【54】
「太陽神に選ばれると、瞳が七色の虹のようになる。それで、我々は太陽神が誰を選んだかを分かるのだ。今のルーの瞳のように」
と、ティラはルーを指差した。
「だが瞳の色が変わったからと言って、太陽神の力がルーに宿ると言うのはにわかには信じられなかった」
「私も、言ってて変な感じだったよ。自分で、自分の目は見れないからなんとも言えないけれど、太陽神に選ばれた時とは少し違っていた。太陽神が降りている時は、自分が自分じゃない感じだけだったけど、この中に太陽神の力がある時は……」
ルーはそう言って自分の胸を押さえる。
「体に奥底の方に何か重い塊があるような感じだった。だけど、その塊から溢れる何かは太陽神から受ける力と同じだった。だから、私はティラたちに言ったんだ。もしかしたら神の山で、太陽神を呼べばもう一度太陽神を呼べるんじゃないかと」
ルーはそう言って、メンバーを見回した。その瞳の七色の光がくるくると動く。
「ルーの提案を行うことに対する、神官たちの意見は完全に二分した。
反対派は、ルーの瞳は選ばれた証だが、今回の件の首謀者でもあること。神の許しがないのに、太陽神を呼んでも、太陽神は降りてはこないのではないか、ルーにまた神を降ろさせるのは危険だと言う意見だった。
私も、初めは反対だった。
だが、神官たちの間で一番の問題は、神の許しを得るにはどうすればいいのか、だったのだ。もしこのまま神がいない時代が続くとなれば、これからに神殿のあり方もきめなければならなかった。
【太陽伝承】はあの一文のみで、二神の出会いを禁じることは書かれていても、それに対する罰、その許しは何も書いていない。
ル・シーニ全土を回ったところで、現実に見える罰は与えられていなかったし、もともと宣託以外の大きな神の恩恵など感じていなかった人々に、罪も罰も重要ではなかった。
私たちは、八方塞がりになっていった」
「それで結局、最後には私の提案を実行することになったんだ」
ルーの言葉にティラの眉が寄る。
「やると決めたら早かった、子供たちと何人かの神官しかいない場所だからね。準備はすぐ整ったよ。後は私と誰が山に行くか、残るかってことくらいだったけど、私がティラしかいないと言うと、簡単に賛同を得られたよ」
「ルーが言わなくても、私だったろう。お前の相手は私だと、何故か最初から決まっていたじゃないか。お前のせいで私がどれだけ迷惑を被ったか……」
ティラがそう言ってため息をついた。
「腐れ縁って奴だよ。でも、良かったよ、一緒だったのがティラで」
ティラはますます顔をしかめ、頭を振って話を続ける。
「……ルーと私は、神の山の神殿に行き、太陽神を降ろす儀式を行ったが、当たり前だが、太陽神は降りなかった」
「そう、何も起きなかった。儀式の順番も何もかも間違いはなかった。だけど、何も起こらなかった。それで私は、今度は自分の中にある太陽神の力を外に出してみたらと考え、やってみた……それが、いけなかった」
ティラと同じように、ルーも思い切り顔をしかめた。
そして予想はつくだろうと言うように、肩まですくめて見せる。
「私は間違いなく太陽神の力を押し出すつもりだった。なのに、魔法を使うように、私の中の力を使おうとした途端、神の山に残っていた太陽神の力が私に集まってきて、私にすべて吸収されてしまった」
「ルーはその衝撃に耐えられなかったようだった。私も何が起こったかよく分からに内にルーは倒れ、かろうじて残っていた太陽神の力で動いていた神殿は、力のバランスを失い機能を停止してしまった。
倒れたルーに莫大な力が入りこんだことは私も見ていたから、ルーをつれて山を降りることは避けるべきだと私は考え、新しい仕掛けを組み込みながらとりあえずあの山を降りた。太陽神の力のない山ではあの山全体を動かすだけの力は得られなかった。だから人が入れないよう魔法をかけたのだ」
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