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9-5 アメリア軍、新宿強襲

 同時刻。大使館のウォー・ルーム。

 メインモニターに、グラビティタワー44階の見取り図と、岬のバイタルデータが表示されていた。

 心拍数が急上昇している。

 そして、インカムが拾う古河の声。

『滝乃川岬、だろ?』

 エリオットの顔から血の気が引いた。


「……見抜かれたか!」

 エリオットが呻いた瞬間だった。

 司令室のコンソールが一斉に、けたたましいアラート音を発した。

 モニターの中央に深紅の警告メッセージが表示される。


【 ALERT:EMERGENCY 】

【 発信源:MISAKI TAKINOGAWA 】

【 CODE:JUSTICE 】


 岬が緊急(エマージェンシー)コールを出したのだ。

 エリオットは躊躇なく、司令官席のマイクに向かって絶叫した。

「全隊突入!最優先はミサキ・タキノガワの確保!次に古河達哉及び側近の拘束!なお、激しく抵抗する者がいれば、現場の判断で射殺も許可する!」


 その命令は即座に新宿古河グラビティタワーを包囲していた、アメリア連邦国の全戦力へと伝達された。


 地上。

 大使館ナンバーをつけた数十台の黒塗り車両が乗りつけ、ビルの出入口の全てを封鎖。ビルに突入したDIAエージェントたちが拳銃を手に、一気にビル管理室を制圧し、全エレベーターを掌握する。


 そして上空。

 この時まで新宿周辺を、気象観測や報道ヘリを装って旋回していた十数機。

 アメリア空軍のヘリコプター『グルヴェイグ』が、一斉にその牙を剥いた。

 プロペラ音が轟音となって、西新宿の空を切り裂く。

 黒い機体の群れがビルの谷間を縫って、瞬く間に44階の窓外へと殺到し、空からフロアを包囲した。


 一方のオフ会会場。

 古河が岬の腕を掴み、ステージ裏へと連行しようとした直後だった。

「……ん?なんの音だ?」

 地鳴りのようなローター音が急速に近づいてくる。

 信者たちも何事かと窓の外を見上げた。


 次の瞬間。

 ガッシャアァァァァァァァン!!

 44階の巨大な窓ガラスが、外からの凄まじい衝撃と共に激しく砕け散った。

 ガラスの破片が悲鳴と共にビルの内側にも降り注ぐ。


「「「ぎゃあああああああ!」」」

「な、何だこりゃあ!?」


 割れた窓の外には、ホバリングする数多の黒いヘリコプター。

 そこから、閃光手榴弾(スタングレネード)が、次々と会場内へと投げ込まれた。


 ――カッ!カッ!カッ!


 視界を奪う閃光と鼓膜を破る爆音が、44階を包み込んだ。


「目があああああ!耳がァッ!」

 何が起きているか訳も分からずに、信者たちが床を転げ回る。

 暗闇と化した会場に、ヘリからロープを垂らしてリペリング降下した黒い戦闘服の兵士たち――アメリア軍特殊部隊が、次々となだれ込んできた。


「Move! Move! Move!」

「手を上げろ!伏せろ!動くな!」

 英語と日本語で統制された怒号が響き渡る。

 信者たちにとっては阿鼻叫喚の地獄絵図。


 会場で呆然としていたSランク信者の鶴ヶ島も、エレベーターを使い44階に突入したDIAのエージェントに取り押さえられた。

「なっ、何だ貴様ら!俺は古河様の側近だぞ!いわば、平和を愛する日本の上級国民で……!」

「黙れ」

 エージェントは鶴ヶ島の言葉を歯牙にもかけず、首筋にスタンガンをサッと押し当てた。

「治外法権の地下室まで、ご足労願おうか」

「ぎぎっ……!」

 鶴ヶ島は短い悲鳴と共に白目を剥き、崩れ落ちた。


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