1話 入部
「それじゃあ、皆揃ったなー。これから新入部員歓迎会を始めたいと思うー」
並べた五つの席に僕としずくちゃんと紬さんと璃々愛さん、そして部長が座る。
「ちょっと待って下さい?」
「なんだ、唯」
「僕の入部っていつ決まったんですか?」
僕はまだこの部に来ただけでまだ入部するとは言っていない。
「ここに来た瞬間だ」
部長はサラッと言う。
「どういうことですか?」
「お前はほんとにめんどくさい奴だな。最初に言っただろ、しずくに目を付けられた時点でお前はもう入部したも同然なんだよ」
「そういえば、そんなこと言ってたような……」
「ということで!新入部員二人を含む新生放研部の誕生だぁぁぁぁぁ!」
部長は片足を机の上に乗せて、嬉しそうに叫びながらクラッカーを鳴らした。
「みお、机に足を乗せるなんてはしたないよ」
「うるさい!私はそれくらい嬉しいんだ!」
紬さんに注意されたが部長は押し通す。
「お姉ちゃん、スカートの中見えちゃうし足下ろしなよ。もうここは女子だけの部活じゃないんだよ?」
「……確かにそうだな。以後気をつけるよ」
やはり部長はしずくちゃんに言われると逆らえないみたいだ。部長は渋々足を下ろして席に座った。
「それで今から何をするんですか?」
「お茶飲んでお菓子食べるだけだ」
僕は疑問に思い周りを見ると、皆は静かに紅茶を飲んでいた。そして机の真ん中に置いてあるクッキーやチョコレートを食べている。
「それ以外に何かやることあるのか?あるならお前が案を出せよ」
「いや、特には……」
「じゃあ、静かに飲んでろよ。何かしたいことが思いついたら教えろよな」
「わ、分かりました……」
部長の威圧力のある言葉に僕は萎縮してしまった。
こうなったら、皆が普段何をしているのか見ているしかないか。
僕は鞄から小説を取り出して読みながら皆を観察することにした。
「おい。しずく、トランプやるぞ」
「今日は何やるの?」
「スピード」
「また〜?お姉ちゃん勝てないじゃん〜」
「う、うるさい!勝てないからやるんだ!」
部長としずくちゃんはトランプで遊ぶのか。
僕は次に紬さんの方を見てみることにした。
「ん?どうしたんだい?唯人くん?」
「あ、いや、紬さんはこういう時って何するかなと思って……」
「私は基本勉強をするか、読書をするか、くらいかな。たまにゲー厶もするね」
「ちなみに今日は何をする予定なんですか?」
「今日は読書かな。推理物だ」
なるほど、紬さんのやることって結構幅広いんだな。
最後に璃々愛さんを見てみよう。
「……」
璃々愛さんは黙ったまま、ただ窓の外を眺めていた。
いつもこうなのだろうか。本当に不思議な人だ。
「あの、璃々愛さん……?」
「……?」
僕の言葉にだけは反応するみたいで、璃々愛さんは僕を見て首を横にかしげた。
「璃々愛さんはいつも窓の外を眺めているんですか?」
「ちがう、きょうはたまたま。てんきいいから」
「そ、そうですか。じゃあいつもは何を?」
「ねてるか、おきてるか」
「……」
とんでもないド天然回答に僕は何も言えなかった。
果たして僕はこの個性的な四人を相手にしながら上手くやっていけるのだろうか。心の底から心配でしょうがない。誰か助けて下さい。
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