さよなら日常!よろしく盟友!
私__日武モトは、そこそこ平凡な人生を送ってきたつもりだった。
両親は優しいし、友達だっていた。特別問題児ってわけじゃない。
容姿も少々女っぽいといじられることはあったけれど、まあ平凡だ。
どこをとっても極々平凡…だったはずなのに。
これは、ある意味神様からのプレゼントなのかもしれない。
いや、そうであってほしい。
そうであってくれ、頼むから。
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「えー、日武モトくん。今日からここが君の通う学校だよ。
あ、ちなみに僕は君の先生になる雨野コヤメ。雨ちゃんって呼んで」
雨野はそう言って、煌々と聳え立つ巨大な門を指さした。
金文字で輝かしく掲げられた校名は――
『八雲学園』
「やくも…学園?」
日武が校舎に目をやると、そこには、人類――つまり魔法を使えない自分にとって想像を絶する光景が広がっていた。
「…魔法?」
「はい、ごもっとも。世界有数の魔法学校です」
「う、うわっ!」
雨野とは違う、凛々しい雰囲気の理事長が日武のそばに立っていた。
「失礼、私はこの学園の理事長です」
「い、いえ…こちらこそ失礼しました」
「ところで雨野…さんは?」
「はいはーい、雨ちゃんだよー。僕もう業務に戻るけど…ま、モトちゃんなら大丈夫っしょ、ウケるし」
「…早く戻りなさい。日武さん行きますよ」
「は、はい…」
(なんだか堅苦しい人だな…こういう人は苦手だ)
「では、行きましょう」
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そうして連れて行かれたのは、和気藹々とした雰囲気の教室だった。
「えー、そして今日は一大イベントがありまーす
君ら驚きすぎて腰抜かすかもねー!」
雨野の間延びした声が響く。
クラスメイトたちは顔を見合わせ、ソワソワしている。
「そんじゃ、日武くん、入っておいでー」
「は、はい…(こ、こんなの初めてだ…緊張する…)」
「そんじゃ、自己紹介〜!」
「日武モトです。よろしくお願いします」
「………ん〜、そんじゃ、質問ターイム!」
「はいはーい!日武ちゃんはどんな魔法使えるのー?」
「…私は魔法なんて使えません」
(日武ちゃん…?)
「あ?んで魔法使えねぇやつがココに居ンだよ!」
クラス中から笑いが起こる。
すると一人の男子がおずおずといった風に言った
「ぼ、ボク、こないだ朝トースト使おうとしたら部屋半壊しちゃった…昨日も…」
黒のボブに水色のメッシュの女子は肩をすくめた。
「私は洗濯の水加減間違えて家中大洪水。あ、水鉄砲なら任せてよ!」
後ろの席の可愛い顔立ちの男子が恥ずかしがりながら言った。
「僕も魔法の練習のとき瓶で土俵作ろうとしたら力加減間違えて割っちゃいました…えへへ」
「いや瓶で…?もっとなんかこう…あっただろ」
日武は少し戸惑いながらも、クラスの賑やかさを眺めた。
魔法が使えなくても、このクラスはなんだか楽しそうだ。
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理事長室
「ところで、理事長」
「モトちゃんは何者なわけ?」
「態度を慎みなさい」
「すぐ分かるでしょう、彼の"魔法"が」
「魔法…?モトちゃんは使えないんじゃ?」
「だんまりかいな…まぁいいや、僕の大事な生徒なことに変わりはないし」
「…」
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場所は変わって教室。
どうやら日武に友達が出来そうなようで
「き、来て早々大変だったね…
あ、ボク、さ、さっきはつい出しゃばっちゃって…」
「ボク、君が笑われてるのがイヤで…つい自分の失敗談で誤魔化しちゃって…」
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「ぼ、ボク、こないだ朝トースト使おうとしたら部屋半壊しちゃった…昨日も…」
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「あ…そ、そうだったのか…!!
君、すごくいい人だね」
「あ、え、いや、そ、そんな…」
「事実だよ…あの時気づかなかったのが不甲斐ない…」
「あ、そういえば名前は?」
「あ、ぼ、ボクは火鎚カグラ。よろしくね」
「え、えっと…日武さん」
「あ、うん、よろしくね、火鎚くん」
そこで出てきたのは山のような量のバスタオルを使って涙を拭う雨野
「うっ、うぅ…いい話だ…
モトちゃん…お友達ができてよかったね…!!ってことで、
はい、これ」
そう言って日武の目の前に置かれたのは分厚い辞書数冊。
「えっ、なんですかこれ」
「ん?今日の宿題!!」
"明日までにこれ全部覚えてきてね!!"
「こ、この量を明日…いや今日までとか…」
「バカじゃねぇの…!?」時刻2:46
「こんなん覚えられるわけがないだろ!!!!!」
今更ですが名前の読み方です
日武モト-ひたけもと
雨野コヤメ-あめのこやめ
火鎚カグラ-ひづちかぐら




