プロローグ
【勇者が魔王を倒しました】
息が凍るような殺伐とした空気に一つだけ、自分の荒い息づかいが響く。辺り一面に広がった大きな水たまり。紅い紅い水たまり。その上にあるのはただの肉片ばかり
自分の手元を見ればそれはむせかえるほどの鉄の匂いをつけていて、かすむ視界は真っ赤に染まっていた。
人類が300年懸けた聖戦が今、終わりを告げた
魔王が生まれて、たった100年間で世界は闇に包まれた。動物たちの魔獣化、天災、飢饉、モンスターに襲われた村々は蹂躙され、世界の人口は約半分にまで減少した。
人々は恐れ煩悶し、一度は自分たちの未来おも放棄した。しかし、100年が経とうとしたころ、彼らは人類の尊厳と歴史を賭けてまた戦うことを決意したのである。戦える者を戦士と称し、国はその戦いぶりに似合った謝礼を金で渡すことで、魔王と戦う勇者を募った。その、世界条例第10772条が政令した100年後には戦士は農家や、商人などと並ぶ職業へとなる。
彼らは長い月日を重ね大きな力を身につけた。剣技、魔法、精霊術、世界にある全てを駆使し魔王達と戦う力を身につけたのだ。しかし、たとえ武を超越し、魔法を極限まで極めた者だとしても、人間では魔王には勝つことができなかった。
そこで戦士たちは戦士のみで組織された自治団体、ギルドを立ち上げる。戦士の中でも様々な職業が展開され、彼らは団体で連携して戦うすべを身につけた。集団での頭を使ったその戦いぶりは、自分たちよりも遙か大きいモンスターにさえも通用するにまで至った。
そして、魔王が現れてから304年と9ヶ月がすぎた冬の寒い日、100人の戦士によってその戦いは終わりを告げた。
物語はここで終わり。勝利を喜び、ハッピーエンドのエンディングが流れる。
するとどこかで誰かが言った
「さあ、プロローグはここで終わりだろう。とっとと物語を始めないか」
終局から始まる世界線




