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15-6 ミサイルが狙う先

 アメリア大使館の地下にある『作戦司令室(ウォー・ルーム)』では、夜通しで緊張感が張り詰めていた。

 部屋には無数のモニターが青白い光を放ったまま、DIA(国防情報局)の精鋭たちがキーボードを叩く音が、止むことなく流れ続けている。


 エリオットは巨大なメインスクリーンの前に立ち、腕組みをして戦況を見守っていた。

 側近だった広尾の死に対する悲しみは、今は冷徹な指揮官としての立場の下に封じ込めている。すべきことは感傷に浸ることではない。敵を捕らえ勝利することだ。


「ターゲットの足取り、掴めました!」


 オペレーターの一人が叫んだ。

 スクリーン上の地図に赤い光点が灯る。


「衛星画像とNシステム、及び街頭防犯カメラのAI解析を統合。大洗千景を乗せた車両は現在、横須賀市内のカロル・ドーンの邸内にあります!」

「カロル・ドーン……?」


 エリオットはカロル・ドーンと面識があった。とは言っても、数年前に何かのパーティー会場で紹介されて挨拶を交わした程度の関係だが。

 いかにも辣腕で知られるカリスマ経営者らしく、やけにギラついた眼差しがエリオットの印象に残っていた。


 エリオットはギリッと奥歯を噛み締めた。

 日本の経済界の重鎮が、アメリアに敵対する勢力の共犯者であるという事実は外交的にも大きな火種となる。

 だが、そんなのは知ったことか。

 アメリアの敵に容赦する理由などない。


 エリオットの声が飛ぶ。


「現地のDIAメンバーはドーン邸を包囲し、人間の出入りを監視しろ!ただし、近隣住民には目立たぬように。邸内の人間には察知されないように。平泉潤二郎か大洗千景の姿を確認したら直ぐに知らせろ!」


 さらに彼は、隣に控えていた軍事連絡官に向かって指示を飛ばした。


「横須賀基地のアメリア軍に通達!ドーン邸をいつでも空から威嚇攻撃できるよう、戦闘機やミサイルを準備しておけと!さらにドーン邸制圧のために突入部隊も緊急配備しろ!」

「Yes,sir!」


 矢継ぎ早にエリオットからの命令が飛び交う中、ウォー・ルーム入口の扉が静かに開いた。

 室内の喧騒が一瞬、凪いだように静まり返る。

 スタッフたちの視線が入口に集中する。


 そこに現れたのは、滝乃川岬だった。

 先ほどまでの弱り切った姿は既に消えていた。

 涙は拭われ、乱れた髪は整えられている。まだ顔色は冴えないが、瞳には後ろ向きな感情を捨て去った深く重い信念が宿っている。

 彼女はゆっくりと確かな足取りで部屋の中へと進んでくる。


「ミサキ……」


 エリオットが息を呑む。

 岬はメインスクリーンの前に立ち、そこに映し出されているドーン邸の映像を見据えた。


「始めましょう。平泉(ヤツ)との第二ラウンドを」


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