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継母伝説・二番目の恋  作者: あしゅ
4/77

継母伝説・二番目の恋 4

「今宵の宴は、ちょっとした見ものですわよ。」

この言葉を王の叔母が囁くのを

公爵家の娘が耳にした時、嫌な予感はあった。

 

そしてそれは、当たり前のように的中する。

「今夜は王妃さまが、お国の踊りを舞ってくださるそうよ。」

 

どこから呼ばれたのか、リュートや横笛の奏者が音楽を奏で始め

会場は一瞬にして、南国の花々を空想させる

異国情緒があふれる空間になった。

 

 

初めて城へとやって来た時に着ていた

あの民族衣装をまとった王妃のシルエットが

明かりを背に浮かび上がる。

 

細い体から伸びた長い足が、弧を描き

手に握る短剣が、光を散らす。

肌の上を艶が流れる。

 

その姿は、まるで花が降るように幻想的で

男たちは言葉なく見とれ、女たちは嫌悪の表情を浮かべた。

公爵家の娘は、舞う少女の影が伸びる手前の床を見つめていた。

 

 

曲が終わり、踊り子が一礼をした瞬間

公爵家の娘がスッと立ち上がった。

 

「王妃さま、素晴らしい舞いをありがとうございました。

 お疲れでしょうから

 あたくしがお部屋まで付き添わせていただきますわ。」

 

突然の退場勧告に、おどおどする王妃の肩を抱え

公爵家の娘は、毅然と会場を後にした。

 

 

自室へと強引に連れ戻された王妃の、青ざめた顔を見て

公爵家の娘は冷酷に言う。

 

「どうやら、ご自分のなさった事が

 あまり褒められた事ではなかった、という判断を

 出来るぐらいの頭はお持ちのようですわね。」

 

王妃は、公爵家の娘の事務的な笑みに

胸の前で握った拳を震わせている。

 

「どなたが、あなたに舞いのお話をなさったの?」

「・・・王さまの叔母さまが・・・

 王さまも喜ぶと・・・」

 

 

やっぱり、と公爵家の娘は思ったけど

表情はあくまでも、にこやかに忠告をした。

「そう。

 今の話は、王さま以外にはなさらないようにね。」

 

「あの、あたしの国、王族の舞い、祈り・・・」

王妃の “説明” を、公爵家の娘は無情にはねのける。

 

「あなたのお国ではそうであったとしても

 東国では、そのように肌を露出して舞うのは

 体を売る女性のみなのですよ。」

 

 

王妃の目が潤んだので、公爵家の娘は

自分の口調が、ついキツくなっていた事に気付いた。

 

「・・・王妃さまの舞いは、あたくしは好きですわ。

 慣れない事ばかりで、お辛いでしょうけど

 ゆっくりとでも、この国の習慣に合わせていきましょうね。

 今夜はきっと、早めに王さまがおいでになるでしょうから

 今の内に身支度をしておきましょう。」

 

「あ・・・、あの・・・」

 

王妃が何かを言おうとしているのに気付かないふりをして

公爵家の娘が、さっさと召使いを呼びに行ったのは

王妃を泣かせたのを悔やんだからかも知れない。

 

 


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