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これは、初めての転生じゃなかった

「レイナ、大丈夫か?」


 傍から健一の声が聞こえてくる。魔王軍の集会が終わり、今はヴィズ=ヴァスカーナに待てと言われ、魔王城の待合室的なところで座っている。


 ソファーが部屋の隅と隅に配置されていて、中央にはテーブルがある。広くはないが、狭すぎもしない。


 それで、僕 ー レイナは・・・


「どうだろう・・・ね。自分でも分からない」


 ヴィズが求めてくることは分かっている。「暗殺」だ。


 昔の僕なら・・・いや、昔の僕でもそれはできないかな。昔の僕なら、場合に応じて人を切り捨てることはしていただろうけど、暗殺は無理。「死」というものから目を背けたいからだと思う。


「・・・」


 健一は僕を心配そうに見ている。君はそんな人だっけ?


 面白み半分で僕を美少女に転生させた健一。だけど確かに、優しい一面がある。


 それに美少女に転生したことはもうあまり気にしていない。


「まあきっと、大丈夫だよ。だから気にしないで」


 僕は適当なことを言う。


 そして考えたくないことが頭を横切る。


「お母さん・・・!」


 場所は病院。母親の病気が急に悪化し、父親、長男と次男、そして長女の私が病室に来ていた。


 母親の顔色は悪く、私たちが見守る中、息を引き取った。


 ― って待って。この記憶は何?僕は元男で、長女なはずがない!それに、僕の両親は事故死したはず・・・父親も生きていなかった。


 あと僕に兄弟はいない。


 じゃあさっき見たのは何の記憶?いや、誰の記憶?


 というか僕は誰?


 感情と記憶がミキサーでグチャグチャに混ざっている気分になった。頭のモヤモヤが消えない。息も上がってる。


 バタン


 僕の意識は途絶えた。


◆◇◆


「レイナ!???」


 俺 ― 林健一の前で、レイナは急に倒れた。


 ソファーに座っていたので、レイナが気絶したといった方が近い。


「すまない、待たせたな」


 と部屋に入ってきたヴィズは、その光景を見てすぐにレイナを客室に連れて行った。


 そしてレイナを客室のベッドで寝かせ、数時間が経つ。


「そうか、私のせいでレイナがこんな事に・・・すまない、嫌な役を押し付けてしまったようだ」


 ヴィズと俺はレイナが倒れた理由について話していた。別に俺も分かっているわけじゃないのだが、さっきの会話からなんとなくヴィズが持ち出した「暗殺」の件だと思う。


 謝るということは、ヴィズもそこまで悪い人ではないのだろうか ー 非常時だから後先考えなかった感じか?


「うっ」


 レイナが起きた。だが顔色は悪く、元気が全くない。


「レイナ、大丈夫か?」


「レイナ、すまない、これは私のミスだ」


 それを聞いても、レイナの表情はぼんやりとしたままだった。


「なるほど・・・なるほど、ね。今までの不自然な気分は、それが理由だったんだね・・・」


 特に誰に向かってでもなく、レイナは意味不明なことを言う。


 「どういう意味だ?」という顔でヴィズが俺の方を見てくるが、俺は顔を振る。


 やっと俺とヴィズの存在に気付いたのか、レイナはベッドで横たわったまま、俺の方を向いた。


「健一、君は僕を女の子みたいだと思ったことはあるかい?」


 意図は分からなかったが、俺は正直に言った。


「元の世界では、見た目も男らしくないし、しゃべり方も女子に近かったからよく思っていた。そしてこの世界に来てから、さらに思うようになったな」


「そうだね・・・そうだと思うよ」


 そこで今度は、レイナはヴィズに


「いったん席を外してくれる?」


 と頼んだ。


 ヴィズは黙って頷き、部屋を出て行った。


 そして再度レイナは俺を見る。


「健一、ここに来る前に、僕の過去について話したよね」


「おう、そうだな」


 何を言いたいのかが分からない。


「自分でも知らなかった、言い忘れていることが沢山あったよ」


 ますます分からなくなる。


「どういう意味だ?」


「僕もよく分からないけど、どうやら転生は初めてじゃないようだよ」


 は?なんだって!?


「さっき何故か存在しないはずの記憶が蘇ったんだ。”西村玲奈”の記憶がね」


「だ、誰だよ、それ」


 誰だと聞きながら、俺は何故かその名前を知っている。というかなんなら今のレイナの見た目を何処かで知っている。


「自分でも分かってないことが多いから、説明が難しくなるけど、その前に・・・」


 レイナは身を起こし、急に俺に抱き着いた。


「また会えたんだね、お兄ちゃん」


 一体何が起こったんだ?

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