厄災の前兆に気付かない転生者たち
Pixivで書いていた小説をなろうにも投稿することにしました。楽しんで読んでいただけると幸いです。
「つまり不死個体とは寿命が無くなった魔物のことなんだね?」
「そういうことじゃ」
僕 ー レイナはベテランに様々なことを聞いていた。ちなみに、ベテランには敬語をやめてもらうように頼んだ。あまり落ち着かないし、林健一が主なのであって別に僕が敬語呼ばわりされる必要は無いからね。林健一が主なのはちょっとムカつくけど。
それで、ベテランに聞いた話はおもに三つ。一つは、特有スキルについて。話を聞くに、スキルには下級、中級、上級のもの以外に「特有スキル」というものがあってそれは名前通り、個人特有のスキルなのだ。あとどうやら達人の目では特有スキルは見えないらしい。データが特有スキル「ガード破砕」を持っているらしいんだけど僕にはそれが見えなかったからね。あとデータには特有スキルの「転送」もあるんだって。彼割とチートじゃない?まあ範囲は限定されているそうだけど。
そしてスキルの習得法に関しては習得したい下級、中級、上級スキルそれぞれにある一定条件を満たすと入手できる。しかし特有スキルは生まれつき持っていたり突然習得したりする意味不明なものみたい。
二つ目に聞いたのは魔法について。魔法とは魔力に性質を持たせたもので、想像力が大事らしい。結構正確な想像が必要らしく、質量とかまで考えないといけない。もちろん、想像通りになるからありえないことでも魔法ならばできる。どこまで強くできるかは魔力の大きさに関係してるけど。そして魔法は個人の想像から成り立つものだから、特有スキルの一種ということ。
三つ目は「不死個体」について。達人の目で林健一を見ると、種族が不死個体って表示されていた。僕もそうみたい。そういうことで、ベテランに聞いてみたんだけど、どうやら不老の状態らしいね。不死個体になるには一定レベルの魔力量を持つ必要があって、その魔力量を満たすと自動的になるということだ。
恐らく転生者は元から不死個体になるのに必要な魔力量を持っているのだろう。そうじゃないと僕が不死個体の理由が分からないからね。だとしたら僕もそれなりに魔法が扱えるかも。
「ありがとう、基本的に理解できた気がする。今後も分からないことがあったらたぶん聞きに行くからよろしくね ー 今回は呼んだけど」
「もちろんじゃよ。若い者に知識を授けるのはワシら老人の仕事じゃからのう」
余談だけど敬語をやめるよう頼んだあとから子供みたいな扱いを受けているような気がする・・・・・いやよく考えたら元からかな?
まあ確かに今の僕の姿は中学生くらいの少女だし元の世界でも高校生だったけど。
◆◇◆
俺 ー 林健一は会議室にいた。
「それじゃあ改めて、ミラビリス国の建国計画について話すよ」
レイナは復活して早々、会議を開いていたのだった。それにしてもヴァルトが作ってくれたこの市役所?良いな!一階では行政の仕事とかができて、二階には会議室がある。しかも会議室は今までのやつよりも広がり、長いテーブルの周りに椅子を九つ並べてもまだまだ置ける余裕がある状態だ。素晴らしいな!
「今まで言ってたミラビリス共和国は周囲の国の現状から中止にして、ミラビリス国を作ることにしたのは既に健一・・・・・様を通して聞いてるよね?」
レイナは俺を見てくる。俺は頷く。
彼女の言う通り、俺は前日レイナに頼まれて皆にこのことを知らせていたのだった。それにしてもレイナがすごい不快そうな顔をしてるんだが。そんなに俺を様付けするのが嫌なのかアイツ?!それともあれか?俺を下の名前で呼びたく無いのか?何故か元の世界では毎回毎回フルネームで読んできていたからな。そして未だに二人で話すときはそう呼んできてる。
レイナは続ける。
「まずはヴァルトに聞きたいんだけど、君の空間魔法で作った空間の中に畑を作ることは可能かい?」
「え。ま、まあ可能ではある」
おいおい、これ問題解決じゃねえか。国作る意味無くなるじゃねえか。っていうかヴァルトの魔法使い勝手良さすぎねえか?
「よしよし、これで国作りの問題はなくなった!」
今度は嬉しそうに言うレイナ。美少女の姿なので可愛すぎ。
でもこれは聞かないといけないな。
「それ国を作る意味無くなるんじゃね?」
元より国を作るのは食料の輸入だったはず。食料問題が解決したなら、そのまま旧ミラビリス支配領域の竜全員集めて魔王軍派閥を作れば良いと俺は考えていた。
「貿易には利点があるからね。やはり国は作った方が良いと僕は思うかな」
「おお、そうか」
「確かに、そうですな」
「そうじゃな」
俺の後に次々と声が聞こえてくる。そういやレイナが自分に対する敬語を辞めるように言ってたな。ミストとかは全員に対して敬語を使ってるから変わってないが。
「畑に関してはあとでヴァルトと話すとして、次は竜を集めて町を作り、発展させた後にサンダール王国と国交を結ぶことにしようと思う。彼らはヴァリー帝国との貿易依存度が高そうだし、別の貿易相手ができるのは悪くは無い話のはず。僕らは元魔王軍派閥領地にできた国になるから、警戒はされるだろうけど」
その後は竜の集め方について議論した。
「旧ミラビリス幹部の名声で何とかできないかしらね・・・・・」
ストリームが椅子に寄りかかって考えている。
「俺たちが他の竜の村に直接行くのはどうだろう?」
「俺の転送スキルを使えば簡単だが、全ての竜の村の位置が分かるわけでも無いだろう。それに、攻撃される可能性だってある」
とフォーガッテンとデータが相談している。そんな中、レイナが立ち上がった。
「とりあえず、僕はヴァルトと畑を作ってみようと思う。その間に議論を続けといて」
とヴァルトを連れて会議室から出て行った。
余談ではあるがこの後レイナが戻ってきても全く竜を集める方法を思い付けなかった。
◆◇◆
彼らが平和な時間を過ごす一方で、旧ミラビリス支配領域内では不穏なことが起こっていた。突如としてヴォルリザードが現れだしたのだった。
ヴォルリザードは簡単にいうと炎属性を持つ人間の二、三倍の大きさのあるトカゲのことで、一匹一匹の力は並の竜と同等の強さを持つ生物のことである。しかし知恵は持たず、破壊を行うだけである。巨大な魔力の出現と消滅に関する調査のため旧ミラビリス支配領域に来ていた魔王軍派閥「アストラ」の幹部アイザルクは即座に調査を切り上げ、報告しに戻る事にした。
早くヴィズ様に報告しに戻らなければ、これはただ事ではすまない可能性がある、とアイザルクは思う。
それも、このヴォルリザードが現れることは、大厄災の前兆として知られているのだ。