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空の青

作者: 緑木あさ

初めて書いたものでつたない箇所が多々あるかと思いますが、温かい目で読んでいただけると嬉しいです。

屋上から真っ青な空を見上げながら、夏休みがもうすぐ始まるなぁ、と思った。


高校最後の夏休み。受験生にとっては、勝負の夏休み。

──憂鬱だ。今までとは打って変わって思いっきり遊べない夏休みであることも、なんとなく希望した補習が明日から早速始まることも。でも憂鬱の一番の理由は、周りの突然変わった雰囲気についていけないことだ。どうしてみんなあんなに勉強モードに入っていけるのか。今まで勉強していなかった子も、3年生になると受験生のスイッチが入って一生懸命に勉強を始める。友達もみんな自分の将来を考えている。大学には進学せずに就職する子、美容系の専門学校を目指している子、経済学が学びたいと志望大学に行くために勉強している子。自分だけが取り残されている感覚だった。自分のやりたいことを目を輝かせて話す姿を羨ましく思う。17歳なのに、そんなに将来のことをもう考えているものなのか。高校は成績で入れるところに入ったし、文理選択は自分の得意科目から選んだだけ。文理で少しの違いはあっても、なれる職業はたくさんある。なんでも選べる。選択肢はたくさんあると分かっている。でも。


ぼーっと考えていると、最初に目の前に広がっていた青い空にはいつの間にか雲が広がっていた。


自分が何が好きかとか、やりたいことが何かなんて、考えても出てこない。

だって今までずっと、雲のように流れされるままに日々を過ごしていただけだから。


屋上の扉が開く音がして、我に帰った。友達を待つ間の暇つぶしのつもりだったのに、気づいたら委員会の終わる時間になっていたらしい。音がした方を見ると、友達が笑っていた。

「カバンあるのにいないから、どこにいるのかと思ったらここにいたの。やっぱり屋上好きだね」

「ごめん、委員会終わったんだね。暇つぶしに来てただけだよ」

「空見てたの?」

友達が私の横に座り込む。私も立ち上がるのをやめて、座り直した。

「うん、空の青が好きで。でも最近は、雲を見ちゃうの」

「どうして?」

「自分みたいだなって」

「どういうところが?」

「・・・流されてる感じが」

何も考えず口からこぼれた言葉に、しまったと思った。夢のために頑張っている友達に、自分が何がしたいか分からないなんて、甘えにしか聞こえない。こんな話をしても呆れられてしまうだけ。

「いや、えっと、今のは・・・」

慌てて話題を変えようとすると、友達が口を開いた。

「私、雲は流されてる(・・・・・)んじゃなくて、流れてる(・・・・)んだと思ってた」

「流れてる?」

「うん。どこに行くかなんて雲自身にも分からないし、行き先も決められないかもしれないけど、いろんなところに流れて行って、いろんな景色を見てるんだろうなって思うの。そのうちにお気に入りの景色が見つかるしれないし、もし見つからなくても、いろんな景色を見たっていうそのことは絶対無駄じゃないじゃん。だって流れなかったら見られなかったんだから」

その言葉を聞いて、私は何かがすとんと落ちた気がした。目的地なんてなくても、分からなくてもいいんだ。今まで通り雲みたいに流れていくのも、自分の人生の何かにつながるのかもしれない。

もう一度改めて見上げた空は、さっきよりも青く、雲もゆったりと自由に泳ぐように流れているように見えた。

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― 新着の感想 ―
[一言]  初々しく瑞々しい文章でした。こういう時代を大切にしたかったと、今思えばですが。  読後感がいい話でした。ありがとうございました。
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