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継母伝説・二番目の恋  作者: あしゅ
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継母伝説・二番目の恋 39

城に戻った公爵家の娘を待っていたのは、大臣たちの説教のはずであった。

 

公爵家の姫、しかも王の側室ともあろうものが

マトモな供も付けずに、荒くれ兵士数人だけで街に出るなど

あってはならない事だからだ。

 

しかし、誰も何も言わない。

説教の場になるであろう会議場に、呼ばれもしない。

 

 

「それは、わしが命じた、と言ったからだ。」

王が威張った。

「これで貸し借りはなしだな。」

 

公爵家の娘は、まあ! と喜んだ。

「ありがとうございます。」

と、ドレスの裾をつまんで、お辞儀をする。

 

「では、あたくしからもお土産を・・・。」

扇で口元を隠す公爵家の娘の目は、陰謀に満ちている。

 

王はその目を見ただけで、内心ワクワクしたが

何もないようなそぶりで人払いをした。

 

 

「早急に調べていただきたいのですけど

 恐らく、南国国境沿いの領主は密輸をしておりますわ。」

「何?」

 

驚きはしたが、以前から南の方に

小さい領地の割には、羽振りが良さそうな領主がいるのは

王も薄々知っていたので、公爵家の娘のその勘は当たっているであろう。

 

「これを機に、密輸の旨みをなくしておしまいになったら?」

「南国と正式に商取引きをしろ、という事か。」

「ええ。」

 

 

王は考えた。

確かに表立った交流のない南国との付き合い始めに

南国出身の王妃は良いきっかけになるはずだった。

 

それが出来なかったのは、王妃が予想外に反感を持たれたせいで

その挽回に、今回の妊娠はまたとない機会である。

密輸で儲ける者がいるなども、聞き捨てならない。

 

「ふむ、では国交を深めるとして、その任をどうするかね?

 そなたの父を西国から呼び戻すか?」

 

 

公爵家の娘の返事は、意外なものであった。

「いえ、心情的には父には戻って来てほしいのですけど

 商いに長けた西国を相手に回して安心な者が、他に思い浮かびません。

 せめて関税の問題の決着が付くまでは、西国には父に詰めてもらわねば。」

 

「では、誰か適任はいるか?」

「・・・あたくしが思うに、この件は王さま所縁の者に任せるべきかと。

 他の貴族は、南国を軽んじ過ぎております。」

 

王は引き出しから地図を出した。

各領地の主がひとめでわかる地図である。

 

「ほら、ここの端に王家の領地がありますわ。

 南国との境い目にもかかってますわよ。」

「ここの領主は・・・、確か大人しい男だったぞ?」

「あら・・・。」

 

 

公爵家の娘は、困ったわね、弱腰じゃ外交は難しいわね、と悩んだ。

が、すぐに妙案が浮かんだ。

「でしたら、南国人街を取り仕切っている者を

 王さまが直接動かしたらどうでしょう?」

 

王も、公爵家の娘の話す “権力者” に興味を惹かれた。

「ほう、民の間ではそういう事になっているのか。」

「ええ。 どこの世界も似たようなものですわね。」

 

 

ふたりで政治の話で談笑する。

それは、理想的な王と王妃のあるべき姿であった。

 

 


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