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それから寮付近をゆっくりと探した。 寂しい場所だから誰か歩いていればすぐ見つかるかなと思っていたんだけどなかなか見つからない。



日向みたいに行き倒れていればまだ見つけやすかったかもしれないが本当にそうなっているのは勘弁だ。



「見つからないね……」

「見つからないな」



仕方なく寮の方へ戻るコースを走っていると2人の人影がトボトボ歩いているのが見えた。



「あ、居たよ」



2人に近付いて車を停めると神崎と篠原が驚いた顔をする。



「柳瀬さん…… あ、麻里! どこ行ってたんですか? あなたも居なくなってしまってどうしようかと…… 」

「行き倒れてるとこ清人に見つけてもらった」

「もぉバカ麻里! それと清っちようやく見つけた。 はぁ〜、疲れたよぉ」

「悪かったな俺のせいで。 とりあえず車乗れよ」



神崎と篠原を車に乗せて寮へ向かう。 何故かみんな無言。 気不味い、なんだこの空気は……



寮へ着いて車を降りると神崎が口を開いた。



「待って下さい。 みなさん夕食はまだですよね? 柳瀬さんも……」

「ああ、まぁそうだけど」

「だったら食べませんか? みんなで」



なんだか潮らしく言うので神崎の言う言葉に従う。 



「あ…… あたしが作るんだった」

「げ……」

「え? 俺が聞いた話では篠原だったような」

「あー! 棚作ってくれたお礼にねってことで。 なら私が作ろうか!」



日向がそう言う篠原を押し退けてキッチンに立つ、それに篠原が少し青ざめる。 あの様子からするに日向の料理は地雷なのか……



「あッ! 今日は私が作りましょうか?」

「くどい、清人に話があるんでしょ? だったらそうして……」

「うきゅぅ…… わかりました」



テーブルに戻ってきた神崎は渋々といった感じに俺の正面に座る。



「あの…… 今回の件は誠に申し訳ありません。 私の勘違いであなたにとても酷い事をしてしまいました。 ごめんなさい、出て行ってと言った事は取り消します。 許して下さい」



俺に深々と頭を下げて謝った。 そして頭を下げた先に日向が悪戦苦闘しながら料理をしている姿が目に入った。 



「あ、あつッ」



ガシャンッとこの雰囲気に似つかわしくない音を立てている。



「私と麻里、彩奈は3人同時にここに来ました。 私にとってはもう家族みたいに思えて後から入ってきたあなたを無意識に邪険に感じてしまっていたような気がします、今日もその事であんな事になってしまって…… 本当に反省しています。 だから今後は私もあなたの事を……」



パリンッ!! 



「あ…… 割れちゃった。 これどうすればいいの?」



「………… 聞いてます?」

「あッ、えっと…… うん」



聞きたいんだけど日向のせいでなかなか集中出来ない。 めちゃくちゃ危なっかしいんだけどあいつ…… この当番制絶対失敗だろ。



「…… なので今後は私も心を入れ替えて、すぐにというわけには行きませんがちゃんとあなたの事を……」



「わッ、わわッ! ひ、火が…… 」

「お、おい! あいつ大丈夫か? 絶対ヤバいよな、あれ!」

「だから嫌なんだよなぁ、麻里の当番の時って」

「………… 2人と同じようにと思えるように私も…………」

「ってなんの料理作る気だよ!? ワインでもぶちまけたのか!?」

「もう仕方ないなぁ、彩奈ちゃんが変わってあげようか?」

「いい…… あたしがやる」



その時テーブルからバン!! という音がした。 俺が振り返るとプルプルと震えた神崎が俺を睨んでいた。



「あ、あれ? 何か怒ってる?」

「柳瀬さん…… あなた私の話を聞いてましたか?」

「ええと…… 許して下さいって言ってたよね? ね?」

「私悪いと思って勇気を出して誠心誠意謝っていたのにあなたは全く聞いてなかったんですね?」

「ちょっと待ってくれよ! 時と場合が悪かったんだって! 見ろよ日向の奴を! ここを地獄に変える気だぞ!?」

「清人酷い……」

「話をそらさないで下さい! 私はちゃんとあなたに謝罪したいと思ってるんですよ!?」

「わ、わかった! ごめん!」



俺が謝ると神崎は??な顔をした。



「何故あなたが謝るんです?」

「俺も悪かったって思ってる。 もう少しマシな言い方があったのにお前を怒らせるような事を言ってしまったしな、あれじゃああなるのも仕方ないって思ってたんだ。 だからお互い様って事で一件落着しないか?」

「ま、まぁ柳瀬さんがそう言うなら。 これから……」

「え?」

「これからよろしくお願いします」



神崎は初めて俺に笑顔を向けてそう言った。 クソ生意気な堅物だけど笑った顔も可愛いじゃないか。



…… と視線を少し横に移すと黒い煙がモクモクと上がっていて慌てて篠原が水をフライパンにぶっかけていた。



「なぁ、流石に不味くないかあれ?」

「きゃあああッ!! な、何をやっているんですか!? だから私がしましょうかって言ったのに」

「失敗……」

「あーん、麻里の時はいつもこれだから嫌なのよぉ。 それに莉亜も清っちと話すことに集中し過ぎだし」



あれだけ物音してたんだから神崎の奴も途中で気付けよ……



だけど今回は一件落着だよな? それにしてもまだ2日目だぞ…… いろいろあり過ぎだろ。



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