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継母伝説・二番目の恋  作者: あしゅ
54/77

継母伝説・二番目の恋 54

「わしがそなたを手放すわけがないであろう?」

シレッと言う王に、公爵家の娘の怒りが爆発した。

 

「あなたは!

 いつでも!

 何でも!

 ご自分の思い通りに出来るとわかっていらっしゃる!

 そのために人がどんなに苦しもうとも!!!」

 

自分を抱き締める腕から、逃れようと激しくもがく。

しかし離してくれない王を、キッと睨んだ後に

意を決して、その頬を思いきり叩いた。

 

 

王に手を掛けるなど、即死刑である。

その音に、王の兵士たちが部屋に入ろうとする。

止めようとしたチェルニ男爵は

兵たちに取り押さえられ、床にねじ伏せられた。

 

「わしの姫に手を触れるな!」

王が公爵家の娘を、兵から守るように抱く。

 

「そしてその者は、わしの姫の恩人だ。

 離してやれ。」

チェルニ男爵からも、速やかに兵が引いた。

 

チェルニ男爵は立ち上がりながら、無表情で服のホコリを掃い

再びドアの陰に直立する。

兵士たちも、元の立ち位置へと戻った。

 

 

公爵家の娘は、なおも王の腕の中で暴れた。

「何故、あたくしを宮廷に縛ろうとするのです?」

 

「・・・覚えておらぬのか・・・?」

王の目が、寂しげに曇る。

「塔でのあの約束を。」

王の言葉に、公爵家の娘は驚愕を隠せなかった。

 

 

娘を王妃にと企む父公爵は、幼い娘を時々宮廷に連れて行った。

同様にまだ幼い王子との、“お話相手” として。

 

利発で可愛い女の子を、周囲の誰もが認めた。

後に王位に就く男の子でさえ。

 

大人たちの目を盗んで、ふたりで冒険に行った塔から

広がる街を見下ろしながら、王子は訊いた。

「わしがこの国の王になっても、一緒にいてくれるか?」

 

 

「覚えていらしたとは・・・。

 そう、あの時からあたくしは “王妃” になるために生きてきました。

 なのに何故?」

公爵家の娘の非難に、王は率直に詫びた。

 

「すまなかった・・・。

 予定外だったのだ、“あれ” は。」

 

“ あ れ ” ?

 

「そんな言葉は聞きたくありません!」

公爵家の娘が王から離れようと、拳で王の胸を叩く。

王はそれでも離さない。

 

 

「そなただからこそ、気持ちを尊重してやったのだ。

 他の者なら、わしをこばむなど許さぬ。

 わしが請い願うのは、そなたに対してだけだ。

 死んだ王妃にすら、それをした事はない。」

 

王は、ようやく公爵家の娘を離した。

そして片膝をついて頭を下げる。

 

「わしはそなたを裏切ってしまったが、どうか許してくれ。

 わしとの約束を破らないでくれ。

 永遠にわしの側にいてくれ。

 わしには、そなたがどうしても必要なのだ。」

 

その言葉ほど、今の公爵家の娘の救いになるものはなかった。

ようやく自分の居場所が見つかった気がした。

公爵家の娘が泣き出すのを、王は誰にも見せないよう再び抱き隠した。

 

 

しかし続く言葉に、公爵家の娘の記憶が甦る。

「そなたの願いはすべて叶える。

 だから、そなたはわしが死ぬ時も側にいてくれ。」

 

公爵家の娘は、長い間封印してきた名前をついに口にする。

 

 

「・・・黒雪姫は・・・?」

 

 


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