表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍人様の末裔  作者: 雨露
1/2

昔話

昔々、人々が狩りをしながらの移住をやめて定住し始めた頃。

「始まりの地」に住むようになった民族は、米の栽培とともに龍も好む「真珠桃梨」という果物の栽培も始めました。

真珠桃梨とは一尺八寸(55cmくらい)ほどの白い大きな果物のことで、皮は硬いが中は柔らかく甘い果汁がたっぷり入っていて人にも龍にも特に好まれていました。


…ええ、そうですね。見た目や形は特に桃や梨には似ていません。しかし桃と梨を合わせたような味がするので、のちにこの名前がついたそうですよ。


さて、元々その土地に住んでいた龍は、人の住む集落に行けば真珠桃梨やその他の穀物、家畜などの食べ物が手に入ると学習したのか、村を度々襲うようになりました。

食料を奪われるどころか、(あまり好みではないらしいものの)時々人も食うので大変困っておりました。


ある時、天候不良で野生の作物が不作となったためか動物も減っていて、そのためにかなり腹を空かせた龍が大勢村にやってきて、村を襲撃し始めました。

たまったものではありませんでしたが、龍の鱗は硬く、退治しようにも石の武器では限度がありました。

襲撃が来たら、家にこもって龍が去るのを待つしかありません。


途方に暮れていたところ、突然「龍の言葉がわかる」という娘があらわれます。

村人たちは半信半疑でしたが、他に方法もないので次の龍の襲撃の時にその娘に龍と話をさせることにします。


いざ襲撃がやってきたとき、娘は龍に話を聞きました。

龍の長は

「我々は最近、食べ物が減っていて困っているのだ。家畜や作物を我々に分けてくれたら、襲うのはやめよう。ただし、これ以上我々の住処を拓くのはやめてくれ」

と言っているようでした。


村の長はこれを了承し、定期的に食べ物を捧げることと、龍の住処である北側はこれ以上開墾しないことを約束しました。


また、人と龍の友好の証として「龍の言葉がわかる娘」は龍の長の妻として捧げられ、(どうやって交わったのかは不明ですが)のちに三つ子が生まれました。

一人目は、ほとんど龍のような見た目をした子。

二人目は、顔や四肢の先が龍の鱗で覆われ、龍の角や翼、尾を持った子。

三人目は、漆黒の髪に漆黒の瞳、龍の角と飛べそうにもない小さな翼、短い尾を持った子で、犬歯は人間より鋭く、体に鱗がちらほら見られましたが、それ以外は人間のようでした。

上の2人は生まれてすぐに亡くなり、末の息子だけが生き残りました。


…余談ですが、過去に龍の死骸を発見した村人が、興味本位で龍の肉を食べてみようとしたことがあったそうです。食べた者がどうなったかというと…そうです。死にました。悶え苦しみながら死んだそうです。

つまり、龍の血は人間にとって毒であったと言えます。

龍の特徴を多く含んだ上の二人は、体が耐えきれずすぐに死んでしまったと考えられています。

そして、今でこそこの国のスタンダードとなりましたが、当時この民族には病気や加齢の場合を除いて茶色い髪に茶色い瞳の者しかいなかったとされ、彼の容姿は異色であったと言われています。


幼少期は龍の元で過ごし、しばらくして龍の長の妻とその息子は村に戻って暮らすようになりました。

六尺三寸(190cmくらい)と背が高く、誰もが目を奪われるほど美しく育ったその息子はやがて「龍人様」と呼ばれ親しまれるようになりました。


…この国には、昔から異質な物を神聖化する節がありましたからね。

すぐに受け入れられたと考えられます。


龍人様に魅了された人々が集まり、やがて村は国に、龍人様は帝になりました。


国は「鱗」と名付けられました。

まだ村だった頃に、幼子たちが「うろこの村」と呼ぶの聞いて龍人様がつけた村の名前「鱗村(うろこむら)」に由来すると言われています。

また、この初代天皇の龍人様が、この国の現在の天皇の祖先と言われています。


初代天皇は賢帝だったと伝わっています。

以後龍は、人間からの食べ物の支援を得ながら北の大地で穏やかに暮らし、人間も龍人様という主導者の元で幸せに暮らしました。

その後龍人様は若くして床に臥し、遺言状「龍との約束」を残して1週間後に亡くなりました。


【龍との約束】

一、帝の地位は後に記す特例イを除き、当帝の直系の子のうち龍の血が最も濃い者が継承する。

一、鱗国は後に記す特例ロを除き、いかなる場合も龍の住処を侵害せず、龍に対して危害を加えない。

一、鱗国は後に記す特例ハを除き、決められた場所に月に二度食料を捧げる。

一、鱗の民は帝に従い支える義務を負う代わりに、帝は鱗の民が龍と手を取り合い幸せに暮らせるように政を執る義務を負う。

一、この約束は次代にも受け継ぐこと。


特例

(イ)当帝に直系の子がいない場合。この場合、傍系や鱗の民から龍の特徴を濃く受け継ぐ者を探すこと。

(ロ)鱗国が龍に対して危害を加えていないにも関わらず、龍の方が鱗国を侵害または危害を加えた場合。

(ハ)(ロ)と同様の場合。または、龍の方から不要と通達があった場合。または、鱗の民が飢餓に苦しむほどの食糧難である場合。



…以上、この国の建国の物語でした。

どうでしたか?

…ちゃんと話を聞いていましたか?

では、レポートを楽しみにしていますね。

今日はここまで。


また次の授業でお会いしましょう。

初めまして。

雨露(うろ)です。


本作を読んでいただき誠にありがとうございます。

平安時代をモデルにしたお話が書きたいなと思い勢いに任せて書き始めましたが、歴史については只今絶賛勉強中です。

登場する人物や環境などは全て架空のものなので、できれば「歴史と違う…」ということは気にせず楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ただ、明らかに矛盾する箇所などがあれば、ご指摘歓迎いたしますのでぜひよろしくお願いします。


感想、評価、ブックマークなどを頂けますと、大変励みになりますので、よろしければお願いします。


この後は特に事情がなければ後書きは入れませんので、引き続き物語を楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ