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継母伝説・二番目の恋  作者: あしゅ
56/77

継母伝説・二番目の恋 56

「黒雪姫が7歳になるまでの2年間で

 あたくしは、このチェルニ男爵領を豊かにしてみせますわ!」

 

公爵家の娘の言葉に、廊下に控えていたチェルニ男爵も

驚いて、つい顔を覗かせる。

 

「いくら呆けていたとは言え、大変な迷惑を掛けましたね。

 そのお詫びも兼ねて、今度はあたくしが皆の役に立ちますわ。」

チェルニ男爵に向かって宣言する公爵家の娘を、王が止める。

 

 

「待て、待て待て待て!

 礼なら、わしが存分にいたす。

 そなたがここに残る必要はない!」

 

「いいえ。」

公爵家の娘は、プイと横を向いた。

 

「このまま宮廷に帰っても、単なる病後扱いをされるだけです。

 それにあたくしが世話になった場所を、貧困のままにしておくのは

 あたくし、引いては公爵家の沽券に関わります。

 あたくしは、チェルニ男爵領を国内有数の優良領地に生まれ変わらせて

 宮廷に華々しく、再デビューを果たしますわ!」

 

 

公爵家の娘がこう言い出したら、もう誰も止められないのは

王もチェルニ男爵もわかっていた。

 

おそらく、父公爵も娘の回復に喜びつつも

散々に “恩返し” の片棒を担がせられるのであろう。

 

溜め息を付きながら、王はすべてを承諾せざるを得なかった。

自らが傷付けた公爵家の娘を、再び手中にするには

大きな代償を払わねばならないのは、覚悟をしていた。

 

並の女なら、宝石や城でも与えてやれば一発なんだがな

王の乾いた笑いの意味は、チェルニ男爵には痛いほどに理解できた。

 

 

「・・・わかった・・・。

 ただし、ひとつだけ条件がある。」

 

何ですの? と訊こうとする公爵家の娘を、王はいきなり抱き上げた。

そのまま城を出て、馬に乗って走り出す。

「道が悪いゆえ、喋ると舌を噛むぞ!」

その言葉で、王は公爵家の娘の追求を封じた。

 

 

首都からの強行軍に、ヘトヘトになって

庭で座り込んで、くつろいでいた兵たちは

またしても、不意を付く王の暴走に

持っていたカップを落とし、大慌てで後を追うハメになった。

 

 


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