共鳴
すたすた、とてとて、すったたた、ととととってってー、……って、
「おい、いつまでついてまわる気だ? 」
「お姉ちゃんが止まるとこまで」
「じゃあここで止まる。ホイ止まった、さぁ帰りたまえ」
「えーそんなのズルいニャン」
地団駄を踏んでもウザったいネコはウザったいだけ。いや人間かこれは。
「ったく、面倒なもの拾っちまったよ全く」
「モノじゃないニャー、マヤにはちゃんとマヤって名前が」
「ニャーニャー言ってる変なのの名前は覚えて益になると思うか? 」
「うわひでぇ……ニャ」
「取り繕うな」
面倒だな…と頭を搔くと遠くからは昼休みの終了前を告げる鐘の音が流れてくる。ちぇっ、結局ロクに弁当食ってないや。
「あれ、もうお昼終わり? 」
「そうだな。だからそこのお前もネコなんだからさっさと自分の塒に帰ったらどうだ? 」
「お前とはひどいニャ、さっきからマヤをアピールしてるのに」
「はいはいマヤね。……ってか、そんなに覚えて欲しかったら首輪にネームプレートでもしとけば? ネコだろ? 」
「ニャるほど」
ポンと手を打つ。いや納得すんなよ。嫌味だぞ。てか次会ったらほんとに首輪填めてそうで怖いなこいつ。会うかどうか知らんし会いたくないけど。
「それにマヤは野良猫ニャ。決まった居場所なんて無いしその日その日で気が向いたとこに落ち着くのが定めニャ」
「……ほう? 」
その言葉に僕は目を細める。丈余の櫓櫂操りて行く手定めぬ波枕、それは僕の最も理想とするやり方。
「そこだけは意見が合うな。さて、」
と、言葉を遮るように次の鐘。
「……さて、本格的に午後の授業が始まったわけだけど。そこの猫さんはどうするんだい? 」
「さっき言った通り自由キママに過ごすニャ」
「成程サボりか」
「ニャー!? サボり言うニャ!!」
「おいおいそんなんで大丈夫か? ん? 成績表真っ赤にならないかぁ? 」
「だ、だだだだ大丈夫ニャ?」
「19×19=?」
「ギャ!? いきなり何」
「はい時間切れ。大丈夫じゃないじゃんさっさと教室帰れよ」
「うにゃー!? マヤは自由に生きるのニャーーー!!」
耳元でギャースカ騒ぐ野良猫。しくじったな、このままだと僕の居場所もバレそうだし……仕方ない、少し黙ってもらおうかな。
僕はそっと野良の首筋に手をかけた。