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1-2 復活の日 【赤井はな】

 カァカァーーー


 町はずれの校舎からの帰り道。

 さっきから妙な烏にずっとつけられている。


 一定の距離を保ちながら、時に身をひるがえし旋回すしては、でも一重に接触を図ろうとはしてこない。

 ……というより、できないような動きをしている……?


 烏を使う霊媒師仲間に心当たりはないのだが……


「うーん……あ、ああ!」


 廃校からずっと魔よけの結界を貼りっぱなしなのを失念していた。そりゃあ、一定距離から近づけないわけだ。

 ということは、言伝でも頼まれた烏なのだろうか。


 結界を解除すると、翼をはためかせて、ゆっくりと側へ近寄ってくる。驚かせないように少し撫でてあげて、足の手紙をゆっくりと拝借する。


 あれ?

「1本足じゃん。御使いかよ!今日日 はやんないよこういうのー」

 印象最悪。こういう、宗教観が強く出る霊媒だったり能力は今どき流行らない。と私は思う。

 手紙を読む気もなんだか失せてきた。


 ……って、よく見たらフラミンゴみたいに片足を曲げて、案山子みたいにプラプラしている。

 さっきの発言は撤回しよう。


 なんて愛いカラスなんだ!


 手紙の内容は、どれどれ……

 貴女は国立霊能力学園の特別待遇学生として入学することが認められます。

 署名をもって入学とします。


 署名欄の書かれた入学承認状が届いた。

「今更特待なんて、行く意味ないよなー」

 ここには申し訳ないけど、あまりにも通う意味を見いだせない。


 自分の能力を磨いて、あくまで本業に霊能力を使おうとする人が通う場所なため、協会に所属する私は入る必要がない。

 すでに人並み以上に霊媒師としてひとり立ちしている。


「んんー、でもキャンパスライフが送れるというのもなかなか……」

 気がないのに優柔不断に悩んでしまうのはわるい癖だ。


 最近やけに悪霊や怪異を祓う依頼が多い。そろそろ休暇も欲しいなんて思っていた。

 ヤキモキした気持ちでどうするか悩む。


 悩み呆けていると、突然烏がバタバタと羽を仰いでアピールする。


「なんだ……なに?」


 曲げていた方の右足をみせて、もうひとつの手紙を出てきた。

 なんだこの二段構えは。


 愛いやつめ!


「ええっと、なになに」



 赤井はな さん

 初めまして。学長の足立千鶴子です。

 今回、貴女を特待生として本学に招いたのには理由があります。

 お祓い協会の会長さんにもお話済みです。

 近年、悪霊や怪物たちは凶暴になり、身を守る手段のない人たちへ害を与える存在が多くなりました。

 その中で、一人行動の多い我々は、霊媒師、呪術師、エクソシストら霊能力者を集め、チーム行動を促進させようという育成計画がたちました。

 この計画に伴い、本学でも人員を募ることとなりました。

 端的にお話しますと、はなさんにも本学に来て頂きたいと考えいます。

 貴女の事情は会長さんから聞いています。

 本学へ来ていただければ少しは私たちの知識でお役に立てるかもしれません。

 それに、貴女の旧友たちは既に帰国して入学手続きをすませているみたいですよ。

 

 先程の紙にサインしていただくだけで大丈夫なのでよろしくお願いします。

 それでは、良いお返事期待していますね。



 なかなかいやらしい進め方をしてくる人だ。苦手だなぁ。

 私の探す花子さんについてなにか手がかりを知っているのだろう。

 弱みを握られたようでなんだか身震いしてしまう。

 これでは、断る理由の方が無くなってしまった。

 しかも、みんなが帰ってくるんだ!入学よりも、そっちに心が踊ってしまう。


「3年振りだもんなぁ。みんな元気かな?」

 中学校卒業と同時に離れ離れになってしまったオカルト研究部の皆。


「そっかー、みんな霊媒師なんだぁ。なんだか嬉しいなぁ」

 ムフフと思いがけず、恥ずかしい声を出してしまう。


「では、早速」

 

 サインを済ませると烏は、ハタハタと飛んでいってしまった。こちらを見返してはとんで、見返してはとんでを繰り返し、羽ばたいた。


 愛いやつだ。


 今日はなんだか疲れたし、早く帰ろう!きっと楽しいキャンパスライフが待っているに違いない。



 花子さんはどうしてあの学校から消えてしまったの?

 いくら探しても手がかりさえつかめない。学長さんは何か知るようだけれど、本当に信じていいものだろうか。




 春は出会いの季節で、別れの季節。私たちを優しい風で包み込む。

 そして、悪霊たちが怨嗟をどよめかせ始める季節。

毎日投稿予定です。


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