何にも引き寄せられない場所へ
こんばんは、空月です。
こんな時間に何してんだって感じですよね。私も思います。短編小説?と言っていいのかすらわかりませんが、短いのを書きたくなったので書きました。ひねりも何もありません。自分が小学校の時の夢をそのまま書き殴りました。
ささっと読んでいってください!
俺は目を開ける。
自分の身体は、日本製の与圧服によって覆われている。視界はヘルメットによって制限されており、目の前では様々な計器が打ち上げに向けて諸々の最終チェックを行い、チカチカと明滅し続けている。
手を動かす。その手を覆っている与圧服は、従来のオレンジ色のもののようにごつごつとした物々しいものではなく、ピッタリとしたボディースーツと呼ばれるのが適切だろう。
『星見、気分はどうだ?』
管制室にいるフライトディレクターから無線が入る。
「良好ですよ。小杉さん」
『そいつはよかった。日本で初めての有人飛行ミッションだ。気合い入れていけよ!』
「わかってますよ! そんなにプレッシャーかけないでください。吐きますよ?」
『すまんすまん。ここまで長かったが、あまり気負わずフライトを楽しんでこいや』
「そうさせてもらいます」
だいぶ歳とってるくせにいつも快活な小杉さんらしい励まし方だ。それにしても、小学生の時に宇宙に行くことを夢見てから20年、まさか日本初の有人飛行を自分がやることになるとは、人生何があるかわからない。
『さぁ! 打ち上げの準備に入ろう! キャビンの漏洩は!』
『ありません! GOです!』
『よし、打ち上げ自動シーケンス開始』
『打ち上げ自動シーケンス開始します!』
00:09:00
頭を覆っているヘルメットのガラスに、打ち上げまでのカウント・ダウンが表示された。このカウントが0になる頃にはもう俺は空へ飛び立つことになる。
00:07:30
外から轟音が聞こえる。ロケットを支えるアームが取り外された音だ。
00:03:30
『すべての制御が内部に切り替わりました!』
『星見! そちらでも確認してくれ』
目の前に広がる計器盤を一つ一つ丁寧に確認していく。
「確認しました、すべて正常に動いています!」
『よし! 了解した!』
00:02:55
『液体酸素タンクの加圧を開始します!』
『さぁ! こちらフライトコントロール、最終チェックを開始する! ブースター!』
『GO!』
『ガイダンス!』
『GO!』
『サージャン』
『GO!』
『制御』
『GOです!』
『手順!』
『GO!』
『ネットワーク!』
『GO!』
『キャプコム!』
『GO! Flight!』
『さぁ! 準備が整った!』
00:01:00
『もうそろそろですよ。星見さん。準備はいいですか?』
『ああもちろん。いつでも大丈夫だ』
キャプコムから通信が入った。
00:00:40
『あと30秒後に最終カウントダウンが入ります。打ち上げに備えてくださいね』
『了解』
俺は目を閉じた。心臓の音が耳元で聞こえる。緊張しているのだろうか。そのまま耳を澄ました。
00:00:12
『最終カウントダウンに入ります』
『10』
『9、サブエンジン点火』
『7』
『6』
『5、メインエンジン点火』
『4』
『2』
『1! リフトオフ!』
『『『いってらっしゃい!』』』
「行ってきます!」
ついに、日本初有人ロケットが打ち上がった!
自分の真下で発生する、先ほどとは比べ物にならないほどの轟音と共に、振動しながら俺を乗せたロケットは空へと伸びていく。
『打ち上げから2分経過。第一段ロケット切り離します!』
一度、加速が低下し、自分にかかる圧力が少しだけ和らいだ。
『第二段ロケット点火!』
その掛け声と共に、再び全身を押さえつける圧力が俺を襲う。
直後、警告音が鳴り響いた。
ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!
「管制室トノ、通信ガ切断サレマシタ」
「なに! キャプコム! こちら星見! 応答してくれ!」
返事がない。
「まずい、計器は!」
計器盤を確認すると、すべて正常に動いているようだ。燃料がなくなれば第二段ロケットが止まる。そのタイミングですべて切り離せば打ち上げ自体はうまくいくだろう。
「燃料が切れるまでは。あと10秒か」
10、9、8、7、6、5、4、3、2
「1、第二段ロケット切り離しっと」
直後、自分を押さえつけていた圧力がなくなり、体が宙に浮く。無重力状態となった。
「おお、これはすごいな」
初めて体験する無重力に、興奮が抑えきれない。
俺はシートベルトを外し窓の方へといく。すると視界が、青で覆われた。眼前を、地上がものすごいスピードで通り過ぎていく。
「これが、地球か」
今頃、管制室は大慌てだろう。しかし、今は何にも邪魔されない、1人で宇宙空間にいるという贅沢を目一杯享受させてもらうことにした。
ーーーー管制室ーーーー
少し前に時間は遡る。
ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!
「何があった!?」
「宇宙船との通信が途絶えました!」
その場にいる全員が、驚愕を隠しきれない。しかし、次の瞬間には、解決に向けてすべての人が動き始めた。
「ネットワーク!」
「今復旧作業中です!」
その時には、通信が途絶えて15分が経過していた。
「原因がわかりました! 先ほど通信に使っている海底ケーブル付近で地震が発生し、切断されたようです! すぐに別の回線に切り替えます!」
「早くしろ!」
「回線復旧します!」
ザザッ ザッ ザー
「星見! こちらキャプコム! 応答してくれ!」
『お! 繋がった。こちら星見、打ち上げは無事成功したよ。こちらのマップではしっかり予定航路を辿っている』
管制室内が安堵で包まれる。
「よかった、一時はどうなるかと思ったが。無事で何よりだよ」
『1人で宇宙にいることを満喫していたとこだ』
彼は、とても高揚したような声でそう答えた。全く、こちらの気も知らないで。
「このまま君は、地球を三周してから大気圏に再突入することになる。それまで宇宙旅行を楽しんでくれ」
『ああ、そうさせてもらうよ』
そうして、日本初の有人ロケットに乗り込んだ彼は宇宙空間への少しの間の旅を満喫して地球へと帰ってきたのだった。
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普段は異世界ファンタジーの小説を連載しています。そちらも読んでいただけると嬉しいです!
おやすみなさい!