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神崎を病院に連れて行くとやはり風邪だったようだ。 



「すみません、お仕事まで休ませてしまって」

「何言ってんだ、俺が風邪の時も世話してくれたしお互い様だろ」

「ありがとうございます、昨日はなんともなかったのですが……」



帰って来て神崎を部屋に連れて行こうとしたが連れてく時もそうだったが熱があるのでフラフラだ。 いつぞやの俺みたいだ。



「肩貸すよ」

「…… はい」



あー、こいつら意識し出してこんな事になるなんてなぁ。 天は俺を試しているのか?



「柳瀬さん、さっきも思ったのですが凄いです」

「何が?」

「心臓の音が……」



げ…… 伝わってたのか。 前はさほどどうと思わなかったのに。



「お、俺も熱でもあんのかな?」

「移してしまいましたか?」

「いや、冗談だよ」



廊下が凄く長く感じたが神崎の部屋に入りベッドに寝かせた。



「食欲とかあるか?」

「あまりありません。 あ、でもお昼は作りますので安心して下さい」

「バカ、そんなフラフラで作られても困るから休んでていいよ」

「…… 役立たずでごめんなさい」

「役に立つとかで立たないとかで俺達成り立ってるわけじゃないだろ? 気を張りすぎるのはお前の悪い癖だぞ」

「そうでした。 熱があるせいかネガティブになってるのかもしれません」

「少し寝ろよ、そうすればマシになるかもしれないしさ」

「はい、そうさせてもらいます」



神崎は寝るようだし俺も会社休んだんだしここの所いろいろあったので寝ておこうかと思って戻ろうとした。



「柳瀬さん!」

「ん?」

「さ…… 寂しいです」

「え?」

「あの、その…… 具合が悪くて1人にされるのは寂しいです」



………… それは一緒に居ろという事なのでしょうか?



「寂しい…… ですけど我慢します…………」

「じゃあなんで言った?」

「あ、頭が回らなくてよくわかりません」



そう言われたら断るわけにも…… ってあれ? これ今朝も同じパターンだったよな? 同じような事を2回言ってる時点で神崎は本当に頭が回らなくなっているようだ。



「わかったよ、神崎が寝るまでここに居るよ」

「ありがとうございます、わがまま言っちゃってごめんなさい」

「いいよ。 その代わりなんか本とか読んでていいか? 神崎の部屋の」

「構いませんけど漫画などはないですけど大丈夫ですか?」

「なんでピンポイントで漫画なんだよ」



と言いつつ漫画の方が良かったけど。 本棚を見ると参考書…… まぁこんなの俺は見ないな。 あ、ここは小説か。 小説も全然読まなかったな俺。



「椅子借りていい?」

「はい」



適当に本を取り神崎の机の椅子に座った。 



「なんだか少し柳瀬さんが頭良さそうに見えます」

「褒められてる気がしないぞそれ」

「ふふッ、ごめんなさい」



そしてしばらく小説を読んでいると眠気が襲ってきた。 ここで寝ちゃダメだ、と思い文章を読んでいるうちに結局神崎の机に突っ伏して寝てしまっていた。



眠りが浅かったのか頭に触れる感触のせいか起きてしまったけど身体は動かさなかった。 なぜなら誰かに頭を撫でられていたから。 誰かと言っても1人しか居ない、神崎だ。



なんで神崎が俺の頭を撫でてんだ? てかこいつまだ寝てなかったのか?



「柳瀬さん起きてますか?」

「…………」



今更起きてますなんて言えないので俺は寝ているフリを貫く。



「寝てるフリとかしてないですか?」

「…………」

「柳瀬さん好きです」



そんな事言われると思ってなかった俺は僅かに動揺してピクッと動いてしまった。 それに気付いたのか神崎は俺の脇腹を突いた。



「あッ……」

「やっぱり起きてましたね?」

「お前今なんて?」

「…… 柳瀬さんが寝たフリしてるので起こしてあげようかと思ったらこう言えば反応するだろうなって」

「お前タチの悪い冗談やめろよ、それで好きとか言うの」

「は、はい…… 冗談が過ぎました」

「寝ろって言ったのに」

「柳瀬さんが先に寝てしまったんじゃないですか」

「ああ、そうだったな。 あんま読まない小説とか読んでたからだわ、今度は起きてるからお前も今度こそ寝ろ」



神崎を再度ベッドに寝かせて俺はベッドを背もたれにして座った。



「お前も冗談言うんだな、堅物だと思ってたのに」

「そうですね、私もあんな事言えるんですね。 ちょっと成長した気がします」



そうしてしばらくすると神崎は本当に寝てしまったようだ。 昼ももう少しなので俺は食欲がない神崎のためにおかゆでも作ろうと思ってキッチンへ向かった。



こんなんでいいかなぁ? とクックパッドを見ながら作ると見た目は案外上手く出来ているように見える。



味見をしてみるがあんまり味がないのはおかゆだからか? 



出来たおかゆを神崎の部屋に持って行くとまだ寝ている。 おかゆが熱いので少し冷ました方がいいと思ったので少し待っていると俺が弄っていた携帯を床に落とした音で神崎は目を覚ました。



「んん…… あ、寝てたんですね私」

「あ、起こして悪い。 でもちょうどよかった、少しは冷めたろ」

「え? これはおかゆ。 柳瀬さんが作ったんですか?」

「他にいないだろ? まぁ期待はするな、おかゆだし」

「いえ、作ってくれてありがとうございます」



神崎はおかゆを一口食べると……



「そんなに見られると恥ずかしいです」

「あ、ごめん。 不味くないかなって」

「美味しいです」

「そっか、なら良かった」



本当に美味しかったのか神崎はおかゆを全部食べた。 残さず食べてくれて少し嬉しい。



「柳瀬さんは何かお食べになりました?」

「そういや食べてないや」

「なら私が」

「俺はどうともなるから無理するなよ」



起き上がろうとした神崎の肩を押してベッドに戻した。



「じゃあ洗ってくるわ」

「柳瀬さん」

「なんだ?」

「さっきの事…… 」

「うん?」



それから神崎は少し無言になったので言う事ないのかなと思って出ようとした時だった、神崎はベッドから身を起こした。



「おい、フラついてるくせに起きるなって」

「ごめんなさい、冗談なんかじゃないんです」

「え?」

「私の好きな人は柳瀬さんなんです。 あなたの事が…… 柳瀬さんが好きなんです!」



俺の方がフラつきそうになってしまった。




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