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「清人」

「うわッ!!」

「ひあッ」



なんだ? 夢か? 目の前に日向の顔があった気がする。 



と横を向くと。 なんだこれ? 生足? どざえもん? んなわけなかった、そーっとベッドの下を覗いてみると視線の先にはパンツ……



「はぁ!?」

「うぅ…… いたた」

「日向!? 夢じゃなかったのか」

「起こそうと思ったのに」

「悪い…… てか何してんだよ?」

「清人の顔が見たくて起こしに来た」

「起こしにって」



ひっくりかえってる日向に手を貸して起こした。 やっぱ今までどうにかしてた、朝から心臓に悪過ぎだ。



「下に何か履けよ」

「だっていきなり清人が……」



日向の唇に自然と目が行った。 俺こいつとキスしちまったんだ。 やめろやめろ! 意識するな。



「どこ行くの?」

「トイレ」

「あ、今そっちに」



なんか恥ずかしくなってきて日向の制止も聞かずトイレに向かった。 



はぁ、今後が思いやられる。 そう思って洗面所のドアを開ける。



「あれ? 清っち」

「うッ……」

「いやんッ」



目の前にはパンツだけ履いた風呂上りの篠原が…… なんで意識してしまったタイミングでこんなとこに出くわすんだ!?



「何してんだよお前は!」

「昨日お風呂入り忘れちゃって朝風呂してたの」

「そんな格好でこっちに近付いてくるなよ」

「あはん、女子高生のお風呂シーンに飛び込んで来たのは清っちでしょ〜?」



手ぶらで隠してはいるがほぼ篠原は裸だ、目のやりどころがない。 その時視界が真っ暗になった。 誰かの手で目を塞がれたようだ。



「清人の目に毒だからさっさとあっち行って」



この声は日向か。



「目に毒っていうか目の保養じゃん、清っちにとっては。 ねぇ? 嬉しいハプニングだったでしょ」

「彩はダメ」

「ダメ? ふーん、何がダメなのかな?」

「とにかくダメ」



そのままズルズルと日向に引きずられ部屋に戻った。



「た、助かった日向」

「そっちは彩が居るって言おうとしたのに」



日向はムスッとして言った。 まぁ聞かなかった俺が悪い…… のはいいんだけど日向を見ているとどうしても昨日の事を思い出してしまう。



「清人ぉ」



日向はそんな事お構いなしに俺に擦り寄ってきた、いつもの事なんだけど……



「なあ日向、昨日は……」

「うん、凄く嬉しかった」



ギクリ……  



こんな時は先輩を思い浮かべるんだ、ほら頭の中に浮かぶ先輩の姿がオーバーラップして昨日の日向に…… 想像するのはやめよう。



「柳瀬さん、麻里ご飯が出来ましたよ」



ドア越しから神崎がそう言うと日向は「わかった」と返事をした。



「清人まだ照れてる?」

「昨日の今日だし。 そりゃあな」

「あたしも。 凄くドキドキする」



真顔でそんな事言われるとこっちもドキドキしてきた。



「早くして下さーい!」



そんな時また神崎の声が聞こえた。 



「どうかした? 日向」



日向が少し怪訝な表情をする。 邪魔されて怒ったのかな? と思ったけど違ったようだ。



「莉亜の声少し変」

「え?」



キッチンへ行くと神崎が「早くしないと遅刻しちゃいます」とせかせかと動いていたが顔色が悪かった。



「莉亜大丈夫?」

「え? 大丈夫ですけど」

「具合悪そう、風邪引いた?」

「朝から少しボーッとはしますが」



そうしているうちに篠原もキッチンへ来た。



「これで全員揃いましたね」

「んん? あんた大丈夫?」

「彩奈まで。 だいじょ……」



椅子に座ろうとした神崎はグラッとそのまま倒れてしまった。



「莉亜ッ!」



篠原が駆け寄り神崎を触ってみる。



「やっぱあんた熱あるじゃない!」

「そ、そうみたいです」

「バカ莉亜、そうみたいですじゃない」

「莉亜あんた今日は学校休んで病院行きな、清っち仕事あるのはわかってるけどお願い出来る?」

「清人、莉亜を連れてってあげて?」

「わかってる」

「いえ、大丈夫ですから」

「大丈夫なわけないだろ? バカだなまったく。 無茶すんな」



とりあえず日向は神崎を部屋に連れて行くから俺と篠原は朝飯を食べててという事になった。



「あー、まったくほんとバカよねぇ莉亜ったら」

「昨日まではそんな変わらなかったんだけどな」

「清っちもね」

「え?」

「私の事どう思う?」

「は? ど、どう思うって?」



俺の反応を見て篠原はニヤッと笑った。 



「新鮮な反応ですなぁ、照れてやんの。 莉亜と出掛けてから何があったのやら」

「別に何もねぇよ!」

「ふふッ、じゃあ今日は莉亜の事よろしく頼むね?」



2人は学校へ行き俺は会社へ連絡して神崎の部屋へ向かった。



「神崎入っていいか?」

「どうぞ」



部屋に入ると神崎は身を起こす。



「寝てていいのに」

「すみません柳瀬さん。 仕事があるのに……」

「仕事なんかいつでも行けるから気にすんな。まぁ俺がここに居てもあんまり役に立たないけどな」

「そんな事ないですよ、柳瀬さんが居るだけで私は心強いです」



………… 不謹慎だが思ってしまう。 こいつも可愛いなって。 それまでも可愛いとは思っていたが今のそれはまったく違う意味でそう感じてしまう自分に少し腹が立つ。



「病院まだ開かないからもう少ししたら行くからそれまでゆっくり寝てろよ?」

「はい……」



神崎はベッドに入ったので俺は出て行こうとしたが。



「あの」

「ん?」

「ここに居てもらってもよろしいでしょうか? ダメですよね?」



半分毛布から顔を出して俺の表情を伺うように神崎はそう言った。 というかそう言われたら断れない。



「いいよ」

「ありがとうございます」



俺が神崎のもとへ戻ると毛布に潜ってしまった、それ俺居る意味あるか?



そしてしばらくして病院に行く時間になったので神崎を起こそうとしたら起きていた。



「そろそろ行くぞ?」

「はい」



神崎に手を差し出しすと神崎は俺の手を掴もうとしたのだが部屋に2人きりという状況が昨日の日向を思い出しなんだか気恥ずかしくなってしまいサッと手を引っ込めた。



「?? な、なんですか今のは?」

「ごめん、なんでもない」



こうして俺は神崎と一緒に病院に向かった。







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