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あれから三年という、とても長く、とても愛おしい月日が流れました。
あなたは今どんな景色を見て、どんな人と一緒にいて、どんな経験をしているのでしょうか。
ペットたちを撫でながら、あの人たちとの思い出に浸る。
「はなちゃん……」
はなちゃんのおかげで、今まで私は負けなかったし、ここまで生きてこれた。
中学卒業以来。三年の期間ではなちゃんに追いつくために中国で呪術師として修行を詰んだ。
「私が今私でいられるのは、はなちゃんと、あと、あなた達のおかげよ」
ウェルシュ・コーギーのムギを両手でワシャワシャと撫で回す。
ワウ!
喜んだ顔をしながら大きくしっぽを振っている。
実体のないムギの身体は、私の腕の中でだけは温かい。
これが私の呪術師としての才覚。飼っていた動物達は、また私のために力を貸してくれる。
これで、少しははなちゃんに追いつけただろうか。はなちゃんの隣に立つのは私がいいから、私は努力を怠らない。
私は非番の日、いつもの感謝を報いて、ムギや他の子達と遊ぶのを欠かさないようにしている。
親しき仲にも礼儀あり。愛想が尽かされてしまったらきっとどこかへ行ってしまう。しかも、まだこの子達とのお別れを割り切れていない。
まだ一緒に居ていたい。
グルルルゥーー!!
ムギが何かの気配に気づき戦闘態勢に入る。
私も見をひき、当たりを見渡す。
街頭に呪力を帯びた鳩がいるのが見える。
「はあ、なんだ。ムギ大丈夫だよ」
クウゥンと可愛い鳴き声をたれて、霊体に戻り消えていった。
ミスが恥ずかしかったんだろうか。ムギのの心配症は今に始まったことじゃないのに。帰ったら慰めて上げないと。
さて、この鳩は中国呪術機関の連絡用伝書鳩だ。
「ほーらー、こっちおいで」
人目に目立たないように手で口を覆い小声で鳩に声をかける。
さっきまではムギたちが居たからなかなか近づけなかったみたいだ。パタパタ身を翻して、腕に止める。
「はい、ちょっとごめんね」
口に加えた書簡を頂戴する。伝書鳩は振り返りもせず、仕事を全うして帰って行った。
実体がある鳥は便利そうだなあ。実体があるのも良いよな。
バウ!!!
おっと、ムギに怒られてしまった。
手紙の内容は、どうやら日本への留学についてだ。
日本の大学で大規模な霊能者達の育成計画が開始され、こちらからも数人送るらしい。その中でも元々日本に住んでいた私が選抜されたと。
「んん、いや待てよ」
そもそも上層部はあまり私を好いていない。古来の術とは違う系統の術を使うため、保守的な考えのお上は、私を陥れようとする。「安易に選抜だ!わーい」と喜べるものとは言い難い。
これは、他にも選抜者がいるということだから、つまり、体良く中国から追い出して、更には通訳までさせようとしているな。けしからんヤツらめ!
厄介者なんかを押し付けられれば、面倒事になるに決まっている。
久しぶりにはなちゃんに会えるかもしれないことを憂いつつ、機関にはがっかりだ。
先日開催された「この霊能者がすごいッ!!」グランプリに同時に、しかも3人が女帝としてノミネートされた。
中国呪術師として、私こと渡会ミオが。
もう1人は、もちろん はなちゃん。最後は憎きレイちゃん。
元々みんな同級生で、同じオカルト研究会のメンバーだった。
はなちゃんに会えると思い、授賞式にわざわざ顔を出したのに、はなちゃんは来ないし、レイちゃんと顔を合わせちゃうしで最悪だった。
でも、来ないのも はなちゃんという感じがしてちょっと愛おしい。
レイちゃんの話しは、まあいいや。どうせ来るだろうし。
拒否したってどうせ強制的に行かされちゃうだろうから、とりあえず考えるのはやめた。
「荷造りしなきゃ」
クウゥン
心配そうにムギが唸る。まったく。心配性なんだから。
大丈夫。きっと大丈夫。
はなちゃん。やっと会える。
日本にわたる前日。
眠れない。
はなちゃんと再会できると思うと、なんだか心がタップダンスとコサックダンスを踊っているみたいだ。はなちゃんと出会った日のことを思い出した。
鮮明に思い出せる。忘れもしない、と言うほど印象深い出来事ではなかった。
でも私にとっては大切な日。
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