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面倒な権力の押し付け合い

Pixivで書いていた小説をなろうにも投稿することにしました。楽しんで読んでいただけると幸いです。


  ハンズとの会談を終えてから、一ヶ月ほど経った。


「街の新しい区画の整備は完了、教育機関として利用するつもりの建物も完成、食料の自給自足が可能となり、さらに鉱石などの採掘もできるようになった。国づくりは順調だね」


 と独り言を言いながら、僕 ー レイナは夕食を作っていた。フライパンにオリーブオイルとにんにくをいれ、しばらく加熱し、みじん切りにした野菜や輪切りにしたイカを炒める。途中で潰したトマト、貝や魚などの魚介類をいれ、最後に米をいれて煮詰める。

 

 それをしている間、前の魔王軍派閥ルナーヴィクのリーダー、ハンズとの会談を思い出す。本題は僕たちが魔王軍の敵か味方か。これについてはもちろん、味方だと、ミラビリス国建国の話とともに僕は話した。


「なるほど、ミラビリス国か。そうすれば魔王軍はそこを通しての人間たちとの貿易が可能となる、とう言うことだな」


 とハンズが話を整理した。


「その通り。悪い話じゃないと思うけど?」


 そう僕が言うと、ハンズは腕を組み、頷いた。


「フン、まあいいだろう。すぐに同盟を結ぶことは出来ないが、早ければ一ヶ月ほどで成立させれるだろう」


「分かった。期待しておくよ」


 勿論、その場に林健一はいたんだけど、僕たちの話に入る隙が無かったのか、何も喋らなかった。この際もう少し喋らせた方が良かったかも。この国の君主となってもらう訳だし。

 

 とそう振り返ってるうちに、夕食 ー スペイン料理のパエリアができた。幸い、この世界の食料品は元の世界に結構似ている。料理もしやすそうだ。

 

 僕はパエリアをテーブルまで持っていく。


「やっと出来たよ。元の世界のキッチンって便利だったんだね。今日の料理には少し手間がかかった」


 ガスコンロとかに慣れてるからね。薪を使うこういうのは初めてで少し困った。簡単な説明をすると、キッチンの形的には元の世界と似てるんだけど、都市ガスの代わりに薪を使って火をつけている。つまり中世ヨーロッパ風である。


「美味しそうだけどなんでパエリアになるんだ?」

 

 今ここには林健一がいる。今後の予定を詳しく話しておきたいから。そして何故パエリアかって?


「え?僕が何を作ろうか悩んだ時に咄嗟に出てきたからに決まってるじゃん」


「理由それだけ!?」


 理由なんてそれくらいでいいんだよ。メニューは思いつきで決めたほうが良い時もある。まあ一応、昔、年下のために作ったことがあって、喜んでくれてたっていうのもあるけど。


「そうだけどどうかした?あっ、パエリア鍋で作った方が良かったかな?」


 もっと本格的にパエリアを作れそうだし ー そこまでパエリアにこだわる意味はないんだけど。


「いやそうじゃない・・・・・まあいいや。頂きます」


 僕も手を合わせて「頂きます」と言う。

 

 今まではミストが作ってくれてたんだけど、任せっきりも嫌だから。あと料理は結構好きだしね。


「それにしても街が短期間で大分発展したな」


 林健一が指摘する。


「そうだね。街は人口が増加しても問題無い様に住宅を増築しているし、教育機関の建物の完成もした。ヴァルトが作った空間内に畑を作って食料の自給自足も可能に。あと領土全域からの物資調達のために幾つかの街を作る計画も考えてるよ」


「用意周到だなぁ。でもヴァルト大変すぎるだろ」


 確かに、ヴァルトには「領土内建築総責任者」って役職を林健一に与えさせて、ほぼ全ての建築を丸投げしてるけど。でも部下はつけてるし本人はあまり嫌がってないし大丈夫でしょ。た ぶ ん。


◆◇◆


 俺 ー 林健一はレイナと夕食を食べていた。そして今後の話だ。


「ヴァルトはまあ、大丈夫だよ」


「本当か、それは・・・・・」


 ヴァルト過信しすぎじゃね。いやアイツなら出来るだろうけど。関係ないが、なんやかんやで結構なイケメンだよな、アイツも。まあ俺もイケメンで転生させてくれって守護者?に言ってそれっぽくなったけど。


「とにかく、今後の活動にそれぞれ担当を決めないとね」


「外交とかか?」


 と俺は聞く。


「他国との外交を開いたらそれも必要だし、いずれ作るであろう軍の責任者とか、行政の担当とか?そういうの」


 と色々計画を話すレイナ。本当に転生時にレイナもいて良かった。俺だけだとこんなこと出来てないだろうしな。


「ってことで君に任せたよ」


「え」


 おい待て待て?!俺に丸投げ?しかも戦闘じゃなくてそういう管理者を決めるやつか?無理に決まってんだろ!


「待て、そんなん俺がやったらダメだろ」


 何を考えてるのか知らんが、俺がやれば確実にこの国は速攻で滅ぶ ー まだ外交がないから国と呼べるかは分からんが。

 

 慌てている俺に対してレイナは非常に落ち着いた様子で説明する。


「君はね、昔から人をまとめるのが結構得意なんだよ。気付いてないかもだけどね」


 意味の分からないことを言われる。そんなバカなことがあるか!


「ありえないだろ!絶対お前の方が適任だと思うぞ!」


 これにレイナは少し笑い、


「君はクラスの班活動の時にいつも指揮をとっていたでしょ?それぞれの人に役割を持たせて、効率よく作業を進める、これが君はとても上手だった。いつもは本当にバカだと思うけど、人を上手く使う能力は素晴らしいと感じてる」


 と話す。

 

 さりげに悪口言ったなコイツ。でもそうだったのか?効率よく物事を進めるのは当然だと思ってたんだが・・・・・ 俺がそれをするのが上手かった?


「本当にそうなのか?俺からしてみれば普通なんだが・・・・・というかお前は人を動かすのも得意な上で計画を立てるのもできるだろ」


 レイナは首を横に振る。


「そうじゃ無いよ。僕がまともに人に命令したのはこっちの世界に来てからだけ。君の方が断然上手だろうし、計画に関しても僕が主体として進めてるだけで、君もできるはずだよ」


 国づくりなんて俺にはできねえよ!


「おいレイナ、俺はお前とは違って国づくりの事なんて一切理解してない。担当決めは俺がするにしても計画はお前だろ。前、基本全てしてくれるって言ってただろ」


「そうだね、国の内政とかは僕がしようかと思ってた。でも過去を振り返ってみると、割と君には判断力がある。だから、君には基本的な国の方針を決めてほしい。それに対して僕は最善策を提案しようと考えてる。こんな感じで今後やっていければどうかな?」


 うわ、めんどくせえ。結果的に俺がほぼ全てをやることになってる気がするんだが。

 

 と頭を抱えている俺に、レイナは恐ろしい破壊力を持つ笑顔で


「ね?こうしてくれると僕も助かるんだけどなあ?」


 くっそコイツ!美少女である点を利用しまくりやがって!!これ断れないやつだろうが!!!

 

 レイナを美少女に転生させたのは大ミスだったかもな。


◆◇◆


「えー、では会議を始める」


 市役所の会議室にフォーガッテンらとヴァルト、ストリーム、そして最近仲間になった竜の一人であるザータを集め、役割分担を決めることにした。と言っても、元々の二階建ての市役所は、色々と増築され、国会議事堂みたいな大きさになっていた。

 

 にしても、レイナには完璧にやられた。あの笑顔で言われたら断れねえよ!俺、面倒を押し付けられただけじゃね?

 

 それはそうと、後戻りは出来ないので会議を始める。


「ではまず、これからの役割分担について話す」


 全員が俺の方を向く。別に人の視線を集めて緊張するタイプでは無いのだが、この決定が今後この国に大きな影響を与えると考えると怖い。


「まずは領土全域での工事の担当だが、引き続きヴァルトにしてもらう。今後の建築計画とか、そういうのを頼む。もちろん部下はつけるし、お前一人が全て作るわけじゃ無い」


 ヴァルトの方を見る。彼は頷き、クールな顔で


「完璧にやり遂げて見せましょう。俺になら簡単な作業です」


 と断言する。ヴァルトがいつの間にか敬語になっていた。レイナいわく、彼は前回の俺の大厄災ヴォルカーノ討伐により俺を尊敬する様になったそうだ。

 

 全部レイナがやったことなんだがな。


「次に、フォーガッテンには今後創設する予定の軍の責任者になって欲しい。役職は“国防大臣”とする」


「了解です。国の防衛、任せてください」


 とフォーガッテンも自信満々に言う。


「ミストには教育機関の責任者、“教育大臣”をしてもらいたい」


 とこの様な感じで、それぞれに割り当てを決めていった。

 

 データは領土内物流総監督、ベテランは法律制定補佐官、つまり俺の補佐を任せることにした。そしてダストは貿易担当大臣、ストリームには行政担当大臣、ザータには首都(つまりこの街)管理大臣をしてもらうことにした。ぶっちゃけ、役職名は適当である。時々元の世界で実際にあった役職名があるが、内容はもっと広い範囲をカバーするものである。俺そんな真面目に勉強してねえから!

 

 レイナの方を向くと、満足そうにしていた。だが役職分けはまだ終わっていない。あと重要なやつが一人残っている。


「レイナには外交大臣及び情報局総監督及び国家総監督、つまり俺に継ぐ責任者となってもらう」


 レイナがとても嫌な顔をしたのが見えた。残念だったな、俺に任せるとこうなるんだよ。


「ちょっと君、それは流石に役職の量が多い ー」


「いやレイナならできるだろ。って言うかこの国の君主は俺なんだから決定を覆すことはできんぞ?」


 ニヤリと俺が笑うと、レイナは殴ってきそうになっていた。が、その後深い溜め息をついて、諦めながら頷く。


「分かったよ ー じゃなかった分かりましたよ。林健・・・・・ではなくケンイチ様。まあ君には・・・・・ゴホン、あなたには頑張ってもらいますが」


 どんだけ俺に敬語使いたく無いんだよ。でもレイナに敬語を使われるのはちょっと落ち着かないかもしれん。


「お前は敬語を使わなくていいぞ、レイナ。って言うか皆んなも別に俺に敬語を使う必要はないからな?」


「・・・・・と言われましても」


「一応君は国家の君主だからね。敬語を使わない訳には行かないんだよ・・・・・いかないんですよ」


 全く使えてねえじゃねえか。うーん、まあレイナの事だし結局普通に戻るだろう。とにかく役割分担はこれで終わった。後は今後の計画、か。

 

 俺は改めて全員を見る。


「じゃあ今後の話なんだが、サンダール王国との国交を結びたい。何処かの国と外交を開けば、他の国からも国として認められるのが簡単になるだろうからな」


 レイナが何かを察したかのように、文句を言いたそうな顔でこっちを見つめる。


「それをレイナに任せる。残りの皆はこの間に国の発展に尽力してくれ」


「了解です」


「分かりました」


「僕の判断は間違っていた?・・・・・林健一は人に仕事を押し付けるのが得意なのか?・・・・・いや、まずこれが物事を効率的に終わらせる方法なのかもしれない。確かに役割分担はしっかりしている。でも僕の仕事量が多くない?うーん・・・・・」


 フォーガッテンらの返事と共にレイナの独り言が聞こえてきた。まあ俺に任せたのが悪い。

 

 すると、爆発音が聞こえた。誰だよ、ってもしかしてハンズか?!一ヶ月後に同盟とか言ってたもんな。


「よしレイナ、先に魔王軍との交渉だ。頼んだ!」


「まったく君という男は!」

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