第十七話 地下倉庫の共犯者と魔王(クズ)の疑惑
放課後の生徒会室前。俺は、胃痛が(ついに)物理的な痛みを伴い始めたのを自覚しながら、二人の「爆弾」 を見据えていた。
「……許可は取れたのか」
俺が『孤高のクズ(仮)』として(不機嫌そうに)尋ねると、ソフィアが(なぜか)誇らしげに胸を張った。
「当然ですわ。わたくし(Aクラス筆頭)が『アストレイア公爵家との共同研究()』のため、過去の魔導具の資料を閲覧したいと申し出ましたもの。生徒会も二つ返事でしたわ」
(共同研究!?勝手に話がデカくなってる!)
ソフィアの中で、俺との『共犯関係』は、すでに『公的な共同研究』へと(バグ)進化しているらしい。
「フン。許可(表向き)ご苦労なことだ」
アッシュが(面白そうに)鼻を鳴らす。
「どうせ、地下倉庫の本命は、許可証(紙切れ)じゃ開かない。……俺の『研究』が必要だろ?」
(こいつも乗り気すぎる!)
俺は、エリアーデの『爆弾処理』作戦に従い、この二人の(バグった)やる気を『利用』 することに決めた。
「……御託はいい。さっさと案内しろ」
俺が『クズ(尊大)』に命じると、ソフィアとアッシュは(奇妙なことに)満足げに頷き、生徒会室の奥にある地下への扉へと進んだ。
この「学園のトップ戦力(ソフィア&アッシュ)を、学園一の嫌われ者が(なぜか)引き連れて、秘密の扉に向かう」という光景。これを遠くから二人の人物が(絶望的な誤解と共に)目撃していた。
目撃者A:リリアン
(え……?ええ!?レオニール様、ソフィア様とアッシュ様と一緒に……!?まさか、私や学園を守るために、あの『孤高の天才』 と『筆頭』 様まで『仲間』に引き入れたの……?レオニール様、一体、裏でどれだけ……!)
リリアン の中で、俺の『不憫なヒーロー』 像は、ついに『仲間を集める(裏の)リーダー』へと進化していた。
目撃者B:王太子
(な……!?まさか……!レオニール……貴様、ソフィアを(被害者から)取り込んだ だけでなく、Cクラスのあの得体の知れない天才までも手駒にしたというのか!?学園のトップ戦力(A筆頭・C天才)を二人も引き連れ、生徒会の管轄(地下倉庫)に……貴様、本気で学園を『裏』から掌握するつもりか!)
王太子の中で、俺の『魔王』 認定は、もはや疑う余地のない「事実」となった。
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地下倉庫の重い扉の前。そこには、分厚い鉄扉に、古代魔術で施錠された複雑な魔術回路が刻まれていた。
「……フン。これですわね」
ソフィアが(Aクラス筆頭として)魔術錠を分析しようと一歩前に出る。
「どけ、ヴァレンシュタイン嬢。お前の専門(炎魔術)じゃないだろ」
アッシュが彼女を制し、魔術錠の前に立った。
「(小声)お兄、大丈夫なの、あの人……」
物陰(階段の上)から、エリアーデが(いつの間に)フリップを掲げている。
(『爆弾処理』を頼んだのはお前だろ!)
アッシュは、魔術錠に触れることなく、その銀色の瞳で(獲物を『研究』 するかのように)回路のパターンを読み解いていく。
「……なるほど。『反転循環式』のロックか。面白い。設計者のセンスが古すぎる」
アッシュはそう呟くと、自分の指先に魔力を集め、魔術錠の回路とはまったく違う箇所(扉の蝶番の近く)に、魔力でできた「楔」を打ち込んだ。
カチリ、と。古代魔術の錠前が、あっけないほど静かに解錠された。
「……!」
ソフィアが(Aクラス筆頭としてのプライドを傷つけられたように)息を飲む。
「……回路そのものを解除するんじゃない。回路を動かす『起点』を、外から強制的に起動させた……!? あなた、何者ですの……!」
「ただの『研究者』だ」
アッシュは俺に向き直り、ニヤリと笑った。
「……さて、『クズ(策略家)』殿。お前の『掃除(シャドウヒーロー活動)』のお通りだ。感謝しろよ?」
(……こいつら、本当に『爆弾』 だが、超有能だ)
俺は『クズ』のフリをして(内心の感動を隠し)、重い扉を押して中に入った。
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倉庫の中は、埃と古い魔力の匂いで満ちていた。
「(小声)お兄!攻略ノートによれば、テロに使われるのは『音響増幅の魔導具(試作品)』!場所は東側の棚、下から三段目!」
エリアーデが(階段の物陰から)必死の形相でフリップを掲げる。
(分かってる!)
俺は、ソフィアとアッシュにバレないよう、そちらへ向かおうとする。だが、二人の「監視者」 がそれを許さなかった。
「レオニール、あなた、どこへ行くつもりですの?」
ソフィアが俺の『真意』を『解剖』する目をしている。
「あなた(レオニール)がわたくし(ソフィア)の『沽券』のために探している『何か』は、わたくし自身が見届ける必要がありますわ」
(お前の『沽券』のためじゃないんだが……!)
「フン。無目的に歩き回るフリか?」
アッシュが、俺の『研究』の目をしている。
「お前の『掃除(シャドウヒーロー活動)』には、パターンがある。旧校舎、魔道具店 、そしてここ。……お前は『魔力の暴走』を追っているな?『クズ(策略家)』 殿」
(鋭すぎる!)
(……エリアーデ!こいつら、お前の『爆弾処理』作戦事件に興味を逸らす)通り、事件の方に食いついてきたぞ!)
俺が(目で)エリアーデに合図を送ると、彼女は(ガッツポーズで)フリップを裏返した。
『GJ!そのまま誘導して!』
(くそっ!)
俺は二人の(バグった)天才を引き連れ、堂々と東側の棚に向かった。
「……ここの魔力の淀みが、一番濃い」
俺が『シャドウヒーロー』(と『クズ(強引)』)のフリをして言うと二人は(納得したように)頷いた。
東側の棚、下から三段目。そこには埃をかぶった木箱が一つ。ソフィアが(ためらいなく)木箱を開ける。
中には古びた拡声器のような魔導具と、一枚の設計図が入っていた。
「……これは『音響増幅器』……?」
ソフィアが設計図を手に取る。
アッシュがその魔導具本体を(研究者の目で)一瞥した。
「……違うな。設計図と現物の魔力回路が意図的に『改悪』されている」
「え?」
「この回路じゃ音を増幅するんじゃなく、特定の『不快な周波数』を発生させて、魔力と共鳴させ、周囲の人間の『精神を汚染』させる。……おい、『クズ(策略家)』殿。これが、お前が探していた『魔力の暴走』の正体か?」
アッシュが俺を、ソフィアが(恐怖と驚愕で)アッシュと俺を交互に見た。
「精神汚染……!?まさか学園祭(大勢の人が集まる)でこれを使うつもり……?」
ソフィアがこれが『テロ事件』 であることに気づいた。
「(小声)お兄!大成功!二人とも食いついたよ!」
エリアーデが(物陰で)歓喜のダンスを踊っている。
俺は二人の(バグった)共犯者にエリアーデの教育方針に基づく、次なる『指示』を与える時が来たと悟った。スローライフはもうない。だが、破滅フラグ(断罪イベント)は、回避する。




