「原料の乾燥工程が……」
安田が指を滑らせる。
「ここ、改修入ってます。新しい材料のシール剤に変わってる」
シール剤。
微量の揮発成分が炉内に混入すると、硝子の光学特性に影響することがある。
“わずか”の曇りは、そこから生まれる。
彼は拳を握る。
原因が見えてきた。
だが、もっと怖いのは——それを隠そうとした意思だ。
曇りの正体は、物質だけではない。
恐怖と保身が、硝子の透明性を奪う。
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## 9. 北欧の会議室、透明性の試験
翌日、NordLightとのオンライン会議が設定された。
画面の向こうは北欧の薄い昼。窓の外が白い。
会議室のテーブルにはサンプルが置かれている。白い手袋の技術者が、硝子をライトにかざす。
品質保証責任者の女性——リーナが言う。
声は冷たいのではない。淡い。温度が一定だ。
「私たちは、誤差を責めるために連絡したのではありません」
彼は頷く。
「原因を追っています。暫定で——」
彼が言いかけた瞬間、リーナが遮らず、手を動かした。
硝子を、薄いゴムマットの上に置く。
そして、わずかな力で、角度を変える。
光が走り、影が出る。
「見えますか」
彼は息を飲む。
見える。曇りは、確かにある。
リーナは言う。
「We are testing your transparency.」
透明性を試している。
その言葉が、胸に刺さる。
品質の話は、いつの間にか倫理の話に変わっている。
彼は一度だけ間を取り、言った。
「24時間以内に、原因の方向性と、対応方針を報告します。納期より、信頼を優先します」
画面の外で、営業課長が小さく息を呑むのが見えた。
リーナは表情を変えず、ただ一言。
「Then we will wait. But we do not wait for excuses.」
言い訳は待たない。
雨が窓を叩く音が、彼の側でも鳴っていた。
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## 10. 失われたバックアップ
会議の直後、工場に戻ると、安田の顔が真っ青だった。
「バックアップが……一部消えてます」
彼は一瞬、言葉を失う。
“消えている”
それは二度目だ。偶然で済むはずがない。
彼は保全室へ走り、ログを確認する。
確かに、該当期間のバックアップが欠けている。
消去の操作ログ——IDは、城戸の直属部下のもの。
「……やるな」
彼は呟いた。
城戸は、止めない。止められないのだ。
過去の失敗が、彼を縛っている。恐怖が、正義を曇らせる。
彼は工場の廊下を歩きながら、ふと自分の指先を見る。
新卒の頃の火傷跡が薄く残る。
この傷は、嘘をついたとき痛む。そういう気がした。
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## 11. MBAの黒板、信頼の式
その夜、MBAの同期に電話をかけた。
彼は弱音を吐くことを嫌う。だが、今は客観性が必要だった。
「組織の透明性が崩れそうだ」
同期の女性は短く言った。
「透明性は、努力じゃなくて“選択”だよ。選ぶと、誰かが傷つく。だから皆逃げる」
彼は黙る。
選ぶ。傷つく。
教授が黒板に書いた言葉が蘇る。
**Trust = Quality × Consistency × Transparency**
信頼=品質×一貫性×透明性。
どれかがゼロなら、全部ゼロ。
今、透明性がゼロになろうとしている。
工場は、信頼を失う。
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## 12. 発表会の空席
週末。
子どもの発表会の日だった。
彼は朝からスーツではなく、ジャケットを羽織って出かける準備をした。
玄関で、妻が小さく笑った。
「今日は来れるんやね」
彼は頷いた。
「行く。約束や」
その瞬間、工場から電話が入る。
安田の声が早い。
「城戸部長が、出荷を進めようとしてます。今夜、コンテナ積み込みです」
彼の胸が冷える。
出せば、NordLightの信頼は終わる。
止めれば、工場は短期的に大損失。現場が荒れる。城戸は失脚する。自分も無事ではない。
妻が、何も言わずに彼の顔を見る。
目が言う。
——曇らせないで。
彼は子どもの手を一度握り、離した。
「ごめん。行ってくる」
子どもは一瞬だけ口を尖らせ、でも言った。
「パパ、がんばって」
その言葉が、胸に刺さる。
がんばる。
曇らない。
同じことだ。
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## 13. 雨の工場門、止める
夜、雨は本降りになった。
工場門の前にはトラックが並び、荷台のコンテナが光を反射している。
現場はざわつき、フォークリフトのバック音が湿った空気に刺さる。
城戸が指示を飛ばしていた。
「積め。時間がない」
部下が頷き、荷が動く。
彼は走って現場の前に立った。
雨が顔を打つ。目に入って滲む。
視界が曇りそうになる。
彼はまばたきを一度だけし、叫んだ。
「止めろ!」
現場が凍る。
フォークリフトの音が止まり、雨音だけが残る。
城戸がゆっくり振り向く。
「何してる」
低い声。
彼は呼吸を整え、言う。
「このロット、出荷停止です。原因が確定していない。透明性の担保がない」
城戸の目が鋭くなる。
「お前、現場を殺す気か」
「嘘で生かすより、止めて生かします」
雨が強くなる。
城戸が一歩近づき、彼の胸ぐらを掴みそうな距離で言った。
「俺はな、昔、海外案件でやらかした。工場が潰れかけた。何百人の人生が——」
声が震えた。
初めて、城戸の恐怖が見えた。
彼は言う。
「だから、今度は潰れないやり方で守りましょう」
城戸の手が止まる。
雨が二人の間を流れ落ちる。
そのとき、安田が一歩前に出た。
「部長……ログ、消したの、僕です。指示、受けました。でも、もう……」
声が震える。
震えは恐怖だけではない。誇りが混ざっている。
現場のベテランが言った。
「止めましょう。曇った硝子、出したら終わりです」
若手が頷く。
営業課長が歯を食いしばる。
城戸の部下が、視線を落とす。
組織が、ゆっくり決断に寄っていく。
命令ではない。誇りが、雨の中で立ち上がる。
城戸は最後に言った。
「……止めた責任は」
彼は答えた。
「俺が持ちます」
雨が頬を流れた。
それが涙かどうか、彼には分からない。
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## 14. 再点火、再検証
出荷停止はニュースになった。
社内は荒れ、経営層は眉をひそめた。
短期の損失額が数字で積み上がり、会議室の空気が乾く。
だが現場は、動いた。
原因の切り分け、工程の洗浄、材料の見直し、再検証。
炉内の雰囲気を整え、シール剤を元に戻し、試作を繰り返す。
彼は毎晩、炉の歌を聴いた。
音が戻っていく。
呻きから、歌へ。
現場の目も戻る。乾いていた目が、少しだけ潤む。
城戸は口数が減った。
そして、ある夜、彼の机に古いファイルを置いた。
過去の失敗の報告書。
そこには、城戸が“隠したかった恐怖”が詰まっていた。
「……見ろ」
それだけ言い、城戸は去った。
背中が小さく見えた。
彼はファイルを開き、心の中で言った。
——俺たちは、過去の恐怖に支配されない。
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## 15. 透明であるという選択
再検証の結果は明確だった。
微量の揮発成分が炉内に混入し、光学特性に影響していた。
“わずか”は、偶然ではなく、工程変更の副作用。
そして、ログ削除は、恐怖の産物。
彼はNordLightへ報告書を送った。
原因、対策、再発防止。
削除の件も含めて、全て。
自社に不利な情報も、隠さず。
翌日、NordLightから返事が来た。
件名:**Re: NL-7A / Transparency**
短い。
> Your report is clear.
> We appreciate your transparency.
> We will proceed with re-qualification tests.
“clear”。
曇りのない、という意味もある。
彼は息を吐いた。
再認証試験は厳しかった。
NordLightの技術者は細部まで確認し、何度も同じ質問をした。
彼は逃げずに答えた。
誠実に。透明に。
そして、最後のオンライン会議。
リーナが初めて、ほんの少し口角を上げた。
「This is the glass we trusted.」
これが、私たちが信頼した硝子。
彼は深く頭を下げた。
画面越しに、雨は降っていない。
だが彼の側では、窓の外がまだ湿っている気がした。
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## 16. 雨は激しかった。硝子は曇らなかった。
田園調布の夜。
彼は久しぶりに子どもの寝顔を見た。
頬が柔らかく、呼吸が小さい。
妻が隣に座り、湯気の立つお茶を置く。
「どうやった?」
彼は短く笑う。
「曇らずに済んだ」
妻は頷く。
「よかった」
リビングの窓に、雨粒がひとつ落ちた。
外は小雨。音は静か。
雨は、世界からの圧力で、非難で、クレームで、恐怖で、試験だった。
彼は思う。
硝子は雨に濡れる。
濡れて、曇ることもある。
だが、曇りを恐れて嘘をつけば、透明性は失われる。
透明性は努力じゃない。選択だ。
誰かが傷つく選択。
でも、その痛みを引き受けた先に、信頼が残る。
翌朝、子どもが言った。
「パパ、雨でもガラス、曇らへんの?」
彼はしゃがみ、目線を合わせた。
「曇ることはある。でも、曇ったら拭く。隠さない」
「ふーん」
子どもは笑って、傘を差す。
玄関を出ると、雨が頬に触れた。
冷たい。
でも、もう怖くない。
雨は激しかった。
だが——硝子は曇らなかった。




