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終局から始まる世界線  作者: マクシミリアン
5/8

ヨル

「眼がぁ、眼がぁ!!」


そう言って床に転げ回る蛇鬼のリーダーらしき男


「大げさね。人間片目潰されたくらいじゃ死なないわよ」


「なっ」


「おい、なんだこいつ、、いかれてる、、」


フードの女に殴りかかろうとした瞬間に彼女が相手の眼球目がけて指を突き出したのだ。右目から血の涙を流す男の表情は恐怖の色で染まっていた


「ヒィッ」


走り出そうとしていたバルド、シューウェイ、そしてヴィーダは行き場所をなくした拳の力を解いてポカンと口を開けていた


「あんた!もうそのくらいでいいから。ありがとうね、店のために、」


「あーちゃん。黙って。

これはあいつが売って私が買った喧嘩だよ」


助け舟を出したように見えた亭主アネラの言葉を遮断し、目の前の男から目を離すことなく見据える女


「まったく、、」


「ガッツあるなぁ!あいつ!」


「店のため?にしてるようには見えないぞ」


そういうシューウェイの言葉に頷くヴィーダ。男と女、体格は彼女の2倍ほどある大男、大きなフードマントから見える細く伸びた腕はどう考えても人を殴れる腕ではない、にもかかわらず、


「あれは本気で言ってる」


その時、静まり返った店内の入口の方から騒がしくなっていった


「憲兵だ!」


「通報にあった店内で暴れている男たちはどこだ!」


店の従業員がアネラに言われて憲兵を呼びにったらしい。


「ちっおい!逃げるぞ!」


「お頭!大丈夫っすか!」


「女ぁ、覚えてろよ、、俺はあの蛇鬼のハーゲルドだ!」


「そう。私はヨル」


逃げようとしたハーゲルド達は憲兵に捕まり、外へと連行されて行った


「なんだったんだあいつ、、」


騒然としていた店内は次第にいつも通りを取り戻し、また騒がしい酒屋へと戻って行った。その会話の内容の八割が先程の一件なわけで、人々はあのフードの女のことに興味深々だった。


「いや〜かっこよかったですね!」


「かっこよかったって言っていいのかあれは。」


「でも、だれも止めなかった人達に1番にうごきましたよ?」


レリアナのその言葉に確かに、、と漏らすシューウェイ。恐れるものがほとんどで、彼らと対等の力を持っていた自分たちでさえも奴らの立場的な脅威に出す足を躊躇っていた。そんな所になんの迷いもなく、近づいていく彼女に対してかっこいいという感想を持つレリアナの気持ちもわからなくなかったのだ。


「そういえば、ばあさんはあいつのこと知ってる風だったな?」


「あーちゃんって言ってたのもしかしてアネラさんのことですか?」


「あ、ああ、あの子はね、」


アネラが彼女ののことを話始める前に、先程から辺りをキョロキョロ見渡していたヴィーダが声を発した。


「なあ、あの人、どこへ行ったんだ?」


「え?」


「あの子、、いや、やりかねない、!」


珍しく焦ったような顔をしたアネラは店のことを少しお願いと従業員のひとりに言うと店の入口へとかけて行った


「俺らも行ってみようぜ!」


「憲兵も来ていた事だし心配することなんかないと思うけど、」


「私もさっきから外がまだ騒がしいなあと思っていたんです」


そう言って、ヴィーダたち4人も席を立ちアネラの後を追う。


店を出て、憲兵達が数人男たちを連行している所だった。それは至極当然の景色なのだが、その当然の景色は1人によって破壊されていた。


「ねぇ、そいつ連れていかないで」


そう言って蛇鬼のリーダーハーゲルドを指さすのはもちろんフードの女のわけで


「こいつは憲兵所に連れて行って正しい手続きをして、正しい罰を下します。もう安心ですよ。」


「あなたは彼らの被害者ですか?」


憲兵よ。そう思うのはわかる。実際暴れたのは彼らであって、先に手をだしたのもその片目を閉じた男だ。しかし、その女は被害者というよりはあまりにも狂気的な眼をしすぎている。


フードから光る赤い目は憲兵に抑えられ、拘束されているものに向けているとは思えないほどの眼光を放っていた


「こいつは私に殺すって言った。それを私は買った。まだ私は死んでないし、こいつも死んでない。


まだ、終わってない」


至極当然の話をするように淡々と話すフードの女。鬼気迫るその姿に憲兵も唖然としていた


「お、お前なんなんだよ、なんなんだよ!」


「は?私がなんであろうと関係ないでしょ」


喧嘩を売ったはずの相手はガタガタと震えあがり、憲兵に隠れるようにしてフードの女と対峙していた。その女は押さえつける憲兵を煩わそうにしながらそれでもハーゲルドに向かっていく


「ヨル嬢!」


そこで彼女の足は止まった。その声の方を見ると、


「マスター?!」


ヴィーダたちのギルドマスターアイゼンが居た


「なんだアイゼンか。ちょっとまってて口出さないで」


「ハァ、ハァ、帰ってきてるって事後報告貰った瞬間この騒ぎ、、あんた保護者たちはどうしたんすか」


ヨルと呼ばれたそのフードの女は知り合いらしアイゼンの姿に気にもせず未だ目の前の男を見つめている


「知らない。迷子にでもなってるんじゃないの」


「迷子はあんただろ、、また問題起こしたら怒られますよ!」


「これは問題じゃない。喧嘩だよ。」


「はぁ〜、あんたが研究したいって言ってたヤツ、うちのギルドに情報入ってるんすけどね」


「え」


「大人しくここで手引いてくれれば教えますよ」


「っーー、おい、ハゲ」


ハゲ、と言いながら見つめるのはやはり蛇鬼の男


「ハゲ、、ハゲなんだったっけ。まあいいや忘れた。私とお前の喧嘩はまだ終わってないけど、私はあんたを殴るより重要な事情ができちゃったから辞めるわ。」


「え、いや、、」


戸惑いを隠せないハーゲルド。それもそのはず、自分は既に憲兵に捕まっている身でありながら、まるでそんなモノ見えていないかのように自分の片目だけを見るその女のことを彼は理解ができなかった。


「その代わり、あーちゃんに謝りなさい。この店の料理は全部美味しい」


「ひっ、はい、美味しいですすみません。」


反射的に答えたハーゲルドを見つめるとそこで彼女は踵を返し歩いて行った


これが俺たちがヨルという女に初めて会った日の出来事

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