また現れた魔王軍幹部
頑張って書いているので応援よろしくお願いします
僕 ー レイナはサンダール王国からミラビリス王国へ向かっていた。サンダールに向かった時と同じように、馬車はデータが操縦している。変わったことがあるとすれば、僕の隣にはエンバーではなく、アルトがいること ー そう、僕は彼をミラビリス王国に連れて帰ることに決めたのだった。
「アルト君、馬車での旅は大丈夫?」
「うん、今のところは大丈夫」
短い言葉を交わす。
アルトは結構静かにしている。やっぱり両親をなくしたことは衝撃的だったんだろうね。そりゃそうだと思う。
できることは何でもしてあげたいけど、話題も思いつかないし・・・
「そろそろ馬車を転送するぞ」
前からデータの声が聞こえた。
そっか、帰りだから「転送」スキルを使っても良いんだね。
しばらくすると、データが馬車を転送し、僕たちはミラビリス王国へ帰還した。
◆◇◆
俺、林健一はいつも通り国王室にいた。レイナたちが帰還してから数日が経つ。
ミラビリス王国とサンダール王国との国交が結ばれ、レイナの読みによれば、今後周辺の諸国も国交を結びにくるとのことだ。魔王軍の領土である大陸東側には鉱産資源が豊富にある。よって国々は以前から魔王軍との貿易がしたかったらしいが、どうやら恐怖に勝てなかったそうだ。
ということで、大陸の国々と魔王軍を仲介する国ができたことは非常に望ましいことみたいだ。魔王軍との同盟を結んでいる上に、俺らの目的は魔王を守ることだから、ミラビリス王国も魔王軍派閥みたいなものなんだが。
あと、アルト=ナテールっていう子供をレイナが保護してきた。アイツそんなタイプだったか?珍しいこともあるんだな・・・ そういやストリームがレイナだけじゃなく、アルトにも服を作り出そうとしてたな、二人とも可哀想に。まあ子供は可愛いからな。
竜たちはまったく気にすることなく、人間であるアルトを受け入れた。人間と魔物の違いはほとんどない。エンバーによれば、生まれた時から魔力を感じれるか感じれないかくらいだそうだ。だから魔物と人間の間自体では差別が生まれないのだろう。
ドカーン
嫌な予感がする。
大きな爆発音は何処かの竜が来た合図だ。そして、俺は誰が来たのか、なんとなく見当がついている。
「ケンイチ、久しぶりだな」
「またお前かよ、ハンズ」
◆◇◆
会議室にハンズを招き入れ、話が始まった。どうやら重要そうなので、ベテランにレイナを探しに行ってもらっている。
「おいハンズ、竜ってなんでいつも現れるたびに爆発音を立てるんだ?」
「それは周囲の注目を集めるために決まっているだろう。何故分からんのだ」
コイツふざけてんのか?!!
「でも俺らの国では爆発音は聞こえないぞ?国民のほとんどは竜なのに」
ハンズはため息を吐く。いや俺が吐きてーよ!
「毎日だと周りの迷惑になるだろう?だから基本的にはあまり合わない相手に会いに行くときや、特別なときに爆発音を立てる。実はこれにも作法があり、半径12mくらいにしか音が響かないように調整し、だがその限られた範囲で出来るだけ大きな音を出すことが重要で、場合によっては水などの魔法を使い ・・・」
意味が分からんハンズの説明が始まった。何だよその謎の作法?!
ガチャ
とそんなところに、レイナが現れた。
「まったく、君たちは何をやっているんだい?」
と言ってレイナが会議室に入って来て、俺の横に座る。
「魔王軍の今後の動きについての話だ」
嘘つけ。
「では早速始めよう。魔王軍派閥レイジは、森でのヴァリー帝国との戦闘で押されている」
レイナが席につくと、ハンズの話は急に真面目になった。
「ハンズが参加するんじゃなかったの?」
レイナが聞く。
「いや、私も、そして我ら魔王軍派閥ルナーヴィクも参戦した。だが想像以上に苦戦している。相手の騎士団に"剣聖"が七人いてな。相当な強さを誇っているみたいだ」
「七人って・・・多すぎない?」
レイナの表情を見ると、明らかに困ってそうだった。まあ、結構絶望的な状況だよな。
「それに、三大勇者の一人、漆黒の勇者も加勢している。簡単に勝てる勝負では無い」
漆黒の勇者?!レイナいわく一番意味のわからない名前がついた勇者って奴か。
「お前は戦ってみたのか?」
とハンズに尋ねると
「勇者とは戦っていないが、剣聖三人と対峙したな。本気で戦えば勝てると思うが、今はそう簡単に動ける状態では無い。なにせ、動けばロイヤーが襲撃してくる可能性があるからな」
ハンズが化け物なのか魔王軍が狂っているのか。"剣聖"って凄そうな称号を持っている三人に本気を出せば勝てる時点でおかしいだろ。
にしてもロイヤー=ヴァスカーナか。この世界の厄災と呼ばれている人物らしい。
「ロイヤーとは私も戦ったことがある。基本的にはクライングラン様の支援だったがな。あれは・・・次元が違った」
よほどの強さらしいな。一人で魔王軍と戦った過去がある時点でそりゃそうか。
「ということで、魔王軍幹部の緊急集会が開催されることになった。今回は貴様らも来い。開催は明日だ」
おい。いくらなんでも突然すぎだろ?