継母伝説・二番目の恋 2
南国の姫が城に着いた。
出迎えの中に、公爵家の娘もいた。
馬車から、編み上げのサンダルを履いた素足が降りてきた時には
その場の空気が瞬時に落胆したのが、わかるほどであったが
その全身が現れた時、一同が息を呑んだ。
長い布を巻きつけたデザインの民族衣装の
赤やオレンジの鮮やかな原色に、褐色の肌が映える。
クセの強い黒い髪も、布でまとめられ
首筋に垂れる後れ毛に、透明な色気が感じられた。
黒という色に、このような清楚感があるとは・・・
それほどに、この南から来た少女は華奢で美しかった。
その場の一同は、屈辱的な気分で頭を下げた。
公爵家の娘だけは、頭を下げながらも心は静まり返っていた。
だってあたくし、2年前の王の避寒旅行で
東国の南部に行った時に、同行いたしましたもの。
南国の姫が来ているらしい、と噂を聞き
王が好奇心で、こっそりと国境越えをし
南国の温泉で覗き見をした “冒険” の時も
あたくし、一緒でしたもの。
盛大な結婚式が終わった後
公爵家の娘は、王と “王妃” の前へ呼ばれた。
「あ・・・なた、お友達、なってくれると聞いた
あたし、こ、この国、ひとり、だ、だから、嬉しい
よ・・・ろしく。」
たどたどしい東国の言葉で話す、モジモジとした少女。
そのオドオドとした言動は、公爵家の娘が一番嫌う態度である。
東国の大臣たちは、南国からの従者を許さなかった。
外見が違いすぎる者が、宮廷をウロつくのを嫌ったのである。
南国との姻戚も、通常なら第2か第3夫人に迎えるべきであるのに
王自身がこの姫との結婚を強く望んだので
異例の “王妃” として、迎え入れられたのだ。
恥ずかしげに微笑む王妃に、オズオズと見つめられた公爵家の娘は
そんな王の “愚行” を、完全に理解していた。
この少女を何を差し置いても我がものにしたい、という
権力者が決して持ってはならない、“恋心” を。