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祭りの時  作者: 水瀬
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【3】

 待ち合わせの場所は、神殿の裏。そこで、神官・ティラからの最後の指示を受ける。『太陽の子』が眠るという神の山・イルファンには、その後神殿から続く聖道を進む。

 トゥルーは、ラウルの愛馬と自分の馬を操って、ようやく約束の場所についた。そこには、すでに選ばれた『遠征』のメンバーが集まっていた。


「トゥルー、遅かったじゃないか」


 最初に声をかけてきたのは、やはりラウルだった。


「俺のドルフをちゃんと連れてきてくれたか?」

「もちろんです。あっちにつないであります」

「そうか、そうか」


 満足そうにうなずくラウルを横目に、トゥルーはあたりを見回した。

 神殿の裏は小さな広場になっていて、祭事などのときまだ経典を理解できない子供たちが両親を遊んで待てるように、ブランコやベンチが備え付けられている。

 メンバーは、そのブランコのついた大木の周りで思い思いにくつろいでいる。

「ラウル、メンバーはあれで全部ですか?」


 トゥルーは、見えるだけの数を数えながら聞く。


「あぁ、俺にお前に、スコットとタイロとトルド、それに町長んとこのエルナンだ」

 

 指折り数えながら、トゥルーの良く知った名前を挙げていく。


「凄い顔ぶれじゃないですか。なんか、心強いですね」


思わずそうつぶやくと、ラウルは意味ありげに笑った。


「なんで笑うんだよ。槍、弓、剣に医学。怖いものなしじゃないか」

「お前ってまぬけな奴!」


 ふくれるトゥルーに、ラウルは大笑いをぶつけた。笑い続ける親友にむっとしたまま、トゥルーは他のメンバーへと近づいた。


「遅れてすみません」


 ブランコ脇のベンチに腰かけた金髪の青年に、声をかける。穏やかな気を発する、多分この『遠征』のリーダーになるだろう人物に。


「気にすることないよ、トゥルー。出発の儀式には、まだ半刻ほどはあるんだから」


 やさしい碧色の瞳をトゥルーにむけて、アルマイエ=スタミユ=エルナンが微笑む。全体的に優雅な線で作られたその外見は、花のようなイメージを見る人に与える。もちろんそれは外見だけで、実際は1、2を争う剣の使い手で、次期長とも言われる逸材だ。


「でも」

「エルナンの言う通りだ、儀式にさえ間に合えばいいのさ」


 戸惑い気味のトゥルーに、空から声が降ってきた。

 声をかけたのは、トルドヴァール=アーネイスだった。ふわりと頭上の枝から飛び降りる。

 茶色の髪と瞳、黒くなった肌とがっちりした体格を駆使して、海上貿易を手がける父と共に世界中の海を巡っている。

 あっさりした性格で話が上手いと、良く女たちの間で噂されているのをトゥルーは聞いたことがあった。トゥルー自身は話したことはないが……。


「トルドの場合、トゥルーが遅れてきてくれてよかったんじゃないですか?」

「それは言いっこなしだぜ、エルナン」


 しっかり嫌味に聞こえる声音で言ったエルナンに、トルドは少しだけ嫌な顔をして肩をすくめて見せた。くすくすと笑うエルナンとトルドに、トゥルーはこの2人が親友同士なのだと合点させた。それもこんな会話が出来るほどに。


「ところで、トゥルー。さっきラウルが大声で笑ってただろ? お前さん何を言ってたんだ?」


 初対面とは思えない軽軽しさでトルドが聞く。トゥルーはさっきのラウルの笑い声を思い出して、眉をひそめた。


「ラウルは何ていったんだ?」

「……槍、弓、剣に医学の天才がそろっていて、心強いといったら……」

「いったら?」


 震える声でトルドが促す。笑いをこらえているのだ。


「……まぬけな奴……って」


 そこでトルドが爆笑した。トゥルーは面食らって、助けを求めるようにエルナンを見ると、彼も声を殺して笑っていた。

 幼い頃から神殿暮らしで、同じ年頃の人とあまり接することのなかったトゥルーとしては、この場合の対処の仕方をしらない。

 オロオロしている内に、神殿の方から声が聞こえた。


「『遠征』の勇者たちよ。儀式を始める。神殿の中へ」


 ティラの声だ。笑っていた2人も、ラウルも突然真剣な顔をして入り口へむかう。

 残りの2人が入り口のところで待っていた。

 赤い髪のサウス族の少年と、黒い長い髪を赤いリボンで結んだ青年?だ。

 トゥルーは軽く頭を下げてそこへと近づいた。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

次話も、よろしくお願いします。

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