10-3 【緊急配信】ネット de 真実
古河は反撃を決意する。
岸波の秘書から外部連絡は一切禁止と言われたが、そんなの知ったことか。
まだ俺には、このスマホがある。
マスコミが報じない真実を、自らネットを通じて世界へ配信するのだ。
「見てろよ、滝乃川……」
古河はスマホのカメラを自分に向けた。
髪をわざと少し乱し、照明の加減を調整して、より憔悴して見えるように演出する。
ネクタイを緩め、シャツの襟元を崩す。
そこには、もはや無敵のネット論破王、自称カリスマ実業家の姿はない。
理不尽な暴力に襲われ、傷ついた、悲劇のヒーローの姿があった。
「よし、配信開始」
配信ボタンをタップする。
タイトルは『【緊急配信】新宿テロの真実。被害者の私が全てをお話します』。
配信が開始されて数秒後、接続数が爆発的に伸びていく。
視聴者数は、あっという間に十万人を超えた。
やはり日本中……いや世界中の人々が、被害者である俺様の言葉を待っていたんだ。
古河はスマホの画面に向かって、演技がかった涙声で語り始めた。
「みんな、心配かけてごめん。古河達哉です。今、あのビルから命からがら逃げ出して、安全な場所に隠れています」
コメント欄が驚きと心配の声で埋め尽くされる。
その反応を見て、古河の心にどす黒い歓喜が広がった。
これだ。この感覚だ。
数十万人の視線と感情が、俺の言葉一つで巨大な奔流となって、ネットの海に流れ出ていく。
今でも俺は王だ。
この配信で世論を逆転させてやる。
「聞いてくれ。ビルを襲った連中の正体は強盗や犯罪組織じゃない。間近に見たんだが、あれは訓練された外国人のテロリスト集団だった。そして、その首謀者は俺の元同級生……」
ここで彼は、視聴者を焦らすように一呼吸置いてから、カメラを鋭く睨みつけた。
憎悪と殺意を込めて、首謀者の名前を叫ぶ。
「滝乃川岬という、イカれた女だ!」
――プツンッ。




