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【書籍化】身代わり悪女の契約結婚~一年で離縁されましたが、元夫がなぜか私を探しているようです~  作者: 櫻井みこと


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 バレンティナの家は、マダリアーガ侯爵家である。

 キリーナ公爵家の分家の中で最も力を持っていたから、まだ当主になったばかりのカーライズでは、それを断ることはできなかった。

 でも彼は、自分を裏切った元婚約者を妻にするつもりはなかった。

 だからトィート伯爵の恩に報いるためだと言って、彼の愛人だと噂されていた『悪女ラーナ』を妻に迎えている。

 それが契約結婚で、一年で離縁するつもりであることは、誰も知らない。

 そしてカーライズと再婚約できなかった元婚約者のバレンティナは、マダリアーガ侯爵である父の命令によって新しい男性と婚約したようだ。

 けれど彼女は、カーライズの父と彼女の父の間で交わした約束により、幼い頃から自分はキリーナ公爵夫人になると言い聞かせられて育った。

 だからか、どうしてもカーライズとの結婚を諦めきれなかったようで、何度もキリーナ公爵家に押しかけてきている。

 リアナも、窓からその姿を見かけたことがあった。

 カーライズと同じ煌めく金髪の、華やかでとても美しいひとだった。

 バレンティナにとって、新しい婚約はとても不本意だったようだ。

 そんな彼女と、リアナが遭遇してしまう事件があった。


 この日もリアナは、執事のフェリーチェの指示通り、とあるパーティにひとりで参加していた。

 今日のドレスは肩が大きく開いたドレスで、気になって何度も肩の位置を直してしまう。

 そこに視線が注がれているのも、恥ずかしい。

 胸元には大きな宝石のついた首飾りをしているので、そちらを見ているのかもしれない。

 パーティ会場を訪れたリアナは、敵意のある視線を感じて振り向いた。

 そこには見覚えのある女性が、恨みがましいような視線でこちらを睨んでいる。

(あのひとは……)

 カーライズの元婚約者のマダリアーガ侯爵令嬢、バレンティナだった。

 彼女はたくさんの取り巻きを連れていて、リアナによく聞こえるように、嫌みを言ってくる。

「没落貴族のくせに」

「教養も気品もない、派手で下品な女」

「トィート伯爵の愛人だったのに、公爵夫人になるなんて厚かましい」

 けれどリアナ自身はそんな蔑む言葉にもすっかりと慣れてしまい、今はもう何とも思わない。

 ただ楽しそうに、会場中を歩き回る。

 男性だけに視線を送り、誘惑するように微笑む姿は、人妻であるにも関わらず、遊び相手を探しているようにしか見えなかっただろう。

 バレンティナは、そんなリアナの姿に耐えられなかったようだ。

「どうしてあなたのような女が、キリーナ公爵夫人になるのよ!」

 そう叫びながら、手にしていたワイングラスを、リアナの顔めがけて投げつけてきたのだ。

 もし命中していたら、確実に怪我をしていたことだろう。

「……っ」

 至近距離だった。

 でも咄嗟に顔を逸らしたお陰で、何とかリアナには当たらずに済んだ。

 けれど。

「きゃあっ」

 ワイングラスはそのままリアナの背後にいた女性に当たってしまい、周囲は騒然とした。

 バレンティナも、リアナに当たらなかったことに不満そうな顔をしていた。

 けれど、背後の女性の顔に、自分の投げたワイングラスがまともに当たってしまったことに気が付いて、蒼白になった。

「あ……」

 リアナの背後にいた女性の顔からは、血が流れていた。

 ワイングラスの破片で切ってしまったようだ。

 周囲は騒然となった。

 バレンティナは真っ青な顔をして震えていて、そんな彼女の傍から、少しずつ人が離れていく。

 一緒にいたら、巻き添えになってしまうと思ったのだろう。

 貴族令嬢の顔に傷を付けてしまっただけでも、大きな問題となる。

 しかも彼女は、こっそりと恋人に会うためにお忍びで参加していた、第三王女のロシータだったらしい。

 未婚の若い王女の顔に傷を付けたとなれば、たとえキリーナ公爵家に繋がるマダリアーガ侯爵家の娘であろうとも、許されなかった。

 幸いなことにロシータ王女の傷は浅く、あまり傷跡も目立たないだろうということではあったが、バレンティナは婚約を解消され、家から出されて修道院に送られることになったという。

 彼女はずっと、自分は悪くない。

 リアナが避けたのが悪いと言い続けていたらしい。

 だが、たとえ誰が相手だろうと、ワイングラスを投げつけたのはバレンティナである。

 非は、明らかに彼女にあった。

 それなのに世間の噂が彼女に同情的なのは、相手が『悪女ラーナ』だったからであろう。

 かつての愛人の名を利用し、キリーナ公爵の弱みにつけ込んで、公爵夫人の座に納まったリアナは、パーティ会場で彼のかつての婚約者を散々挑発した。

 それに耐えかねて、バレンティナはワイングラスを投げつけてしまった。

 貴族学園にも入っていないリアナと違って、バレンティナは高い教養を身につけたマダリアーガ侯爵家の令嬢である。

 そんな彼女が耐えられなくなるほど、ひどい言葉を浴びせたのではないか。

 そもそも背後にお忍びの王女がいたことも承知していて、バレンティナを挑発したのではないか。

 世間では、そんなことになっているらしい。

 どうやら娘を少しでも悪意から守ろうとした彼女の父親が、積極的にそんな噂を社交界に流している様子だった。

 リアナの味方はひとりもおらず、弁解もできない。

 そしてリアナも事件の関係者として、屋敷で謹慎することになったらしい。


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