認められた喜び
(アイゼン、あんたギルドつくりなさい)
(は!?ギルド?何言ってるんですか突然)
(あんたがどうしても戦士になりたいって言うのなら、自分でその仲間を集めなさい。)
(いや、ギルドは今もまだたくさんあるし、、)
(自分の力を過信しなさい。そんでゼロから自分で仲間をつくるの。きっとうまくはいかないだろうけど、壊れても壊れてもまた再試行すればいい。そこでできた仲間はきっと自分の宝物になるわ。既存のギルドのやり方に任せちゃだめ。自分が正しいと思うことをやり尽くして、新しい戦士ギルドをつくりなさい。そしたらあなたはこの王国一のギルドマスターになれるわ。それでこの街を変えていくの。どう?かっこいいでしょう?)
(、、かっこいい、、)
(ふふふっそうだろうそうだろう。よし、今からつくろう!そうだなぁ、名前はーーー、)
(え、ヨル嬢、それ適当、、)
「それにしても、アイゼンワークス。変な名前のギルドねぇ」
「あんたがつけたんだろうが」
「ふふふっ」
入り口にでかでかと飾られたその文字を見て笑いを漏らす彼女。
「俺らは気に入ってます!」
「えっヨルさんがつけたんすか!?」
「てっきり、マスターが自分の名前が好きすぎてつけたんだと、、」
「ヨル嬢!俺!あなたのせいでめちゃくちゃ恥ずかしいんですが!?10年もそう思われてたの!?」
「俺もそう思ってました」
「だから他のギルドのやつらにも俺らのマスターはそんくらいすげぇんだぜって」
「ええええ、恥ずかしいからやめて、、」
「別に良いじゃないですか!ウェベスト一のギルドっすよ!!」
顔を隠しながら恥ずかしがるアイゼンに、そんなのお構いなしにと自分たちがいかに他のギルドから一目置かれているかをその当のギルドマスターに自慢する戦士達。ヨルはそれを見てかっこいいだろうとその時まだ幼さの残る若いアイゼンにそう言って無理矢理ギルドをつくらせたのを思い出した。
「ふはっあははははっ
アイゼン!良いギルドだね!」
ギャーギャー騒いでいたやつらも、ヨルの奇行をヨルのことを知らない奴らに話していた者も、それを聞いて驚いていたやつらも、全員その笑い声につられて、満面の笑みの彼女を見る
「っーー、!はい!」
この十年、右も左もわからないギルドと言うものを一から作ってきたアイゼンにはとても不安が大きかった。それでもいつも正しいと思ったことなら何でもしろと言っていた自分の恩師にとても救われていたのだ。そんな彼女が姿を消してからは、またその不安に駆られ、自分のやっていることは合っているのかとわからなくなることが何回も会った。昔から知っている仲間はどんどん居なくなり、新しい手のかかるメンバーが増える。一時期はもしかしたらお飾りのマスターとなっているだけでは、自分は知らないうちに新しい世代に流されているのではと、思ったこともある。
そんなギルドを、世界で一番尊敬する自分の師匠に認められたのだ。うれしくないはずがない。
「うえっマスター泣いてる!?」
「ぶはっほんとだマスター泣いてやがる!!はははっ」
「くそっ!おい見るな!」
「あはははははっ」
「ヨルさんが一番笑ってるな」
「なんかすごく印象変わりました私、あのお店での異様さは全然感じられない」
「あ、ああ、たしかに、俺もマスターの師匠なんて正直信じてなかったけど、、」
「あれは間違えなく師弟の関係だな」
「ぶはははっマスターっ30にもなって泣くのかっぶはっはははは!!」
「ゴラァ!バルド!俺はまだ28だ!!」
「あ、治った。いつものマスターだ」
「頭をよしよしするな!!」
「あはははははっ」
「あんたはいつまで笑ってるんすかヨル嬢、、」