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11-8 ステマをこなしても一皮剥けてなかったのね

 古河の暴露と責任転嫁は止まらない。民自党から見捨てられて居場所を無くした恐怖は、彼の口を軽くし理性を焼き切っていた。


「須磨総理だってグルだ! 俺のやっていることを黙認する代わりに、ネットで支持率を上げる工作(ステマ)してくれって頼んできたんです! 俺は奴の尻拭いに利用されただけなんだよぉ!」


 国の中枢を揺るがす爆弾発言が、古河の生声を通じてリアルタイムでネットに拡散されていく。

 この暴言ラッシュがライブ配信されていることを、世界中で古河だけが知らない。


 もはや古河は、完全なる道化師(ピエロ)であった。

 かつて、古河が信者たちを管理統率するために作成したコミュニティアプリ『Myピカレスク』。

 そのアプリのピエロを模したアイコンデザインは、今や古河の姿そのものとなっていた。


 古河の言葉にガブリエルは静かに頷いた後、さらに残酷な問いを投げかけた。


「では、君を信じてついてきた数十万人のフォロワーたちはどうなる? 彼らは今でも君を信じているはずだが」


「あんなの、ただの金づるですよ!」

 古河は吐き捨てるように叫んだ。

「ちょっと喜ぶような言葉を餌にしてやれば、フビブヒ鳴いて金を出してくる低能な家畜っすよ! 俺が本気でクソより臭い底辺どもを相手にするわけないでしょう? 奴らは俺のATMでしかないんすよ!」


 決定的な暴言。

 タブレットを見ていた岬は、古河の醜態に愉悦を感じ、心の中でほくそ笑む。


(遂に言ってしまったわね)


 その瞬間からネット上の古河信者たちが、一斉にアンチへと反転した。

 コメント欄は、阿鼻叫喚と憎悪と殺意に満ちた罵倒で塗りつぶされていく。

『死ね犯罪者!』

『金返せ詐欺師!』

『俺たちを家畜呼ばわりかよ!』

『特定した。逃げずに待ってろ!』


 自らの最強の武器であった信者たちを、自らの言葉で敵に回した瞬間だった。



 一方、民自党本部の一室。

 須磨総理と岸波文男も、大画面モニターに流れる配信を苦渋の表情で見つめていた。


「ご覧の通りです。岸波さん」

 須磨は疲労困憊の声で言った。

「『古河一人を差し出せば、民自党は救われる。悪くない取引(ディール)だと思うが』と大統領も言っていました。この状況で彼を庇えば、我々も全てを失うことになります」


 岸波は杖を握りしめる手が擦れて白くなるほど震えていた。

 画面の中では、可愛い甥だったはずの男が、自分にあらゆる罪をなすりつけ、保身のために泣き叫んでいる。


「……あの馬鹿が」

 岸波は呻くように言った。

 これ以上、古河を生かしておくと、何を暴露されるか分かったものではない。自分が逮捕される事態だけは避けねばならない。

 イキり散らしたトカゲの尻尾切りは、可及的速やかに。決断の遅れは身の破滅につながる。


「須磨総理……。この件、今後は全て君に任せる」

「本当によろしいのですね?」

「構わん。あれはもう私の甥ではない。ただの駆除対象だ」


 岸波が部屋を出ていった瞬間、古河達哉を守る人間の数は永遠にゼロとなった。


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