5話 七星璃々愛
紬さんにボコボコにされて倒れたままの部長。
しずくちゃんが淹れた紅茶を優雅に飲む紬さん。
「唯ちゃんも良かったら紅茶どうぞ」
「あ、ありがとう、しずくちゃん」
「いえいえ」
そして、たった今一緒に紅茶を飲み始めた僕、水無瀬唯人としずくちゃん。
メンバーはいつの間にか四人になっていた。
「そういえば、璃々愛が来ていないな。いつもなら一番最初にいるはずなのだが」
「確かにそうですね。璃々愛さんにしては珍しいですね」
二人が心配そうな表情で璃々愛という名前を口にする。
どうやら部員は他にもいるらしい。
「ち、ちなみにその璃々愛さんはどういう人なんですか?」
「そうだね……」
紬さんが何やら難しそうな表情で考える。
「そんなにパッと出てこないもんなんですか?」
「ああ、彼女を一言で言い表すのは非常に難しい。なんせ、何を考えているのか分からないものでね」
「なぜ、そんな人がこの部に……」
「まあ、実際に会ってみれば分かる。璃々愛がどんな人物なのか」
「はあ……」
そんな話をしていた矢先、再び教室の引き戸が開いた。
「噂をすれば来たみたいだな」
「この人が璃々愛さんですか!?」
僕よりも少し身長が大きい。175cmはあるか。いや、それよりも大きいか。
髪は肩上くらいの長さで金髪。容姿も至って普通に美人だ。
しかし、璃々愛さんを見て紬さんの言ったことが理解出来た。
――――この人、真顔過ぎて何考えてるか分からない。
どうしてこんな無表情をしているのだろう。何か特種な訓練の最中なのかな。
そして、何故だか璃々愛さんは入口で立ったまま動かない。
「璃々愛、そんなところで突っ立ってないで早くこっちに来なよ?」
「……」
紬さんの呼びかけに璃々愛さんは無言のままだ。
「璃々愛さん?こっちに来ませんか?」
「……」
しずくちゃんの呼びかけにも反応しない。
「唯人くん、ちょっと璃々愛に声をかけてみてはくれないか?」
「ぼ、僕ですか!?」
「そうですね!唯ちゃんお願いします!」
「しずくちゃんまで!?」
部長がまだ倒れている以上、他に話しかけられるのは僕しかいないので渋々声をかけることにした。
「……あの、璃々愛さん?」
「……」
僕が声をかけても璃々愛さんは黙ったままだ。
やっぱりダメなのかな。
僕は諦めずにもう一度だけ声をかけてみる。
「璃々愛さん?」
「……き」
「き?」
ようやく璃々愛さんが喋った。
「…き、きみはだれ?」
まあ、その反応は当たり前ですよね。
「僕は水無瀬唯人です」
「……みなせゆいと?どうしてここにいるの?」
「しずくちゃんに連れられて来ました」
「しずくが……じゃあ、君がそういうことか」
どうやら僕がここに来る理由は皆知っているみたいだ。
しかし、周りがどうも騒がしい。
「しずく、璃々愛が喋ってる……?」
「は、はい。喋ってますね……」
「なに!?璃々愛が!?誰とだ!?」
紬さんとしずくちゃんが陰でコソコソ話している。
ついでに気絶していた部長が目覚めた。
「璃々愛さんが喋ることってそんなに珍しいことなんですか?」
「珍しいってもんじゃねぇよ!お前!私達三人、璃々愛の声ほとんど聞いたことないんだぞ!聞いたことあるの「ビーフジャーキー食べたい」くらいだけだぞ!?」
璃々愛さんは犬なのか。これまたよく分からない。
「そうなんですか……って、え!?璃々愛さん!?」
「んー、ゆいと。いいにおい、するね」
璃々愛さんは僕に抱きつき俺の頭の匂いを嗅いだ。
「お、おい!お前ら!ここはハレンチ行為は禁止だぞ!」
「そんなこと言われても、璃々愛さんが!」
「こんなにおいははじめて」
璃々愛さんは僕から離れようとしない。
「どうやら唯ちゃんは璃々愛さんに気に入られたみたいですね」
「そうみたいだな。良かったな、唯人くん」
「嬉しくないですよ!璃々愛さん早く離れて下さいよ〜!」
何はともあれ、これで放課後研究部の全員が揃ったみたいだ。
そもそも僕の入部は決まりだろうか。
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