16-7 迫りくるアンノウン
同じ頃、上空で旋回する『マリーン・ゼロ』の機内。
エリオットは矢継ぎ早に、地上のDIAエージェントと周囲のヘリ部隊に指示を飛ばす。
「地上部隊は建物に突入!目的はカロル・ドーンの確保!ヘリ部隊は周辺を警戒しつつ、その場で待機!異変があれば直ぐに知らせろ!」
対面に座っていた岬がエリオットに申し出る。
「私を地上に降ろしてください。平泉がいないとしても、ドーンには聞きたいことがありますから」
彼女の瞳には、決して揺らぐことのない決意の光が宿っていた。
エリオットは一瞬だけ逡巡した。本音を言えば、岬を戦場のような場所には出したくない。
お尋ね者の平泉を迎え入れるために、ドーンは屋敷から人払いを済ませていたらしく、現時点で邸内に他の人間の姿は見あたらない。
その点からは誰かに攻撃されるリスクは少ないと言えるだろう。
しかし、エリオットたちはドーン邸の構造や防犯システムについて全て把握できている訳ではない。
入手したセキュリティシステムに関する情報が古かったり、虚偽の可能性もある。
それでも岬が平泉やドーンと直接対峙したいという決意は固い。そのことは誰よりもエリオット自身がよく分かっていた。
エリオットは短く息を吐き、頷いた。
「わかった。ただし、決して僕のそばを離れないでくれ」
岬が頷くと同時に『マリーン・ゼロ』が降下を開始する。
ローターが巻き起こすダウンウォッシュが、庭の瓦礫を吹き飛ばす。
地上では、黒いスーツに身を包んだエージェント部隊が、次々と窓やドアを破壊して屋内に侵入していく様子が見える。
その時だった。
コックピットに座るパイロットの鋭い声が二人の耳に飛び込んできた。
「レーダーに感知あり!こちらに向かって高速で近づく移動体があります!」
「なんだ?警察車両か?」
エリオットが即座に問い返す。
だが、パイロットの声には明らかな動揺が混じっていた。
「いいえ、違います!一般道の渋滞の間を縫って物凄いスピードでやって来ます!当該機体、軍のデータベースに該当なし!これだけのスピードでどうやって渋滞を避けているのか分かりませんが、完全な未知の機体です!」
想定外の乱入者に岬とエリオットは顔を見合わせた。
空と陸からドーン邸を封鎖したこの状況下で、自ら包囲網に突入してくる存在。
それは、間違いなく岬たちへの敵意を持った刺客だった。




