表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/38

第24話・黒幕っぽいムーブはダサい

「さ、カテゴリEなんだから。ちゃんと攻略してね」

 アリスが口にしたその言葉は明らかに関係者でしか知りえない情報、ターゲットの攻略しやすさを表す「カテゴリー」という単語だった。

「お前、何者だ?」

 オレの言葉を聞いているのか、聞いていないのか。

 カップに入った紅茶をあおるとそのまま玄関に向かう。

「3丁目の公園、そこにすみれ姉さんはいるはずよ」

「3丁目……のどこ?」

「ここまでお膳立てされて攻略できないならあなたに望みは無いわ。じゃあね、期待してる」

 そのまま玄関から出ていく。

 我に返るとアリスのあとを追って扉を開けると、そこにはアリスの姿が無かった。

「いない……?」

『……スムさん、ススムさん?繋がってますか?』

 手に握られたスマホからエリカの声が響く。

 そういえば繋ぎっぱなしだった。

「あぁ、聞こえてるよ。行方不明って?」

 電話先のエリカに改めて確認を取る。

『赤羽さん、今日のシフトに入っているのに来なくて。なので出勤してきた城崎さんに尋ねたら、すでに家を出ているらしく。昨日、あのまま城崎さんのお宅に泊まったらしくて』

 今、何気にとんでもない爆弾を放り込まれた気がしたけど。

 もしかして、それって痴話ゲンカか何かなのでは?

「3丁目の公園って言われて心当たりはある?」

『いきなり、何です?公園?』

 当然エリカも心当たりはないか。

「寺井さんに連絡してオレも探す。エリカ、そのまま働くのはしんどいけど……」

『お電話替わりました、城崎です。赤羽さんのいないこの店で橘さんが働いていても仕方ないでしょう。……彼女を任せます』

 いきなり電話が城崎に替わって処理は追い付かなかったが、どうやらエリカも帰っていいらしい。

「まず寺井さんと向かうから。エリカは城崎さんから心当たりないか聞いておいて」

『はい!』

 電話を切ると寺井さんへのトークを開く。

 そのまま通話をかけると2秒で出た、早すぎるだろ。

『どうしました?』

「急にすみません、今からアキバに向かって貰えますか?」

 ここに来てもらってから店に向かうより、直接秋葉原に行ってもらい、エリカと同時に合流したほうが断然早い。

『わかりました。運転中できることは?』

「余裕があれば『3丁目の公園』を調べておいてください」

 ナビを使えば多少拾えるだろ。オレも電車で探せるだけ探さないと。

『わかりました。駅前でいいでしょうか?』

「よろしくお願いします」

 仕事のできる人は助かる。理由も聞かずに任務遂行、これぞ職人の鏡。

 と、なると時間がかかりそうなのはむしろオレか。

 パジャマを脱ぎ捨て、外着に着替え玄関を飛び出る。

 戸締りをしないとまた不法侵入されてしまう。

「……あれ?」

 扉を閉めた瞬間にカチャリと鍵がかかる音がする。

 オートロックだったのか、いつもエリカと出かけてたから知らなかった。

 それより今はエリカの元に向かわないと。

 エレベーターの下ボタンを押すと扉が左右に割れる。

 下に降りるまでにエリカに「寺井さんは直接店に。オレも向かう」とだけ送る。

 エリカならこれだけでわかってくれるはず。

 駅まで走れば何分だ?

 そして、この年になって走って体力は持つのだろうか。


「おまたせ!」

 エリカが立っている雑居ビルの前に車で到着。

 寺井さんの職場とウチが近いなら教えておいてほしかった。

 駅に向かって走ってる最中拾ってもらえなければ飛んだ無駄骨じゃないか。

 おかげで嫌な汗を拭きながら到着するハメになった。

「城崎さんはなんて?」

「……それが」

「プライベートなのでお伝えできない、そう彼女にも」

 ビルの陰から城崎登場。

 お前、絶対厨二病だろ。

「城崎さん?心配じゃないんですか?」

「彼女もいい大人です、自分の気持ちの整理は自分で付けるでしょう。ボクとしては無断欠勤したスタッフの穴埋めに忙しい、というスタンスでして」

 にっこりと微笑みながらとんでもないことを言ってのけるな、コイツ。

「やっぱり昨日、何かありましたね?」

「それもプライベートでしょう。それとも新井さん、その質問は治療と何か関係が?」

 ねー、こいつムカつくー!

「ずいぶんクレバーなんですね、そうじゃないとビジネスなんかできませんか」

「お褒めに預かり光栄です。昨日も言った通り、彼女を治療できるならこれから先誰を相手にしても大丈夫と思ってます。ここまで引き合わせ、内情を見せました。ここから先は新井さんのお仕事でしょう」

 イヤミをすんなり受け取りやがって。

「3丁目の公園、その言葉に心当たりは?」

「……申し訳ない。それは本当に存じません」

 オレの質問に一瞬の躊躇が見えた。

 先ほどまでの試験官面と違い、真実申し訳なさそうに見えた。

 そう見たかっただけかもしれないけどさ。

「そうだ、彼女に会えたら言っておいてください。『また遊びに来ていいよ、誰も気にしてないから』と」

「自分で言ってください」

 城崎は肩をすくめた。

 我ながら大人げなかったかもしれない。

 車に乗ると、先ほどまで調べていた「3丁目の公園」をリストアップした。

 都内だけで60以上。

 これですみれの生活圏に絞ったとしても、かなりの数があるだろう。

「手分けして探したほうが良いかも知れない、城崎に謝らせないと」

 結局、城崎となんかあったんだろ。

 さっきの伝言を聞けば確定じゃないか。

「ススムさん、なんで城崎さんが?」

「エリカも鈍いな、すみれは城崎の事好きなんだろ?」

 なぜNR状況で恋しているのかなんてわからないけども。

 その言葉を聞いたエリカは眉をひそめた。

「手分け、できませんね。ススムさんは間違ってます」

 はい?どゆことだ?

「しらみつぶしになりますが。寺井さん、お願いします」

「わかりました。まずどこから」

 エリカの指示で車は走る。

 オレが間違ってる?

 じゃあ、何があったんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ